すべてマンガに描いてある(15)…おうちで何着る?
『繕い裁つ人』 (c)池辺 葵/講談社

 最近家にいる時の服装、ちょっと気を抜き過ぎてる? でも何着たらいい? と思っていたら……『繕い裁つ人』に描いてあった!

 地元の小さな町で、洋服の仕立て屋をしている市絵。「夢見るための服を作っているのよ。生活感なんて出してたまるもんですか」がポリシー。ある日、夫の遺した庭を世話するのが生きがいの、老いた恩師からこんなオーダーを受けます。「(自分の)死に装束」を作って欲しい……でも市絵が作ったのは、胸にドレープのよった、白い木綿のパンツスーツ。「漂白にも強い生地だからどんなに庭いじりしても平気よ」。いずれ死を迎えるとしても、今、毎日の中でいちばん大切にしていることをする時に、いちばん素敵でいられる服を――。市絵の恩師へのそんな思いが伝わってきます。意外な出来上がりに驚く恩師ですが、やわらかなパンツスーツを着てホースで庭に水をまく顔には笑顔が輝いています。

『HER』に登場する「年寄り」の女性写真家が家でよく着ているのは、シャツです(Tシャツではなくて、“伸びない”ちゃんとしたシャツ!)。細い体が大きめのシャツの中で泳ぐようでかっこいい! シャツはしわになるので家着の選択肢からはずしていましたが、むしろ家で着るのだからしわになったって構わないんですよね。

部屋に籠ってする仕事・マンガ家の安野モヨコさんはこういっています。「『汚れてもいい』というのがいちばんの優先順位で選んだ服なんて来たくない」と。「いつでも自分が気持ちよく楽しくいられる格好」が最優先だと!! 私も宅配便の人が来たときに躊躇(ちゅうちょ)してしまうような家着からの脱却を誓います!!

【文中に登場する作品】

●『繕い裁つ人』池辺葵著/講談社 祖母の店を受け継ぎ、地元の人のために服を仕立てる市絵。百貨店からの誘いを受けても頑なに断り、その人にぴたりと寄り添い、かつその人を美しく見せる服を作り続けている。外で誰かに見せるための服も、家で自分のために着る服も、どちらもすてきです!

●『HER』ヤマシタトモコ著/祥伝社 必死で「フツー」でいようとするけれど、そのことに違和感も感じている女子高生が、隣に住む女性写真家との交流を通して感じたことは(CASE3)。「女」を赤裸々に描いた短編集。おしゃれ過ぎて男に怖がられる女、モテ服に身を包む女など服装の考察も秀逸!

※このコラムは『レタスクラブ』2012.1.10売り号掲載に掲載されたものです。月1回、漫画コラムを掲載していきます。