すべてマンガに描いてある(21)…「この夏は、マンガで海外旅行気分!」
『夢の雫、黄金の鳥籠』 (c)篠原千絵/小学館

夏休み目前だけど、ことしは忙しくて海外旅行は難しそう。せめて気分だけでも味わいたい!と思っていたら……『夢の雫、黄金の鳥籠』に描いてあった!

舞台は16世紀初頭のオスマントルコ帝国。若き皇帝のもとに妾(めかけ)の一人として献上された少女・ヒュッレムが、秘めた恋心と強い向上心、そして美しい「声」によって、しなやかにのしあがっていくお話です。

壮大なオスマントルコの風景、布をたっぷり使った女たちの優雅な服や、後宮(ハレム)内のきらびやかな調度品、女どうしでお風呂の中で裸のお茶会を開く珍しい習慣(そして、女たちによる、王の寵愛を巡る熾烈な覇権争いも)――。こんな、私たちにとって「遠い」国どころか、「もうない」国・オスマントルコの空気を、ベテラン少女マンガ家ならではの美しい絵で堪能できます。そう、距離だけでなく時間さえ越えて旅行気分を味わえてしまうのが、マンガ旅行の楽しさなのです!

もう一作、時空を超えた海外旅行を。『乙嫁語り』の舞台は、19世紀中央アジア。初々しいお嫁さんとその家族の普通の暮らしが新鮮です。あるお嫁さんは馬の上から弓矢で果敢にウサギを仕留め、ベテラン主婦たちは気の遠くなるような細かくて美しい刺繍を、娘たちに教えている。大人数で囲む食卓には、肉や平たいパン、木の実がにぎやかに並び、熱々のスープが湯気を立てる……今そこにあるかのような臨場感で(超絶的な精密さで!)描かれていきます。

「しょせん、紙の上のことでしょ」というなかれ。著者のその国への愛が感じられるこの2作品なら、異国の風に包まれるような気分を味わえること、請け合いです!


【文中に登場する作品】

●『夢の雫、黄金の鳥籠』篠原千絵著 小学館:小さな村で、広い世界を夢見ていた一人の少女。美しい黒髪の青年に目をかけられ、オスマントルコ皇帝の妾の一人となるが、そこは女たちの激しい闘いの場だった……! 己の身ひとつで、したたかに生き延びて行くヒュッレムにしびれます。忍ぶ恋にもドキドキ!

●『乙嫁語り』森 薫著 エンターブレイン:19世紀の中央アジアで暮らす「嫁」たちの姿を描いた連作。4巻では結婚に夢を抱く双子が登場。海に潜って魚を獲ったり、平気で高い木に登ったり、男の子とケンカもする勝気な少女たちですが、思いはどこまでもピュアでキュート!

※このコラムは『レタスクラブ』2012.7.10売り号に掲載されたものです。月1回、漫画コラムを掲載していきます。