すべてマンガに描いてある(24)…食欲の秋! ことしは大人っぽく楽しんでみる?
『女の子の食卓』志村志保子著 集英社

(c)志村志保子/集英社

食欲の秋到来! 旬のおいしさを物語でも味わいたいな、と思っていたら……『女の子の食卓』に描いてあった!

写真専門学校に通う弓は、公園でギンナン拾いをしていた気難しそうな老人にモデルになってくれるように頼みます。本当は苦くて嫌いなギンナンを「大好き」と調子よく話を合わせる弓に「一週間後に取りにきなさい」と老人はいうが、弓は忘れてしまい……(『教えてもらったギンナン』より)。老人が「一週間後」といったのは、ギンナンが収穫から食べられる状態にするまで手間と時間がかかるからなんですよね。まず土に埋めて腐らせ、やわらかくなった果肉を取り除き、残ったかたい部分を1週間、天日で乾燥させて、ようやくフィニッシュ。そんなありがたい秋の恵みを炒り、アツアツのところをギュッとかみしめると、甘みそしてほろ苦さが口に広がります。

時間が経ち、冬になる頃、思いがけない事実と共にギンナンを手にした弓。自分の無知と傲慢さを、ギンナンの苦みと共にかみしめる切ないラストに、こちらの口にもじわっと苦みが広がります。その苦みをおいしいと思えるのは、大人の特権なのかもしれません。

一方、「男の食卓」が分かるのは、『孤独のグルメ』。休日昼どきのデパート。レストラン街のけん騒から逃れるように屋上にやってきた中年男。軽食コーナーでさぬきうどんを注文し、「寒いのでたっぷりめ」に一味をかけて、はふはふと一人すすります。「ここでは青空がおかずだ」という、ちょっぴり大人の哀愁が漂うつぶやきを聞くと、肌寒くなってきたころに、一人で試してみたくなってきます。

食欲が増進&センチメンタルになる秋に、おすすめの2作品です。

【文中に登場する作品】

●『女の子の食卓』志村志保子著 集英社:あの夏の甘い麦茶、猫の好きななまり節、母が調理したズッキーニ……。食べ物を題材に、女の子たちの気持ちの揺れや変化を、丁寧に描いた短編集。秋の果物・イチジクにまつわる恋のお話も必読。どの話も、おいしそうなのに、胸にチクリと刺さります。

●『孤独のグルメ』(新装版)久住昌之原作 谷口ジロー作画 扶桑社:個人で貿易商を営む中年男・五郎の一人ごはんの日々。公園の休憩所でカレー丼を食べて「田舎のおばあちゃんちで食べたお昼かな」、ベンチでカツサンドを食べて「ソースの味って男のコだよな」など、五郎のつぶやきが味わい深い。

※このコラムは『レタスクラブ』2012.10.10売り号に掲載されたものです。