完璧男子より、ダメなとこ満載の意外性男子『タッチ』のタッちゃんにこそ母性愛は刺激される/【連載】このイケメン(マンガ男子)を見よ!(4)

#趣味   

タッちゃん、カッちゃん、南ちゃん。この三人の名前を聞いただけで『タッチ』のストーリーがするっと思い出せる方も多いのでは?

野球部のエースで成績優秀、まじめでやさしい弟・和也と、エッチでふまじめな兄・達也の双子。当然モテるのは弟・カッちゃん。でも後半、亡くなったカッちゃんの跡を継ぎ猛然と努力し、南ちゃんを甲子園に連れて行く、そんなタッちゃんが素敵よね……と思っていたあなた! 確かにそうです。が、実は前半からタッちゃんは、いい! すごくいい!

カッちゃんだけがちやほやされてもひねくれるどころか「わが弟ながら、文句のつけようがない」とむしろ誇らしげ。マイペースを貫く、という思春期男子とは思えぬ大物ぶり。さらに、そりゃ南ちゃんも惚れるわ、と思わせるエピソードも満載。高熱のある自分にいち早く気付き「ばかやろ!いつもおまえは倒れるまでガマンしちまうんだから」なんて保健室に連れて行く。さらにほめられたことしかない学校のアイドルである自分を、厳しく叱って時には平手打ちまでしてくれる……ふだんは「我関せず」って感じなのに、ですよ!? やっぱり女は予想通りのことしかしない完璧な男(カッちゃん)より、「ときどきわけのわからないことやるからなァ」(by南)な意外性とポテンシャルのある男(タッちゃん)に惹かれるものですよね……。

そして、「女には母性愛というものがあってだな―― ときには男の欠陥が強力な武器になることだってあるんだ!」(by南のお父さん)。そう、「私がいないとダメなのね」って思わせる男は、いい! タッちゃんには私がいないと……って、あ、南ちゃんがいるんでした。戦意を喪失させる女子ですねえ。くーっ!

【今回のイケメン】『タッチ』のタッちゃん:『タッチ』の26年後の明星学園を舞台にした『mix』が連載開始、あらためて注目が集まっています(44歳の三人はまだ登場せず)! 大人になって読み返すと、南ちゃんは最初からタッちゃん一筋だったこともよくわかって、片想いに耐えるカッちゃんのけなげさにも惚れました。ちなみに表紙中央がタッちゃん(兄)、左上がカッちゃん(弟)。

※このコラムは『レタスクラブ』2013.2.10売り号に掲載されたものです。

この記事に共感したら

Information

門倉 紫麻 かどくら・しま(バックナンバー
1970年、神奈川県生まれ。1993年慶應義塾大学文学部卒業。Amazon.co.jpエディターを経て、2003年よりフリーライターに。2014年より読売新聞主催「SUGOI JAPAN」セレクター。2015年より文化庁メディア芸術祭マンガ部門審査委員。
『ダ・ヴィンチ』『モーニング』などで、主にマンガに関する記事の企画・執筆、マンガ家へのインタビュー、コラム連載などを行なう。
著書に「週刊少年ジャンプ」作家の仕事術を取材した『マンガ脳の鍛えかた』(集英社、2010)、宇宙飛行士、宇宙開発関係者に取材した『We are 宇宙兄弟 宇宙を舞台に活躍する人たち』『We are 宇宙兄弟 宇宙飛行士の底力』(モーニング編集部編・講談社+α新書、ともに2012)。
またフランスにて、日本のマンガ業界用語を網羅したフランス人マンガファン向けの語学書『LE JAPONAIS DU MANGA』(Misato RAILLARDとの共著、ASSIMIL、2015)を出版。
最新情報は「漫画ライター門倉紫麻のブログ」

本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています。

LINEお友だち追加バナー

おすすめ読みもの(PR)