将来の備えに必要な額は 「人生設計の基本公式」でOK!

#くらし   

お金の運用を専門としている筆者ですが、近年つくづく思うのは「人生の大問題を運用で片づけようとしてはいけない」ということです。将来の安心を運用の利益で早くつくりたいと思って、かえって心配(端的にいって損失)を抱え込む人をこれまで数多く見てきました。

それでは、将来に対する備えをどうするといいのでしょうか。答えは、おおまかではあっても、しっかり計算し、計画的に貯蓄することです(貯蓄の中身でリスクを取る運用を行なうことは悪くありません)。

必要貯蓄率」で貯めておくお金がクリアになる!


老後に必要な生活費は人によって異なりますが、自分の現役時代の生活費との対比で考えるのが便利です。筆者は、ファイナンシャルプランナーの岩城みずほ氏と共著の本を作る際に、老後の生活費を確保するために現役時代に必要な「必要貯蓄率」を計算する式をつくりました。上図の式が、岩城氏が「人生設計の基本公式」と名づけた、その公式です。

例えば、40歳の会社員がいて将来65歳まで働き、この25年間の現役年数の平均手取り年収を480万円(月40万円)と考えているとします。将来の年金が年180万円(月15万円)、現在の金融資産額が600万円あるとして、95歳までの30年間の老後年数に、現役時代の支出の7割の暮らしをしようとした場合に必要な貯蓄率を求めてみましょう。

計算式に当てはめると、分子が0・7×480万円180万円600万円/30年=136万円です。分母は(25年/30年+0・7)×480万円=約736万円なので、分子を分母で割ると約18・5%が答えです。40万円の18・5%は7万4000円なので、毎月の必要貯蓄額は7万4000円となります。現役時代に毎月約32万6000円で暮らし7万4000円貯めた合計と年金収入を含めると、老後に月約22万8000円で暮らせる計算です。

将来、退職金があったり、あるいは子どもの学費がかかったりといった、大きな収入・支出があると、現在資産額は増減します。例えば、子どもを中・高・大と私立に進学させて学費が1200万円かかるなら、現在資産額をマイナス600万円として計算すると分子は176万円と

なり、必要貯蓄率は約23・9%に跳ね上がります。生活はいささか苦しいかもしれません。

この場合、例えば70歳まで働くことにして現役期間を延ばす(老後年数は縮みます)とか、10年間ほど奥様が働いて年間100万円程度の収入を得る(資産額に1000万円加えます)とか、可能なところまで必要貯蓄率を下げる方法を考えるといいでしょう。現実的な数字が出るまでさまざまな計算を試してください。

必要な貯蓄ができる家計なら、細かな心配は要りません。老後をいたずらに不安視することなく、大いに人生を楽しんでください。

※この情報は10月21日現在のものです。

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■教えてくれたのは:山崎 元さん
経済評論家。楽天証券経済研究所客員研究員。専門は資産運用。近著の『確定拠出年金の教科書』(日本実業出版社)も好評発売中。

イラスト/平井さくら

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