毎日へとへとだからこそ知っておきたい!

「子どもにとってよい食事」とは?

仕事に、家事に、子どもの世話に忙しくて食事の用意に十分な時間をかけられない。でも、なるべくおいしくて、栄養バランスの取れた食事を食べさせたい…。
レタスクラブが行ったアンケート結果によると、「家族にバランスのよい食事を出さなければいけない」と考えている人は実に9割近くにも上ることが分かりました(※2020年4月実施、末子の年齢が3歳以上11歳未満の20~40代の既婚女性332人)。

家族に「バランスのよい食事を出さなければいけない」と思いますか?

一方、「実際に家族に栄養バランスのよい食事を出すことができているか?」という質問では、半数近くが「あまりできていない」「できていない」と回答しています。
理想通りの食事を作ることができていない、と考える私たちが何に気を付けるべきなのか、食と教育の専門家に聞いてみました。

まずは「食べる」という習慣を大切に。栄養はその次です!

 はじめに管理栄養士の浅野まみこ先生に、最近の子どもの食事事情を伺いました。日々子どもと接する中で、気になることとは?

「朝食を食べない子や、少食の子が多いのが気になっています。どちらも子どもの成長のためには大切なことです」と浅野先生。
 先生によると、どちらの場合も、改善するにはまず「食べる」習慣を身に付けることから。「初めから栄養バランスを整えよう!と意気込む方が多いのですが、その必要はありません。気長に食卓に料理を出し、食べられるものから無理せず食べるようにすればいいんです。栄養バランスを考えるのは、その後でOKです」。

たんぱく質と野菜の割合は1:1から始めればOK!

 そして、日々食事を作る親が「ハードルが高い」と思いがちな栄養バランスについても、難しく考えなくていいようです。浅野先生は「ご飯などの炭水化物、肉や魚、卵、大豆製品などのたんぱく質、野菜をできるだけ入れるようにするのがいいですね。たんぱく質と野菜の割合は1:1から始めてみてください」と言います。それぞれの上手な取り方を教えてもらいました。


■ 炭水化物

 最近は大人の「糖質オフ」の影響で米を食べない子も多いですが、米は炭水化物だけでなくたんぱく質や水分の摂取にもなります。間食をおにぎりにするなど、少食の子は食事と食事の合間に補うのもよい方法です。

「子供はもっと米を食べてほしい」と浅野先生。おやつや「中食」におにぎりなどで食べるのもおすすめ

■ たんぱく質

 成長期には、たんぱく質をしっかりと摂取しておくことが大切です。量の目安は1食あたり、子どもの手のひら1枚分程度の大きさ。鶏肉の唐揚げなど、揚げ物にするのも子どもウケがいいですね。鶏肉のたんぱく質は筋肉をはじめ体をつくる働き、食事誘発性熱産生(DIT)によって体を温め、代謝を上げる働きがあります。
 魚嫌いの子にはさば缶のほか、サーモンなどのサラダフィッシュや魚肉ソーセージなどを選ぶと、よく食べてくれることが多いです。


■ 野菜

 野菜嫌いの子は、おひたしや塩炒めなどはなかなか食べないかもしれません。この場合は焼き肉のタレやチーズなど、子どもの好きな味付けで調理するのがおすすめ。食べなくてもいろいろな野菜を出して、経験してもらうことが大切です。

 浅野先生のポイントに加え、さらに食事バランスについて知りたい人は、農林水産省が発行している『親子で一緒に使おう!食事バランスガイド』が便利です。
 主食、主菜、副菜などの量の目安、間食の取り方、市販の調味料や食材を使ったアレンジレシピなど、家族みんなの食生活のポイントが分かりやすくまとめられており、家庭での食事作りの参考になります。

  • お菓子を食べ過ぎると食事が取りにくくなるので、時間と量を決める
  • 料理ができない時は野菜ジュースを利用して野菜不足をカバー
  • 朝食は米を中心としたスピードご飯、昼食はバランスの取れた給食、夕食は不足しやすい副菜を中心とした献立にする

など、日々取り入れられることがたくさん書かれています。

出典:「親子で一緒に使おう!食事バランスガイド」
出典:「親子で一緒に使おう!食事バランスガイド」農林水産省 (https://www.maff.go.jp/j/balance_guide/b_sizai/attach/pdf/index-4.pdf)

給食は栄養面の強い味方! 知らなかった味や素材、料理にも出合う絶好の機会

 家庭での食事作りを担う親が絶対的な信頼を寄せているのが、学校給食。「給食があるから子どもの栄養バランスは安心」と思っていてもいいのでしょうか?

 浅野先生によると、「1日に必要な食事量や栄養の3分の1が取れると考えてよいでしょう」とのこと。
また、給食には栄養バランスだけでなく、もう一つ、よい点があるそうです。
「給食は、家庭では出ない料理を食べたり、知らない味付けを知ったりするよい機会。さまざまな食材や味に出合うきっかけを与えてくれるんですよ。各家庭の食事にはそれぞれ個性があり、よく出る料理、出ない料理があったり、味付けも似たものになりがち。家族でない人が作った食事を食べることが、食についての知識を蓄え、興味を持つことにつながるのです」。

給食は1日に必要な食事量の1/3が摂れるように計算されている

お総菜にはトマトを切っただけ、レタスをちぎっただけの副菜でOK!

 日々忙しいと、スーパーなどのお総菜は強い味方。その場合、何か気にしたほうがいいことはあるのでしょうか。

 すべて手作りの家庭料理が一番というのは思い込み、というのが浅野先生の考え方。市販のお総菜に、野菜を加えるなど少しだけアレンジするのがおすすめだそうです。

「スーパーなどのお総菜はどうしても濃い目の味付けのものが多いので、例えば、揚げ物を買うときには、カットキャベツやカットレタスも一緒に買って添えるなどのひと工夫を。栄養が取れますし、全体の味のバランスも良くなります。
 野菜を添えてくださいと言うと、トマトサラダやごまあえなど凝ったものを作らなきゃ!と思われる方が多いのですが、トマトを切ったもの、レタスをちぎっただけで十分です。味付けしたものを増やすと、献立全体の塩分が高くなりますし、作る手間も増えます。『手抜きは悪じゃない、栄養バランスのため!』と考えましょう」。

市販のおかずに生野菜をそのまま添えるだけで、栄養バランスもアップ。濃い味のおかずも口の中で薄めて食べることができる

食品そのものは学力や性格に影響なし? 食べる環境や親子の関係値が大事

 続いて、教育家の小川大介先生にお話を聞きました。中学受験情報局『かしこい塾の使い方』の主任相談員でもあり、家庭教師として中学受験を目指す小学校高学年の子どもたちや家庭と日々向き合うほか、レタスクラブの連載「小川大介先生の子育てよろず相談室」でもおなじみです。そんな小川先生が考える「子どもと食事」の関係とは…?

「子どもの偏食や少食が気になるのは親として当然のことですが、一番よくないのは、無理に『食べなさい』と強制することで『食べることは嫌い』『食事の時間が楽しくない』と子どもに思わせてしまうこと。あれこれ食べさせようとした結果、食事そのものが嫌いになってしまっては意味がありません」と、小川先生。病気にならず、必須栄養素が最低限取れていれば、「少々偏食でもよい」という考えを持ってもよいと話します。 「例えば、お菓子でもカルシウムやビタミンが取れるものはあるし、野菜嫌いなら飲みやすい青汁を飲ませて食物繊維を補うこともできます。少食で1回に多くの量を食べられない子であれば、1日4食、5食にすればいいんですよ」。

 これまで何千人もの子どもと接してきた小川先生は、食べ物が学力や集中力に影響する、といったことは考えなくていいと言います。 「食べ物によって学力が低下する、集中力が切れやすいということではなく、親が子どもにどう関わっているかが大きく関係していると感じています。親に愛情を注がれ、自分を受け入れてもらえていると感じている子どもは、偏食でもきちんと集中できます」。

食事の時間は「栄養を取る時間」ではなく、「親子のコミュニケーションの時間」に

 小川先生によると、最も大切にしたいのは、「子どもが食事の時間を楽しみにすること」。栄養は少々偏っても、嫌いなものを無理やり食べさせたり、いやいや食べるより、食べたいものを食べているほうが親子の会話も弾み、笑顔が増え、食事の時間が楽しくなります。

食事は親子のコミュニケーションのツールの1つ。「食事は楽しい」という習慣を子どもの身につけてもらうことが大切

 これは必ずしも子どもと一緒に食べなくてはいけない、ということではありません。最近ではさまざまな事情により子ども1人で食事をすることも多くありますが、「例えば、塾で食べる弁当には『頑張ってね』『今日は〇〇入れたよ』と書いたメモを1枚添えてみてください。そして、子どもの帰宅後に弁当箱を見たら『全部食べたね』『残してたけど時間なかったかな?』と一言声を掛けてあげてください。子ども1人で作り置きの夕食を食べる時は、食べる時間を見計らってLINEでメッセージを送ったり、『食べている写真を送ってね』と伝えたり。お金を渡してコンビニで食事を買わせる時は、後で『何買ったの?』と聞いてあげたり。現代には便利なツールがいくらでもありますから、そんなコミュニケーション一つで、子どもは1人で食べていてもつながりを感じられるものなんですよ」。

 食事は栄養を取らせることだけが目的ではなく、大切な親子のコミュニケーションのツールの一つ。一緒に食べられなくても、心は離れていないことを伝える工夫をすれば親子ともに安心感につながります。

子どもは完璧な手作りの食事より、親の機嫌がいい方がうれしい!?

「日本の親は手作りの食事や完璧な3食にとらわれすぎ」とも小川先生は言います。
「欧米などでは、朝食も夕食も簡単なもので済ませることが多いですが、それでも子どもは育ちます。買ってきたものでも問題ないんですよ。それで親の時間が30分捻出できるのであれば、その分、本の読み聞かせをしたり、学校の話を聞いてあげたりするほうが子どもは喜びます。
 極論を言えば、子どもは完璧な手作りなんて求めていません。親の機嫌は、家庭内の雰囲気を左右します。手作りにとらわれて、忙しく不機嫌になっているほうが子どもにはマイナスです。楽しく笑顔で、無理なく持続できる範囲で食事を出せばよいと考えています。1食や1日の栄養やバランスを細かく気にするよりも、子どもが『ご飯、何時から?』と楽しみにしてくれることを心掛けるといいですね」。

手作りにとらわれず、心にも栄養を。一生ものの食習慣を育むことが大切

「子どものためのよい食事」と聞くと、どうしても栄養面にとらわれて「あれを食べなさい」「これを食べてはダメ」と考えがちですが、そこまで神経質にならなくてもいいようです。

 浅野先生は「1食や1日ではなく、1週間単位で栄養バランスを考えていけばOK。1日3食食べよう、いろいろな食材を入れてみようと意識していれば、基本的な栄養はある程度足りてくるはずです。好き嫌いが多少あっても、体は自然につくられていきます。今日は少ししか食べなくてもいい、そのうち食べてくれればいい。そんな大らかな気持ちを持ちましょう。さまざまな食材の味に徐々に慣れ、ある年齢になったら自分から食べるようになればいいんです。手作りだけにとらわれず、半調理品、外食もうまく活用して、食に興味を持ってもらい、経験を少しずつ積ませることが大事です」と言います。

 小川先生も「子どもの意思を信じてあげることが大切」と話します。「子どもはおなかがすけば食べるし、栄養のバランスが崩れると体調も崩れるということが理解できれば、あれも食べよう、これも食べようと考えるようになります。日々の食事の中で親が食べ物についての知識をできる範囲で与えてあげれば、子どもはおのずと選んでいつしかバランスよく食べるようになります」。

 また、小川先生は「食事は体の栄養だけでなく、心の栄養も取るもの」とも。「家庭での食事は、『食べる』という人間の最も基本的な行為を家族で共有するもの。親も子も、体の栄養だけにとらわれて心のバランスを崩してしまったら意味がありません。各家庭で無理のない範囲で作り、食べ、楽しい時間を過ごして体と心の栄養バランスを取ることが大切です」。

食事を出す家庭環境、食卓を囲む親子の会話、子供の受け入れ方などが子供の体と心のバランスのよい栄養につながる

 子どもの頃の食事の体験は大人になっても影響を残すもの。だからこそ、「今日明日に何を食べるか」ではなく、一生ものの習慣として伝え、身に付けさせるつもりで、日々の子どもの食事と向き合っていくことが大切だといえそうです。


取材・文=岡田知子(BLOOM)

Information

浅野まみこ

管理栄養士、コンビニ外食研究科。総合病院、女性クリニック、企業カウンセリングにて1万8千人以上の栄養相談を実施した経験を生かし、食育活動やレシピ開発、食のコンサルティングのほか、講演、イベントなど多方面で活躍中。テレビや雑誌、新聞などのメディアにも多数出演している。モットーは「食生活が楽しいと人生が100倍楽しい!」。

小川大介

教育家。中学受験情報局『かしこい塾の使い方』主任相談員。 京都大学法学部卒業後、コーチング主体の中学受験専門プロ個別塾を創設。子どもそれぞれの持ち味を見抜き、本人の強みを生かして短期間の成績向上を実現する独自ノウハウを確立する。個別面談の実施数は6000回を数え、受験学習はもとより、幼児低学年からの能力育成や親子関係の築き方指導に定評がある。各メディアでも活躍。著書多数。