コロナ禍で「健康診断」「がん検診」の受診率大幅ダウン!? そこに潜む危険とは

#美容・健康   

気づけば早くも師走。振り返ると、「コロナ禍で心身ともに疲弊した一年だった」と感じる人も多いはず。学校の休校や家族のテレワークで家事の負担は確実に増加したし、家の中でも外でも除菌に気遣う日々。そんな新しい日常をなんとか過ごしていたら、驚くほどあっという間に一年が経ってしまった印象です。

そんな中で、『今年度の検診が未受診なので早めに受けてください』という内容の「国民健康保険」からの通知が届いた方もいらっしゃるのでは?
健康診断もがん検診も「コロナが落ち着いてからにしようかな」なんて思っていたら今に至ってしまった…という方、実は結構多いようなんですよね。コロナの影響で、いつも以上に健康に気をつけてはいるんだけど、病院への足は遠のいてしまう。そんなジレンマを抱えている人も多いのではないでしょうか。

「健康診断」「がん検診」の受診を控える人が急増

ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社 メディカル カンパニーが、全国の20~79歳の男女1万5000人を対象に行った調査でも、受診控え傾向が顕著に表れています。特に緊急事態宣言発令後の4月~6月は、「健康診断」と「がん検診」どちらも5割超えの人が受診を控えていたという結果に。時間の経過とともに受診控えする人の割合も減ってきてはいますが、「来年度控えたい」という人も3割以上とまだまだ高水準。「がん検診」については、過去3年間に受診歴のある人でも、4人に1人は「来年度控えたい」と回答するなど、未だ多くの人が受診をためらっている様子がうかがえます。
その理由として大半の人が挙げているのが、やはり「新型コロナウイルスの感染リスク」。その不安感から二の足を踏む人が多く、今年度中の「健康診断」実施率は約6割、「がん検診」にいたっては、約3割とかなり低い実施率となる見込みだそう。

コロナ禍で健康診断の受診率が大幅にダウン

2020年10月時点で「健康診断」を受診済みの人が約4割(38.6%)、今年度中に受診予定の人を含めると約6割(57.7%)。「がん検診」の受診済みはいずれも2割程度、今年度の受診予定を含めても3割程度にとどまっています。

「国民健康保険」加入者の約半数が未受診

受診状況は、加入している健康保険によっても異なり、特に低いのが「国民健康保険」の加入者。「健康診断」は2人に1人しか受けておらず、「がん検診」の受診率も総じて2~3割とかなり低い水準にとどまっているようです。
「国民健康保険」の加入者の多くは、自営業や会社を退職された方とその家族。企業で加入する「組合けんぽ」などの場合、会社から健康診断を義務付けられることも多いですが、「国民健康保険」の場合は本人の自主性に任されています。その分、「コロナが怖いな」「医療機関が大変なときに受診してもいいのかな?」「昨年受けたし大丈夫かな?」などといろいろ考えて、結局答えが出ずに先延ばしにしてしまい、受診控えも増えてしまうのでしょう。

1年の受診控えが早期発見・早期治療の機会を逸することにも


そんな受診控えが続く状況に、危機感を募らせているのが、現場の医療者たちです。公益財団法人がん研究会 有明病院の佐野武病院長は、「がん検診の意義は、症状のない人たちに早期のがんを見つけて治すこと」とその重要性を説きます。
「毎年確実に多数の早期がんが見つかり、比較的軽い治療で治癒しています。非常にゆっくり成長するがんもありますが、多くは着実に進行しますので、がん検診が半年、あるいは1年遅れることで、より進んだ状態で見つかることになり、より大きな手術や強い抗がん剤が必要になります。せっかく毎年検診を受けてきていたのに、コロナのために1年延びた、あるいは何となく受診しなくなってしまって、来年あるいは再来年に進行したがんが姿を現すといったことが、必ず起こってくる」と警鐘を鳴らします。

コロナ感染の不安から、体調不良でも約4割の人が医療機関を受診せず


受診控えの流れは「健康診断」や「がん検診」に限ったものではありません。さまざまな体調不良や異常を感じながらも、医療機関を受診しないで済ませる人が多くいることにも、懸念が抱かれています。

【画像を見る】医療機関を受診する必要があった際の行動とは

緊急事態宣言発令後の4月以降、医療機関の受診を考えた時の行動についてたずねたところ、体調不良や体調異常を感じても、約4割(36.1%)の人が受診を「一時期控えた」、あるいは「現在も延期している」と回答しています。

コロナ以外の健康リスクにも目を向けて


「がんの中には比較的早期に何らかの症状を引き起こすものがあり(例えば早期胃がんに伴う胃潰瘍の症状や、小さい肺がんが引き起こす軽い肺炎など)、医療機関を受診して検査で発見されることがたびたびあります。日本は内視鏡検査やCTへのアクセスが世界で最もよく整備されており、検診以外の日常診療で発見される早期のがんが少なくないのですが、今、これが減っているのです」
コロナのために受診を後回しにしてしまうことは、その他の病気の早期発見、早期治療のチャンスを逸してしまう危険性があるということ。
「新型コロナウイルスは、どうやら簡単にはいなくならない。それならば正しく恐れ、必要な安全策をとりながら、一歩を踏み出しましょう。まだ遅すぎることはありません」

コロナ回避のため検診を後回しにしたら、他の病気が進行してしまったなんてことは、やはり避けたいもの。受診をためらってしまう気持ちもわかりますが、コロナ以外の健康リスクにも目を向けて、今一度検診について考えてみる必要がありそうです。

Profile

公益財団法人がん研究会 有明病院  病院長  佐野 武 先生

公益財団法人がん研究会 有明病院 病院長
佐野 武先生
東京大学医学部卒業。東京大学第一外科、国立がんセンター中央病院などでの勤務を経て、現在は(公財)がん研有明病院病院長を務める。AMEDプログラムオフィサー。国際胃癌学会事務局長。日本対がん協会常務理事。ドイツ消化器一般外科学会特別賞、英国上部消化管外科学会特別賞、日本消化器外科学会賞などを受賞。

【レタスクラブニュース編集部】

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