「やる」と言いつつなかなかやらない。子どもに学習習慣を身につけさせるには?【小川大介先生の子育てよろず相談室】

#育児・子育て   

2021年1月15日発売の新刊『自分で学べる子の親がやっている「見守る」子育て 』の著者、小川大介先生が、悩める親たちにアドバイス。「うちの子のこんなところが心配」「私の接し方、コレでいいの?」など、子育てに関するありとあらゆる悩みにお答えします。連載第61回目のお悩みはこちら。

【お悩み】

年中の5歳の娘に、そろそろ学習の習慣づけをしたいと思っています。私が仕事で忙しいのもあり、今まで塾などのお教室には通ったことはありませんが、自粛期間中に簡単なドリルなどはさせていました。でも、保育園が再開してからは、毎日やることが難しく、なかなか習慣として定着しません。

本人にやる気はあるようなのですが、保育園から帰ると、好きなテレビを見て、夕飯を食べ、お風呂で遊んでいるうちに、やる時間がなくなってしまいます。やりたいこと優先で動いてしまうのが問題だと思い、「お風呂の前にドリルを済ませて、後でゆっくりしたら?」と提案するのですが、「わかった!後でやる」と言いつつ、結局ドリルに取りかかるのはいつも一番最後。10時近くになって眠い目をこすりながらやっています。寝るのが遅くなってしまうのなら、生活習慣を優先させたほうがいいと思いつつも、上手に自分で取り組む習慣や考えを身につけさせたい気持ちもあります。小学校に上がるまでに、習慣づけができたらと思うのですが、どういうふうに持っていってあげればいいでしょうか?(愛さん・33歳)

【小川先生の回答】


時間をイメージして動くのは、5歳にはまだ難しい

まず、“5歳の子が半日の時間を具体的にイメージすることは不可能”ということを理解してあげなければいけません。「いつからやる」と口頭で言ってても、それは単語として喋っているだけで、「後でやる」の“後”が何時を指すかなど、本人の中では繋がっていません。“自分が実際にその時間になって動き出せている”なんてことは、イメージできていないのです。そんな5歳の子に、自分で時間配分して自主的に取り組ませようとするのは、無理難題を押し付けているようなもの。5歳の子でもムリなく動けるための下準備を、親側がしておく必要があります。

実行できる具体的な予定を組み、本人に動きをイメージさせる

具体的には、本人がイメージできるようなタイムテーブルを作ってあげること。テレビ、夕飯、お風呂、本を読むなど、帰宅後にしたいことやすべきことを挙げ、タイムテーブルに書いていきましょう。食事、風呂、テレビ、就寝時間など、動かせない時間をまず埋めていき、「ドリルをするなら、テレビの後か、お風呂の前しか時間がないけど、どっちがいい?」と、そこは本人に選ばせてあげます。

このとき、テレビが6時に終わるからといって、『6時からドリルの時間』としてしまうのではなく、普段のお子さんの動きを思い起こしながら時間設定するのがポイントです。「いつもテレビの後、何か気になって、テレビ欄を確認してるよね」、「トイレに行く時間も必要だね」など、本人の日常の動きを補ってあげ、「それだと6時ピッタリにスタートするのは難しそうだから、10分からにしようか?」と、実際に動ける予定を一緒に作っていきましょう。そうやってシミュレーションしながら予定を組むことで、本人も動いている自分をイメージしやすくなります。イメージが湧けば、実際にもできるようになると思いますよ。

日によっては、帰りが遅くなったり、テレビの時間が長くなったり、イレギュラーのことが必ず出てくるでしょう。そんなときは、「今日はドリルをせずに、明日の朝にやろう。そのぶん早く寝ようね」というように調整し、できるスケジュールに変えていけばいいだけ。“予定は変更すればいい”と、大人のほうが思えばいいのです。

子どもに習慣が身につかないのは、親が褒めるのをさぼるから

動ける予定を作ってあげたら、絶対に忘れちゃいけないのが、“取り組めたことを褒める”ということ。「上手に書けてるね」とか、「3ページもやってすごいね」とか、プラスαの部分を褒めるだけでなく、「予定通りにできてすごいね」と、そこをちゃんと褒めてあげることが大切です。

子どもの習慣づけができるか否かは、親が褒める習慣を続けるかどうかにかかっています。親が褒めるのをさぼるから、子どもがやめるのです。よく子どもの習慣について相談を受けますが、親の方に褒める習慣がついていないことがほとんど。そのくらい習慣づけというのは大人にとっても難しいものであり、子どもが簡単にできることではありません。だからこそ、予定通りにできたことは当たり前ではなく、予定通りに進められたこと自体が素晴らしいのです。

褒めるタイミングをGoogleカレンダーに入れておく

ただ、褒めようと思っていても、家事などでバタバタして、褒めるタイミングを逸したまま終わってしまうこともあると思います。そんな時のために、Googleカレンダーの中に、褒めるタイミングを入れておくのがおすすめです。5分前にポップアップで「そろそろ褒める時間」と表示されるようにしておけば、褒め忘れを防げます。

そもそも子どもの状況を観察し、その場その場で瞬発的に判断して、望ましい声かけをするというのは、相当なプロでないとできないこと。自然とできる人なんてまずいません。でも、先に自分の行動を計画して、予定に入れておけば、普通の人でもプロ並みの対応ができるようになります。
子どもが始めたら「早速始めて、えらいね」と取りかかったことを褒め、完了できたらまた褒めて、ということを続けていくと、段々と習慣が体に馴染んできます。毎日当たり前のことを褒め続けることで、勝手に勉強できる子に育ちますよ。

【小川先生のアドバイスを受けて】
愛さんはまず、保育園から帰ってきてから寝るまでの流れを娘さんと相談しながら書いてみました。

もう1つテレビアニメが見たい、という娘さんに「でももう1つ見るとお風呂に入る時間がなくなっちゃうね」とメモを見ながら話をすることで、寝るまでの時間が限られていることを把握することができました。
先の見通しをつけるクセがつき、好きなことを先にやると、あとで時間がなくなってやらないといけないことができなくなる、ということがわかるようになってきたそうですよ。

回答者Profile

小川大介先生
小川大介

教育家。中学受験情報局『かしこい塾の使い方』主任相談員。

京都大学法学部卒業後、コーチング主体の中学受験専門プロ個別塾を創設。子どもそれぞれの持ち味を瞬時に見抜き、本人の強みを生かして短期間の成績向上を実現する独自ノウハウを確立する。個別面談の実施数は6000回を数え、受験学習はもとより、幼児低学年からの能力育成や親子関係の築き方指導に定評がある。各メディアでも活躍。著書多数。

文=酒詰明子

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