小1のひらがなで早くも挫折。がんばっても〇をもらえず、国語嫌いに…。【小川大介先生の子育てよろず相談室】

#育児・子育て   

2021年1月発売の書籍『自分で学べる子の親がやっている「見守る」子育て 』の著者、小川大介先生が、悩める親たちにアドバイス。「うちの子のこんなところが心配」「私の接し方、コレでいいの?」など、子育てに関するありとあらゆる悩みにお答えします。連載第78回目のお悩みはこちら。

【お悩み】

今年から小学生になった娘が、早くも壁にぶち当たっています。今、国語ではひらがなから習っているところなのですが、先日、先生との面談の際に、「ひらがながちゃんと書けていないので、なぞりからしっかりやるように」と指摘されました。実際にプリントを見てみたら、確かに明らかな殴り書き。全くなぞろうとしている様子が見られなかったので、「丁寧になぞろうね。なぞるっていうのは線の上をはみ出さないように書くんだよ」というところから説明し、自分で書くところも、見本の字を見ながら「最初はどの辺からスタートしてるかな?」「どっちに向かってるかな?」など、付きっきりで見るようにしました。

その甲斐あってか、大分上手に書けるようになり、もう大丈夫だろうと思っていたのですが、先生からはまた直しが真っ赤に入って戻されました。さすがになぞりの部分は○でしたが、それ以外の自分で書くところは全て×。それも、ほんの2mmくらい線が長いとか、位置が1~2mmズレてる程度の細かいところまで直してきます。私としては、とめ、はね、はらいができていなかったり、曲線にすべきところが角ばっていたりなどの直しであれば納得がいくのですが、あまりにも細かく完璧な形を求められるので、正直驚きました。

他の保護者の方に聞いてみたら、やはりその先生は文字に関してはとても厳しく、結構苦労している子も多いとのこと。ただ、それを乗り越えると、2年生になる頃には、他のクラスの子たちとは明らかに違うくらい上手になるという話でした。確かにそうなのかもしれないとは思うのですが、毎回時間をかけて「上手に書けた!」と思ったものが、全て赤で返されると、娘のモチベーション的にもかなり低下。入学2か月足らずで早くも「国語が嫌い」と、苦手意識を持ち始めてしまいました。この後もカタカナ、漢字とまだまだ続いていくので、どうやって子どもの気持ちを乗らせていけばいいのか、サポートの仕方をアドバイスいただきたいです。(Mさん・40歳)

【小川先生の回答】

先生の価値観の背景やこだわりを理解する

完璧な文字を書くというのは、あくまで先生個人の価値観でしかありません。先生がその価値観を持つのは自由だし、その結果、練習して上手になり、喜んでいる子たちがいるのも事実でしょう。でも、娘さんのように学習意欲が失われるようであれば、元も子もありません。しかも、ご家庭の中でのOKラインと先生のラインが違っているのも問題です。先生と親との価値観の違いに翻弄されて、子ども自身が混乱するという非常にまずい状態に陥っているといえます。

価値観の対立というのは、どこまでもいってしまうため、まずは先生が何を目的に、文字に対する厳しいアプローチをしているのか、その方針を理解することが必要だと思われます。「先生は字をとても大切にされていますが、それは先々の何が大事になってくると思われるからなのでしょうか?」と、そのこだわりの理由を聞いてみましょう。その時に「これくらい書けて当然でしょ」みたいなことを言う人であれば、それは自分のことしか見えていない人。自分が字が書けるから、その自分のフィールドで評価したいタイプなんだと、それをわかってあげればいいと思います。「10年20年先になって、文字の大切さをわかってもらえるはずだから、今は嫌がられても厳しくやる」という使命感を持ってやっている人もいるでしょう。そういった先生の想いやこだわりは、親として子どもを見守るためにも理解しておくべきです。

おうちでの〇を決め、先生基準は+αの評価に

先生の価値観が自分の考えとは違っても、それを否定したり自分の価値観を主張したりはしないほうがいいでしょう。大切なのは先生の想いを理解することであり、そもそも大人の価値観を変えるのは大変なことです。

先生が何を信奉しているかを理解したら、本人にはかみくだいて説明してあげればいいと思います。「先生はもっと綺麗な字が書けるようになると期待して、応援してくれてるんだよね。でも、ママとしてはあなたの字はOKだよ」と、おうちでの〇を決めてあげればいいのです。先生が赤を入れたとしても、それは「ダメ」と言われたわけではないこと。既におうちで〇をあげているわけだから、先生の赤はあくまでもより綺麗に書くためアドバイスであることを説明してあげましょう。そのうえで、先生要求の基準はものすごく高いけど、そこを目指していくことの価値はあるから、できる範囲でやろうというスタンスでいいのではないでしょうか?そして、先生の赤入れが減ってきたら褒めてあげるというように、本人に評価の受け止め方を丁寧に教えてあげることが大切です。

回答者Profile

小川大介先生
小川大介

教育家。中学受験情報局『かしこい塾の使い方』主任相談員。

京都大学法学部卒業後、コーチング主体の中学受験専門プロ個別塾を創設。子どもそれぞれの持ち味を瞬時に見抜き、本人の強みを生かして短期間の成績向上を実現する独自ノウハウを確立する。個別面談の実施数は6000回を数え、受験学習はもとより、幼児低学年からの能力育成や親子関係の築き方指導に定評がある。各メディアでも活躍。著書多数。YouTubeチャンネル小川大介の「見守る子育て研究所」で情報発信中。


文=酒詰明子

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