子どもの状況が見えにくい中学校生活。どう見守っていけばいい?【小川大介先生の子育てよろず相談室】

#育児・子育て   

2021年1月発売の書籍『自分で学べる子の親がやっている「見守る」子育て 』の著者、小川大介先生が、悩める親たちにアドバイス。「うちの子のこんなところが心配」「私の接し方、コレでいいの?」など、子育てに関するありとあらゆる悩みにお答えします。連載第84回目のお悩みはこちら。

【お悩み】

今年中学生になった娘がいます。小学校の時とは学校と保護者との距離感が大分違い、子どもが今学校でどんなことをしていて、どんな状況なのかを把握しにくいことに戸惑っています。子どもの自律を促すため、少しずつ手放していく時期かとは思いますが、学校からは「いきなり全てを本人任せにするのではなく、手は少しずつ放しても目は離さないでください」と言われています。とはいえ学校から「今こんなことをやっています」「こんな課題を出しています」という連絡がいちいちくるわけではないし、毎日「今日は何の宿題が出てるの?」と本人に聞くのもうるさがられるだけな気がします。

夏休みの宿題については聞いてみたのですが、「小学校より少なくてめちゃくちゃラク」とのことでした。宿題はあまり多く出さない代わりに、空いた時間で自分の好きな学びを深めて欲しいという狙いらしいのですが、うちの子は時間があったら好きな漫画を読んでダラダラするばかり。まだ自学自習というところには至っていないのも悩ましいところです。中学受験が終わったこともあり、中1から塾に通わせるつもりはまだないのですが、子どもの学習状況を把握し、家庭学習を進めていくにはどうすればいいのか、中学での親の見守り方をアドバイスいただきたいです。(Rさん・45歳)

【小川先生の回答】

各教科の先生について子どもと一緒に研究する

中学校が小学校と大きく異なっているのは、先生の役割が分散化している点。小学校では担任の先生がほぼ全ての科目をカバーしていたのに対し、中学では科目毎に先生が違っています。そのため小学校の時は担任の先生のことを理解してさえいれば大体のことを把握できていたのが、中学ではそうはいかないのです。

ですから解決策としては、各教科の先生がどういう人かの理解を確実にすることに尽きます。先生の名前、キャラクター、授業の進め方、こだわりポイントについて、子どもに話を聞いてみましょう。中間、期末と定期試験も2回受けてきていると思うので、それらを確認することも先生理解に大いに役立ちます。テストの出され方で、先生の出題の意識や、どういう勉強をして欲しい人なのかがわかるからです。どういう先生かさえわかれば、大体やることの想像はつくと思うので、あとは時々どの単元まで進んだかを確認するくらいで済むようになります。

つまり子どもに聞くのは「何をやったか」ではなく、「どんな先生なのか」です。「この先生はこういう授業の進め方をするから、受ける側としてはこういう準備をしておくといい」など、子どもと一緒に先生について研究するようなイメージで、先生理解をしておきましょう。そうすることで、本人も各教科の先生対策ができるようになっていくと思います。

学習の到達ラインを設定し、それ以外は本人に任せる

自学自習については、まず「どの程度の学習成果や学習の到達ラインにはいて欲しいか」という基準を、親子で約束しておくのがいいと思います。例えば、学年で50番以内をキープできていたら、進学先として本人が望む方向へ行けそうというのであれば、「クラスでは10番以内にいるようにしなさい」でもいいし、英語が得意な子なら、「いつまでに英検の何級をとる」でもいいと思います。基準はご家庭によってそれぞれでいいと思いますが、ただ、なぜその基準なのかという根拠はしっかり示すようにしましょう。「なんとなくこれくらいの順位にいれば安心」という親の安心ではなく、子どもにとってどういう意味があるのかが重要です。それを親子で話し合うことで、本人も納得感のある基準を設定できます。

そのうえで、この基準はクリアするように自分なりに努力して欲しいこと、宿題量が少ないから練習不足で解けなかったというのは、クリアできない理由にはならないことも、本人に伝えましょう。先生からの課題が少なければ、自分で勉強を進めればいいだけ。「問題集が必要なら買ってあげるから選びなさい」というように、本人がどう時間を使い、どう勉強を進めていくかを考えさせるいい機会にしたらいいと思います。そして、基準さえクリアすれば、あとは本人が好きなように時間を使ってOKというスタンスでいいのではないでしょうか。そのほうが口うるさく指示出ししなくても済むし、子どもの自律を促すことにも繋がります。

やりたいことが見つからない時間があってもいい

ただ、完全に手放しにするのではなく、定期的に中間チェックは入れるようにしましょう。「今週過ごしてみてどうだった?」「来月はひとつ目標決めてやってみたら?」など、時々どうなのかを聞いてあげることは大事です。そうしていくうちに何かやりたいことが見つかるかもしれません。

もし見つからなかったとしても、それはそれでいいと私は思います。正直な話、「したいことしなさい」と言われても、多分8割以上の子は「したいことと言われても…」というのが本音でしょう。それこそ漫画やゲーム、YouTubeなどに気持ちが向かうだけで、将来に繋がりそうな夢のある何かを持ってる子なんてごく一握りです。たまに「やりたいことだからがんばってきました」という中高生の起業家のような例もありますが、あれは特殊だからニュースになるんです。進学校でもどこでも、したいことがはっきりしておらず、なんとなく18歳になる子が多数派でしょう。自分の中高生の時のことを振り返ってみてもそうだったのではないでしょうか?

ある程度の言葉がけはするにしても、基本的には本人を信じて待つという姿勢でいいと思いますよ。「何がしたいかわからない」という時間があってもいい。まだ中学一年生。時間はいくらでもあります。

回答者Profile

小川大介先生
小川大介

教育家。中学受験情報局『かしこい塾の使い方』主任相談員。

京都大学法学部卒業後、コーチング主体の中学受験専門プロ個別塾を創設。子どもそれぞれの持ち味を瞬時に見抜き、本人の強みを生かして短期間の成績向上を実現する独自ノウハウを確立する。個別面談の実施数は6000回を数え、受験学習はもとより、幼児低学年からの能力育成や親子関係の築き方指導に定評がある。各メディアでも活躍。最新刊は『子どもが笑顔で動き出す 本当に伝わる言葉がけ』(すばる舎)。YouTubeチャンネル小川大介の「見守る子育て研究所」で情報発信中。

文=酒詰明子

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