ちょっとずつ進化!? 食べる瞬間が一番おいしくなるテクニックで作る「さばのみそ煮」【プロが教える和食の基本】

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食べる瞬間にピークがくるように味ののせ方を徐々に100%に持っていく

『プロが教える和食の基本 素材の旨味を引き出せば究極に美味しくなる』 5回【全10回】


普段使いの食材や調味料で作るいつもの味に飽きてきたら、プロの技を試してみませんか?
「美味しさには理由がある」「なぜ美味しくなるのか?」という考え方に重点を置き、和食の定番料理を中心にプロのコツを紹介してくれるのは、料理人の関斉寛さん。
味に差がつくひと手間を踏まえながら、家庭で極上の料理を作るコツをお送りします。

さばのみそ煮

食べる瞬間にピークがくるように味ののせ方を徐々に100%に持っていく

食べる瞬間にピークがくるように味ののせ方を徐々に100%に持っていく

主な旨味成分

さば(イノシン酸)
二番だし(イノシン酸、グルタミン酸)
玉ねぎ(グルタミン酸)

◆材料(2〜3人分)
さばの切り身 2切れ
玉ねぎ(厚さ7〜8mmの輪切り) 2枚
長ねぎ(2等分) 7〜8cm
酒 15〜20ml

〈煮汁〉
二番だし(作り方は下記参照) 300ml
酒 60ml
砂糖 45g
合わせみそ(赤みそ60g、白みそ30g) 90g
みりん 12ml
濃口しょうゆ 12ml
かもじねぎ(作り方は下記参照) お好みで

◆作り方
1 鍋に二番だしと玉ねぎを入れて(一)火にかけ、沸いてきたら弱火にし、玉ねぎが透き通るまで10分ほど煮る。

二番だしに加える玉ねぎが旨味の隠し味

(一)二番だしに加える玉ねぎが旨味の隠し味
玉ねぎの甘さを調味料と考え、煮汁に品を持たせます。こぽんこぽんと波打つ超弱火で甘さを引き出します。

2 さばは皮目に切り込みを入れ(二)、2等分にする。鍋に水(分量外)と酒を入れて沸かし、さばを入れて1分ほどゆでる(湯霜)(三)。氷水に取って洗い(四)、水気を拭く。

さばに細かな切り込みを入れ、味がしみ込みやすくする

(二)さばに細かな切り込みを入れ、味がしみ込みやすくする
切り込みを入れると皮が張らず、煮崩れしにくく、旨味が出やすく、かつ調味料がしみ込みやすくなります。

ぐらぐらの熱湯で湯霜をして臭みをしっかり抜く

(三)ぐらぐらの熱湯で湯霜をして臭みをしっかり抜く
骨からいい味が出ますが、余計な血が残っていると生臭さの原因に。青魚は特に臭みを抜いておくのが鉄則。

氷水に取りウロコや余分な骨、血などを取る

(四)氷水に取りウロコや余分な骨、血などを取る
骨の髄の部分までしっかり掃除しないとだしが濁ってしまいます。歯ブラシを使うのもおすすめです。

3 1の鍋に長ねぎ、さば(身を下に)を加える。煮汁にさばとねぎが浸るようにし、アクを取りながら、素材の旨味をよく抽出する。味が出てきたら、酒を加え(五)、ひと呼吸おいて、砂糖を加えて溶かす。

素材の旨味をよく引き出してから調味料を加える

(五)素材の旨味をよく引き出してから調味料を加える
だしに玉ねぎの甘さがしっかり溶け出ているのを確認して、まず酒から。酒の風味でまろやかにします。

4 ガラスボウルにみそを入れてから煮汁をお玉1〜2杯分加えて、しっかりとみそを溶かす。1/5量ほど鍋に加えて(誘いみそ)(六)、みりん、しょうゆの順に加える。

誘いみそで下味をつけ段階的に味を完成させていく

(六)誘いみそで下味をつけ段階的に味を完成させていく
誘いみそを下味としてなじませてから、最後にしっかりみそをきかせて100%の味に持っていきます。

5 しょうゆの角が取れてまろやかになったら残りのみそを加える。オーブン用シートで落とし蓋をして、煮汁が半量くらいになるまで煮る。玉ねぎを煮始めてからトータル15~20分以内に仕上げる。

6 器に盛って煮汁をかけ、お好みでかもじねぎを添える。

野菜の切り方

包丁の使い方、切れ味で食材の味は変わります。
素材に包丁が入る感覚を感じながら、押しつぶさないように優しく、リズムよく

かもじねぎ( 長ねぎ)

1 長ねぎの白い部分を切り開き、芯を除いて重ねる。 

長ねぎの白い部分を切り開き、芯を除いて重ねる


2 端の部分は丸まっているので、そのカーブに対して垂直に包丁を入れると細く切れる。平らな中心部は真上から。

端の部分は丸まっているので、そのカーブに対して垂直に包丁を入れると細く切れる


3 長ねぎの青い部分もせん切りに。

長ねぎの青い部分もせん切りに


4 合わせて氷水にさらす。

合わせて氷水にさらす


美味しいだしの取り方

昆布だし

湯冷ましした軟水で、旨味を引き出す。
あっさりとした鍋物や煮物に

◆材料(作りやすい分量)
昆布 10cm角
水 1L

◆作り方
鍋で湯を沸かし、火を止めて人肌まで冷ます。ボウルに入れ、表面をさっと拭いた昆布を加え、冷蔵庫で一晩(8〜10時間)浸す。

湯冷ましした軟水で旨味を引き出す

湯冷ましした軟水に浸しておくと旨味が格段に違う。

一番だし

澄み切った黄金色。
吸い物など、だし自体を味わう料理に

◆作り方
1 昆布は沸く前に取り出す
昆布だしを鍋に移し火にかける。60℃位で昆布を取り出して香りが飛ぶのを防ぐ。

昆布は沸く前に取り出す


2 アクをよくすくう
そのまま沸かしてアクをよく取る。雑味がなくなる。火を止め粗熱を取る。

アクをよくすくう


3 温度を測る
温度が下がり、80℃になったら4の工程へ。1℃違うと風味が変わるので測る。

温度を測る


4 かつお節を加える
80℃になったら、かつお節を加え、沸騰しない火加減をキープし1〜 2分煮出す。

かつお節を加える


5 静かに流し入れてこす
ボウルにザルを重ねてさらしを敷き、 4をこす。かつお節は押さない。

静かに流し入れてこす


6 冷蔵庫で2日保存可能
5のとき、ボウルに菜箸を渡して、その上にザルをのせるとこしやすい

冷蔵庫で2日保存可能


二番だし

調味料やうま味成分を補って土台として使用

◆材料(作りやすい分量)
A
 昆布(一番だしを取ったもの) 1枚
 かつお節(一番だしを取ったもの)全量
B かつお節 10g
水 1L

◆作り方
1 追いがつおをする
鍋にAと水を入れて火にかけ、沸いたら20分ほど煮て、Bを加え、4〜5分ほど煮る。

追いがつおをする


2 かつお節はしっかり押す
ボウルにザルを重ねて、さらしを敷き、1をこす。冷蔵庫で2日保存可能。

かつお節はしっかり押す


レシピを参考にするときは

・「旨味」とは、「素材が本来持つ美味しさ」の意味、「旨味成分」とは、たんぱく質を構成するアミノ酸(グルタミン酸、イノシン酸、グアニル酸、コハク酸)の意味で記載しています。

・特に記載がない場合は、砂糖は上白糖、塩は自然塩、酢は穀物酢、酒は清酒、みりんは本みりん、小麦粉は薄力粉、梅干しは塩分8%を使用しています。

・液体の5mlは小さじ1、15mlは大さじ1、200mlは1カップで計量できます。

・水溶き片栗粉は、片栗粉と水を1:1の割合で混ぜた分量を記載しています。

・黄ゆず、木の芽、白板昆布以外は、スーパーで購入した食材と調味料を使用しています。

・野菜類、きのこ、豆類、果物は、特に記載がない場合、洗う、皮をむくなどの作業をすませてからの手順です。

・フライパンは鉄、鍋はアルミの雪平鍋を使用しています。

・特に記載のない場合、火加減は中火です。

※本記事は関斉寛著の書籍『プロが教える和食の基本 素材の旨味を引き出せば究極に美味しくなる』から一部抜粋・編集しました



著=関斉寛/『プロが教える和食の基本 素材の旨味を引き出せば究極に美味しくなる』(KADOKAWA)

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