わたしの幸せの道へ!離婚の3つの種類と手続き/新おとめ六法

#くらし   
「離婚したい」と思ったら

『新おとめ六法』13話【全13話】


何かへん?私が悪いの?考えすぎ?そう感じたときに頼りになるのが「法律」です。難しい側面もあるけれど、「法律は知っている人しか守ってくれない」という弁護士の上谷さくらさんが、わたしたちに身近なトラブルに関する法律を解説。
知ってさえいれば「おかしい」と声をあげられることや、知らなかったでは済まされないことなど、私たちに寄り添う大切な法律についてのエピソードをご紹介します。


離婚の種類と手続き◆あなたを守る法律

民法 第763条 協議上の離婚
夫婦は、その協議で、離婚をすることができる。

民法 第770条 裁判上の離婚
第1項 夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。

【解説】離婚の主な3つの方法

「離婚したい」と思っても、夫婦のどちらか一方の判断だけで、離婚することはできません。離婚には主に次の3つの方法があります。離婚のうち、協議離婚が全体の約90%、調停離婚が約8%、裁判離婚が約1%です。

協議離婚

お互いが離婚することに合意して、離婚届を提出することで成立する離婚です。離婚理由を問いません。

調停離婚

話し合いで離婚できないからといって、すぐ裁判をすることはできません。まずは家庭裁判所で、離婚について話し合う離婚調停を行う必要があります。家庭裁判所の中の小さな会議室のような部屋で、調停委員さんが話を取り持ちます。
あくまで話し合いですので、双方が合意することが必要です。一方が離婚を拒否したり、離婚意思が合致していても離婚条件が合わない場合は、離婚できません。

裁判離婚

調停離婚でも合意できなかったけれど、どうしても離婚したい場合は、裁判をするしかありません。裁判離婚を提起できるのは、民法第770条第1項に定められた次の5つの要件の一つ以上を満たす場合です。

1 配偶者に不貞な行為があったとき
2 配偶者から悪意で遺棄されたとき
3 配偶者の生死が3年以上明らかでないとき
4 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき
5 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき

裁判離婚の要件のうち、1~4に該当しない場合、5の「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」にあたるかどうかが問題となります。「性格の不一致」や、「DV」「子育てをしない」「酒癖が悪い」などがこれにあたります。
重要なのは、それぞれの理由によって「婚姻関係が破綻しているといえるか」という点です。離婚の原因があり、夫婦関係がすでに破綻していたり、夫婦関係の修復が困難なことを立証できれば、裁判で離婚することができます。

【手続き】協議離婚の場合

離婚届を役所に提出します。子どもがいる場合、必ずどちらが親権者なのかを決めなければなりません。養育費や財産分与などの離婚条件については、公正証書にするのがおすすめです。公正証書にしておけば、たとえば養育費の支払いが滞った場合、ただちに給与差し押さえなどの手続きが可能になります。公正証書は、公証役場で作成します。

調停離婚の場合

調停離婚が成立すると、家庭裁判所が「調停調書」という書類を作ります。調停調書は、公正証書や裁判離婚の判決書と同様の効力があるので、養育費の支払いが滞った場合などに、差し押さえが可能になります。また、この調書があれば、離婚届に双方が署名・押印する必要はありません。一方が調書を持って役所に行けば、相手の署名・押印なしに離婚届を提出できます。

裁判離婚の場合

裁判離婚をすると、「判決書」が出ます。そして、離婚も訴訟である以上、控訴・上告できますので、判決を確定させることが必要です。判決が確定したら、「確定証明書」を家庭裁判所で出してもらいましょう。判決書と確定証明書を一緒に役所に持って行くと、相手の署名・押印なしに離婚届を提出できます。

離婚には主に次の3つの方法があります


【ポイント】結婚していたときの名前のままにしたい

離婚が成立すると、婚姻時に姓を変えた側は、自動的に旧姓に戻ります。結婚していたときの姓を名乗り続けたい場合、届出が必要です。期限は離婚のときから3カ月以内です。忘れないように離婚届と同時に届け出ましょう。

【ポイント】子どもの戸籍は自動的にうつらない

たとえば離婚で母親が旧姓に戻り、子どもの親権を持つ場合、母親は結婚時の戸籍から抜け、新しい戸籍を作りますが、子どもの戸籍はそのままではうつりません。
新しい戸籍に子どもを入れるためには、まず子どもの苗字を母親の旧姓に変更する手続きが必要です。これを、「子の氏の変更許可の申し立て」といい、家庭裁判所に申し立てます。手続きは簡単ですので、裁判所のホームページを確認してください。
子どもの苗字が母親の旧姓に変更されたら「審判書謄本」が交付されますので、それを持って役所に行き、「入籍届」の手続きをします。
父親が婚姻時に苗字を変更した場合も同じです。

【解説】勝手に離婚されていた!?

離婚届は誰でも簡単に記入ができるうえ、夫婦2人が揃って提出する必要はありません。そのため、本人の意思に反して片方の配偶者が勝手に離婚の届け出をしてしまうことも可能です。
たとえば夫婦の仲が極度に悪化していたり、離婚の話し合いがなかなかまとまらず長引いていて早く不倫相手と再婚したい場合など、一方がさっさと届け出てしまうことがあります。

もし、本人の意思に反して離婚届が役所へ提出され、それが受理されてしまうと、形式上では協議離婚が成立してしまいます。
本来であれば、離婚合意のない離婚届出は無効になります。しかしいったんは協議離婚が成立しますので、離婚が成立したことを認めたくないときは、家庭裁判所に対して協議離婚の無効について調停を申し立てることが必要になります。
このような無断での離婚届出を防止するために、離婚届の不受理申出制度が存在します。

【手続き】不受理申出制度とは?

配偶者が一方的に提出した離婚届を認めないときは、家庭裁判所での調停、または訴訟をすることになり、離婚の無効を確認するための手続きが大きな負担となります。
もし、配偶者から勝手に離婚届を出される心配がある場合は、早い段階で役所に対して離婚届の不受理申出をしておきましょう。
不受理の申出手続きは難しいものでなく、一度提出をしておくと、その取り下げを本人がしないかぎり有効です。そのため、本人の知らないところで離婚届が受理される心配はなくなります。


著者:上谷さくら
弁護士(第一東京弁護士会所属)。犯罪被害者支援弁護士フォーラム事務次長。第一東京弁護士会犯罪被害者に関する委員会委員。元・青山学院大学法科大学院実務家教員。福岡県出身。青山学院大学法学部卒。毎日新聞記者を経て、2007年弁護士登録。保護司。

※本記事は上谷さくら著の書籍『新おとめ六法』から一部抜粋・編集しました。

著=上谷さくら イラスト=Caho/『新おとめ六法』

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