あれこれ興味を持つけど、どれも長続きしない!継続してがんばる力を育むには?【小川先生の子育てよろず相談室】

#育児・子育て   
 

「うちの子のこんなところが心配」「私の接し方、コレでいいの?」子育ての悩みは尽きません。でもそのお悩みも、教育のプロの目を通すと、お子さんの個性や魅力を再発見するきっかけになるかも!?
教育家の小川大介先生が、子育てに関する悩みに対してアドバイス。回答文最後の「大丈夫!フレーズ」が、頑張っているあなたの心をスーッとラクにしてくれますよ。連載第101回のお悩みはこちら。

【お悩み】

9歳(小3)と1歳の娘の母で、現在育休中です。長女の習い事の選択について悩んでいます。今は、運動系ではプールと空手、勉強系ではそろばんと英語に通うほか、自宅でタブレット学習もやっています。全て本人がどうしてもやりたいと言ったので、家でも練習をがんばるという約束で始めましたが、どれもその熱量が長続きしません。放っておくと全然やらないため、私の声かけも次第にきつくなってきています。

特に下の子が生まれてからは、いろいろできるようになっていく赤ちゃんの一挙手一投足を褒めるいっぽう、上の子に関してはできていないところばかりに目が行ってしまい、指摘が増えている状態です。良くない傾向だとは思いつつ、なかなか直せていません。先日も、娘が嫌々パフォーマンスでやっているように見えたので、「そんなに嫌なら全部辞めな」と言ってしまいました。でも本人は「続けたい」と言うし、「プールで一番上の級になりトロフィーをもらいたい」など目標もあるため、とりあえず続けている状況です。

娘は習い事以外でもいろいろなことをやりたがるタイプで、興味を持った時はとても集中して取り組みます。例えば、図書館で借りた料理本を見ながら、自分でお昼ご飯を作って満足気に食べたり、サッカーの本を読んで、いきなり外で練習を始めたりなど、スイッチが入った時の集中力は親の私から見てもすごいと思うことがあります。ただ、あまり難しいことに挑戦するというよりも、簡単にできそうなことをやって、できたらすぐに満足してしまう傾向にあります。ピアノを弾くにしても、難しい曲を1から練習してできるようになるというのはあまり好きではなく、10分くらいがんばればできるようになる曲を練習して、そのできたものをずっと弾いて楽しむタイプです。また、ドリルを与えた時も、3年生のはあまりやらず、試しに2年生のを与えてみたら一生懸命やりだしたり、本も、小さい子向けの絵本ばかり読んだりなど、3年生よりも少し下のレベルのものを楽しんでいます。私としては、何かひとつでもいいので、やりたいことをしっかりやってくれたらと思っているのですが、地道に継続してがんばることができていません。

ただ、過去には本人がとてもがんばった経験もあります。運動が苦手で、逆上がりがずっとできなかったのですが、2年の時に先生に「惜しいところまでできてるから、もうちょっとだよ」と言われたのがきっかけで一念発起。本人が「練習したい」と言ったので、YouTube動画を見てコツを教えたり、ちょうどいい高さの鉄棒がある公園を探し回ったりしました。そして「ここならできそうな気がする」と言った遠くの公園まで毎日通いつめ、1日1時間以上も黙々と練習。その結果3日目にできるようになり、本人もとても喜んでいました。

そういうがんばり屋さんの面もあるので、習い事ではまだ情熱を傾けられるものに出合えていないだけかもしれません。でも、本人が「やりたい」と始めたことだし、ちょっとやってみて嫌になったら辞めるという悪循環にするのもよくない気もします。習い事を続けるにしろ、辞めるにしろ、どんなことを考慮して判断すればいいのか、アドバイスいただきたいです。(Kさん・38歳)

【小川先生の回答】

不安感が強いから、自信の持てるものを集めたがる

あれこれ手を出すけど長続きしないというということですが、そもそも何故あれこれ手を出したがるのでしょうか?いろいろなことに興味があるのも確かでしょうが、好きでやっているというよりも「自分はこれができる」という武器をたくさん持ちたがっているように私には感じられます。おそらく不安感がとても強い子で、自分に自信がないのでしょう。だから、自信を持てるもの、自分の武器となるものを集めたがっているような気がします。

もしかしたら以前に、「お友達はできるのに自分はできない」など、他の子と比べて気にしてしまうような出来事があったのかもしれませんね。ピアノで簡単な曲を弾くのも、2年生のドリルをやるのも、自分ができることを確認したいから。「いろいろできる自分でありたい」という欲求が強く、できることを増やして安心したい気持ちが大きいのでしょう。だからちょっとやってうまくいかないと、自信のなさが出てきてしまい、遠ざけたくなるのだと思います。

「惜しい!」「もうちょっと」で、できそうな予感を与える

できることを増やしたいというチャレンジ精神は持ちながらも、同時に非常に慎重な子でもあります。できそうもないことにとにかく取り組むというのはすごく怖くて、できる見通しが立って初めてやる子。料理にしても、サッカーにしても、ピアノにしても、「できる」という気がしたからやってみたのでしょう。ですから、逆上がりの練習のためにちょうどいい高さの鉄棒を探し回ったのは、実はとても素晴らしいこと。見た感じ「できそう」に思えたことが、がんばれた理由です。見通しが立ったことについては、やり切る力があり、非常にがんばり屋さんだと思います。

見通しが立ってから取りかかるタイプのため、「やってみないとわからないよ」という勧められ方は非常に苦手です。先生の「惜しい、もうちょっと」の声かけでやる気を出したように、できているところを褒めてあげ、「もう少しでできそう」という気持ちにさせてあげると俄然がんばれる子だと思います。

欠点指摘ではなく、できているところを確認して褒める

ですから習い事についても同じように、まずはできているところを確認してあげましょう。「クロールの手がキレイに揃ってるね」、「息継ぎが上手になってるね」など、できているところ、うまくいったことをまず聞いて、自慢させてあげることが大切です。そのうえで、もうちょっとでできそうなところに取り組み、できることを増やしていきます。じょじょにできることの階段を積んでいくようなイメージで、一歩ずつ進んでいくのがポイント。「1級を取りたいなら今はこれをやらなきゃ」という逆算思考ではなく、「やってたら1級になったね」という形に導いてあげるほうが娘さんには向いています。

また、できることから始めるとがんばれる子というのは、言い換えれば「ここができてない」という欠点指摘やダメ出しの指導は全く向いていません。「ここができてない」ではなく「ここができたら完璧だね」という言い方にしていきましょう。「惜しい!」「もうちょっと!」「いける、いける!」をキーワードに声かけすれば、できることをちゃんと積み重ねていける子です。

気分の盛り上がりにアンテナを張り、満足いくまでやらせてあげる

習い事の選択基準については、そういったスモールステップでできることが増えていきそうなものだけを残し、義務的に取り組んでいる状況のものは一旦整理してあげてもいいかもしれません。というのも、娘さんは何かに取り組む際、1~2時間という単位でどっぷりと打ち込むスタイルの子。複数のメニューを1週間の中でこなしていくのはあまり向いていないからです。毎日コンスタントに取り組むよりも、「やる時はやる」という波を作らせてあげたほうが集中できるし、伸びます。ですから、スケジュールを詰め込み過ぎず、本人の気分のムラを許容できる1週間を作ってあげましょう。

やる時はやる子なので、大人の役割としては、本人をいかに「やれる」気分にさせるかに尽きます。スケジュール管理の発想は一回捨てて、本人が楽しそうとか、自信を持てているなど、気分の盛り上がりにアンテナを張るようにしましょう。そして、本人の気分が乗った時に満足いくまでやらせてあげること。不安感が強く自信がない状態だからこそ、たっぷりできたという達成感や安心感を増やしてあげることが大切です。そしてできたことを褒めてあげ、本人に「私はこれできる」と言わせてあげることで自信もついていきます。

子どものできていないところに目が向くのは、親としての不安感が強いから

最後に、お母さん自身、指摘グセを自覚しながらもなかなか直せていないと反省されていましたが、必要以上に自分を責める必要はありません。そもそも、なぜできていないところばかりに目がいくのかというと、お母さん自身の母親としての不安感が強いからではないでしょうか。本当はもっとかまってあげたいのに、十分なことをしてあげられていないという負い目や不安感が、子どもに対して「できていて欲しい」という願いへと変わり、できていないことに対してイライラしてしまうのです。つまり、自分が母親としてできていないと思うから、子どももできていないように見えてしまうというわけ。ですから、まずは自分の理想の母親像を一回横に置き、現実的にできる範囲のことをやればOKとハードルを下げてみてはいかがでしょう。

今まで、娘さんをうまく褒めてあげられていなかったと反省するより、それができないような状況に自分自身を追い込んでいたことに気づきましょう。そして、「時間のない中、自分なりにやってるよね」と自分自身を認めてあげること。実際、下のお子さんを抱えながら、十分がんばっていると思いますよ。無理な理想を追い求めず、もう少し余裕が持てる状態に自分自身を整えれば、自然と娘さんのいいところに目が向き、褒めてあげられるようになると思います。

小川先生からの「大丈夫!」フレーズ
『見通しが立つことについてはやり遂げる力がある子なので大丈夫』
「できそう」とわかれば俄然がんばれるという素晴らしい長所を持っているお子さんです。そこをわかってあげ、できるようになったこと、大丈夫と思えることを意識的に伝えていけば伸びていきますよ。そしてお母さん自身も、十分がんばっているから現状に満足して大丈夫。

回答者Profile

小川大介先生
小川大介

教育家。中学受験情報局『かしこい塾の使い方』主任相談員。

京都大学法学部卒業後、コーチング主体の中学受験専門プロ個別塾を創設。子どもそれぞれの持ち味を瞬時に見抜き、本人の強みを生かして短期間の成績向上を実現する独自ノウハウを確立する。個別面談の実施数は6000回を数え、受験学習はもとより、幼児低学年からの能力育成や親子関係の築き方指導に定評がある。各メディアでも活躍。最新刊は『子どもが笑顔で動き出す 本当に伝わる言葉がけ』(すばる舎)。

小川大介の見守る子育て研究所YouTubeチャンネル公式LINEアカウントでも情報発信中。

文=酒詰明子

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