中学受験に失敗。自信喪失で落ち込む娘になんて声をかけてあげたらいいのかわかりません【小川先生の子育てよろず相談室】

#育児・子育て   
受験で全落ち…。自信喪失で落ち込む娘になんて声をかけてあげたらいいのかわかりません【小川先生の子育てよろず相談室】

「うちの子のこんなところが心配」「私の接し方、コレでいいの?」子育ての悩みは尽きません。でもそのお悩みも、教育のプロの目を通すと、お子さんの個性や魅力を再発見するきっかけになるかも!?
教育家の小川大介先生が、子育てに関する悩みに対してアドバイス。回答文最後の「大丈夫!フレーズ」が、頑張っているあなたの心をスーッとラクにしてくれますよ。連載第127回のお悩みはこちら。

【お悩み】

小6と小4の娘がいます。長女が中学受験でどの学校からも合格をもらえませんでした。本人が「行きたいところしか受けたくない」と主張したため、滑り止めを受けていなかったのです。本人はかなり自信喪失しています。公立中に行くことになりますが、落ち込んでいる娘にどう声をかけてあげればいいのかアドバイスいただきたいです。(Kさん・39歳)

【小川先生の回答】

積み重ねてきた努力は確実に本人の力になっている

まず、今回のようなことが起きてしまった子どもに対し、どんなアドバイスをしたらいいかということですが、まず絶対に言わなきゃいけないのは「努力は裏切らない」ということです。合格通知がもらえなかったことで「裏切られた」と取ってしまう子どもや親は意外とたくさんいるのですが、それは人生が12歳で終わると考えているようなもの。子どもはそれ以降も学習を続けて成長していきます。そして、中学受験の学習に取り組んだ日々というのは、その学習を行わなかった選択肢に比べて、間違いなく多くの力を身につけているはず。知識量も思考力も、努力したぶん成長しているのです。ここでいう「努力は裏切らない」とはそういうことであり、身につけた力を今後の学習で活かしていけばいいのです。「積み重ねてきた努力であなたが成長した事実は変わらないんだから、これからそれを使っていけば、やってきたことが無駄じゃなかったことが絶対にわかるよ」と、中学受験に挑んだ日々を肯定し、「あなたには力がある」ということをはっきりと何度も言いましょう。

「自分はダメだ」という勘違いを正す

不合格通知をもらった子どもは、自分を否定されたように受け止めてしまいがち。でも実際は、その入試日のタイミングで受けたテストの点数が、たまたま「合格点に満たなかった」というだけのことなのです。「あなたはうちの学校にはふさわしくない」とかそんなことは何も書かれていません。だから「自分はダメだ」とか「やってきたことに意味がない」なんて思う必要は全くないのです。もし試験日が1週間後、1か月後だったら、一問でも違う問題が出ていたら、合格者だって絶対に変わってきますよね。つまり、本当に一時的な今回のタイミングにおいての結果でしかないのです。もちろん、合格できなかったことは悔しいし悲しいと思います。でもその結果は「あなたがダメだ」と言っているわけではないということを、ちゃんと分けて考えることです。

そもそも中学受験の学習というのは、小学生にとっては難し過ぎるし量も過剰。それを何年間もがんばってきたこと自体すごいことです。毎週のようにテストを受け、順位を出されるという過酷な状況に身を置き、それでも最後までやり遂げた子が、ダメなはずがありません。「あなたはダメじゃない」「あなたはがんばれてきた人なんだ」ということを伝え直すことも必要です。

「全落ち」は子どものせいではない

ここでちょっと厳しいことを言わせていただきますが、中学受験において「全落ち」というのはさせてはならないことです。大学受験であれば、「ダメだったらもう1年浪人してがんばる」という本人の意欲に期待するのもありかもしれませんが、中学受験は違います。たとえ本人が「ここしか嫌だ」と言ったとしても、それはひとつも合格できなかったらどんな思いをするかまで想定した発言ではないはず。なぜなら、まだ小学生で、人生経験も本当に少ないからです。

また、「行きたいところしか受けない」と言っている子どもというのは、「受けるからには行ける可能性がある」という勝手な願望を持っていることが多いもの。現実の数字は合格ラインに届いていなくとも、「試験日までがんばったんだから合格もらえるかも」と自分に都合のいいように事実を歪めて取ってしまうのです。これは認知バイアスといい、当事者としては仕方のないことでもあります。だからこそ、子どもが言ったからといって、合格可能性の低い学校の組み合わせの受験をさせてしまうのは避けるべきなのです。

全落ちさせてしまうのは親と塾の責任で、子どものせいではありません。妹さんもいらっしゃるようなので、また受験することがあるのならば、そこだけはわかっておいてください。これは、今後中学受験をする予定のご家庭すべてにお伝えしておきたいことです。

中学生活の日々を充実させることで、自然と傷も癒えていく


合格がもらえなくて落ち込んでいる子というのは、公立中学という道があることを忘れがちです。そのため「公立中学に進学する」という間違いなく糸が切れていない道があるのに、「自分は行くところがない人だ」と思ってしまうのです。ですから、公立中学に進学したヴィジョンについて話し合ってみることも大切です。勉強でがんばりたいこと、部活でやってみたいことなど、どんな中学生活を送りたいかを改めて考えてみましょう。

ここで「中学受験がうまくいかなかったから、高校受験でリベンジだ」なんて言ってしまう親もいますが、それはやめてください。受験はリベンジするようなものではなく、あくまでも子どもが成長して選んでいく選択肢に過ぎません。子ども自身が、受験結果に納得がいかず、怒って「リベンジしてやる」と言ってるぶんには構いませんが、落ち込んで自分を責めている子に、親がリベンジを課すのは絶対NGです。

中学受験の痛みをカバーしてくれるのは、中学生活における本人自身の満足感や達成感に他なりません。中学生活の日々をどれだけ充実させるか、楽しめるか、納得するかが、痛みを癒してくれる唯一の方法です。下手に「高校受験を目指してがんばるぞ」ですり替えてしまうと、かえって痛みが消えずに残ってしまうので気をつけましょう。もちろん不合格だった事実は残るし、傷は消えないかもしれません。でも、日々の満足が貯まっていくことで、傷の痛みを感じなくなっていきます。充実した中学生活を送るにはどうしたらいいか、お子さんと一緒に考えてサポートしてあげてください。

小川先生からの「大丈夫!」フレーズ
『中学受験を完走した子がダメなはずがない』
今は落ち込んでいるかもしれません。でも、落ち込んでいるということは、それだけがんばっていたということ。そのがんばって身につけたことは、必ずこの先の勉強にも活かされます。「努力は裏切らない」「あなたはダメじゃない」ということを、はっきり言い続けてあげましょう。努力が無駄じゃなかったことがわかれば、またがんばれるはずです。

回答者Profile

小川大介先生
小川大介

教育家。中学受験情報局『かしこい塾の使い方』主任相談員。

京都大学法学部卒業後、コーチング主体の中学受験専門プロ個別塾を創設。子どもそれぞれの持ち味を瞬時に見抜き、本人の強みを生かして短期間の成績向上を実現する独自ノウハウを確立する。個別面談の実施数は6000回を数え、受験学習はもとより、幼児低学年からの能力育成や親子関係の築き方指導に定評がある。各メディアでも活躍。最新刊は『子どもが笑顔で動き出す 本当に伝わる言葉がけ』(すばる舎)。

小川大介の見守る子育て研究所YouTubeチャンネル公式LINEアカウントでも情報発信中。

文=酒詰明子

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