ものを捨てるのは苦手。でもごちゃごちゃはイヤ! そんな矛盾を解決して、物が多くても素敵に暮らすコツとは?

#くらし   
ものを捨てるのは苦手。でもごちゃごちゃはイヤ!  そんな矛盾を解決して、物が多くても素敵に暮らすコツとは?


みなさんは自分の家を、気に入っていますか? 私ライターTは、毎日帰宅すると家がごちゃついていて、気分が上がりません。収納の扉を開けて「あれ、どこいった?」と探し物をしたり、インテリアがしっくりこないなぁと不満を感じながら過ごしています。

何とかしたいけれど、日々の家事と育児をこなすことで精一杯。忙しくて、なかなか片付けられないし…と、半ば諦めムード(汗)

そんなライターTにとって、新刊『築50年52平米ものが多いのに片づいて見える家』の著者で、整理収納アドバイザーの能登屋英里さんとの出会いは衝撃!物が多くても、部屋が狭くても、すっきりと心地よく、快適に暮らすコツを聞きました。

ビジュアルコンサルタント、整理収納アドバイザーの能登屋英里さん

能登屋英里さん
ビジュアルコンサルタント、整理収納アドバイザー。会社員時代、アパレルショップのディスプレーを担当し、ビジュアルのバランス感覚を養う。その後、ニューヨークとパリでの海外暮らしを経験し、帰国後に結婚。出産、育児など、ライフスタイルが変化したこと、そしてマンションをリノベーションしたことで、暮らしについて見直し。それがきっかけとなり、整理収納の道へ。物が多くても、素敵に見せながら、使いやすい収納を提案。2023年12月に初の著書『築50年52平米 物が多いのに片づいて見える家』(KADOKAWA)が発売。素敵な空間を彩る工夫、役立つ収納の考え方などを紹介している。


プチプラ雑貨がいっぱいでテンションが上がらない…?!
能登屋さんも若い頃には失敗があった


――インテリアが好きで工夫しているつもりだけど、物が多すぎてまとまりのない家に…と、自分の家に不満を感じながらも、どう改善していいかわからない…。そんな声をよく耳にしますし、私もまさにその1人です!

能登屋さん:その気持ち、よくわかります。私も少し前は、そう感じていました。独身時代、私はワンルームマンションで一人暮らしをしていました。当時は社会人として自由に使えるお金を、沢山の雑貨に費やしていました。かわいくってお手頃な雑貨が大好きだったんです。ナチュラルなテイストのカゴも好きだし、ポップなデザインも好き。あれこれ目移りしながら、その瞬間に“好き”と思ったものを集めていました。

能登屋さんの独身時代のおうち、初公開

――能登屋さんの独身時代のおうちも十分素敵だと思いますが……?

能登屋さん:柄のカーテンも赤い棚も、いいね!と思って手に入れたはずでした。好きな物を集めてハッピーなはず……。なのに、なんだかごちゃごちゃした感じがあって、家に帰ってもテンションが上がらなかったんですよね。


「物を増やさないように」と意識することで、物選びに劇的な変化が!

 収納が少ない分、見せる収納で実用を兼ねて

――能登屋さんにもそんな時代があったんですね! そんなごちゃごちゃした家を見直すようになったきっかけは?

能登屋さん:当時、アパレルの会社でディスプレーの仕事をしていたんですが、もっと経験を積みたい!と、海外で生活しようと決めたんです。社会人5年目でした。出発までの準備期間は約1年。お金を貯めて、物を増やさないように生活するなかで、気持ちに変化が出てきて…。

――物を買い集めるのが好きで、楽しみの一つだったはずが、「物を増やさないように」と意識して生活するのは、大変だったのでは?

能登屋さん:海外で暮らす、という大きな目標があったので、大変ではなかったです。ただ、私が今まで衝動的に“かわいい〜” “安いしお得!”と選んできた物を眺めて「あれ?プチプラばっかりの家だな…」と、違和感を持ったんです。海外へ発つ前に、テレビボードなどの家具を人に譲ったときに、手放すことができてちょっとホッとした感覚もあって。物に愛着が持てていなかった自分に気がついて、がっかりしたような、申し訳ないような…。今もその気持ちが心に残っています

――なるほど。客観的に物の選び方を見直すきっかけになったんですね。

能登屋さん:そうですね! その後約2年の間にニューヨークとパリで生活をしたんですが、使えるお金が限られていたので、その中で何を買う?と、今まで以上に吟味して物を選ぶクセがつきました。住んでいたのは家具付きのアパートだったので、好みではないインテリアをどう自分好みにするか、と、家具の配置を変えたり、マルチカバーを取り入れたり。工夫して、失敗して、の繰り返しでした。インテリアショップを巡ったり、友人のお宅を訪問したり、いろいろなケースを見ては、自分の家も見直していました。

長く愛着を持てる“好き”を発見することで、物選びの基準が決まった

日常生活で使うものも、見せる置き方を工夫

――インテリア、ディスプレーについて、たくさんの学びと刺激を得た期間なんですね!

能登屋さん:はい、まさにその通りでした。そんな中で一番の衝撃は、パリ滞在中に観光で訪れた北欧フィンランドでした。世界的建築家でデザイナーであるアルヴァ・アアルトの自邸を見学するツアーに参加したんですが、今もそのときの影響が大きくて!
シンプルでモダンな家具。そこに差し色となる色を使った小物がバランスよく取り入れられていて、この北欧モダンなインテリア、ムード、全部大好き!!と衝撃が走ったんです。今まではこのテイストも好き、あのデザインも好きと目移りしていたけれど、自分の中で軸が決まった瞬間でした

――さまざまなインテリアのテイストの中から“コレだ!”という自分の好みが1つ決まると、物を選ぶときの基準にもなりそうですね!

能登屋さん:そうなんです。独身時代の家は、カントリーなカゴもあれば、ポップな柄もあって、いろんなテイストがごちゃまぜになっていたから、ごちゃごちゃした印象になっていたんだな、と気づきがありました。


好きなテイストが決まったら、物が増えてもすっきり見えるように!


――帰国後は、北欧の旅で見つけた“自分の好きなテイスト”=北欧のモダンさを軸に、家づくりを再スタートされたんですね。

能登屋さん:そうですね。ただ、帰国後は結婚して、夫と2人分のものが増えました。出産したあとは、さらに赤ちゃんのものが増え……。好きなテイストだけ統一するのは難しく、物もどんどん増えるいっぽう。好きなインテリアを追求することが難しくて、どうしたらごちゃごちゃしないか悩み、いろいろ調べたなかで「整理収納アドバイザー」として活躍する方々を知り、興味が湧きました。夢中で勉強をして、資格を取ったんです。

 インテリアのアクセントになっている鍋は、毎日の調理にもフル活用


――大好きなインテリアを見せる、というディスプレーの仕事で培ったスキルに、整理収納の知識が加わり、まさに今の能登屋さんが完成していくのですね!

能登屋さん:はい! 「見せる」と「しまう」。上手にミックスするのが私流なのかな?と思います。今のマンションは52平米と、決して広くありません。収納するスペースも少ないし、それでも物が好き、飾って楽しみたいです。例えば素敵な水色の鍋は、あえてインテリアの一部に。空間の差し色としても効いているし、使いたいときにさっと取れて、キッチン収納を圧迫せずに済みます。

 「見せる」と「しまう」。上手にミックスするのが能登屋さん流

――おしゃれで使いやすくて、いいこと尽くしですね。ほかにも、素敵なカゴやエコバッグをつるして、そこに掃除用具やポリ袋を収納したり。ディスプレーの役を果たしながら、実はめちゃくちゃ実用的! 能登屋さんのおうちには、こうした工夫が満載ですよね!

能登屋さん:ありがとうございます。せっかくお金を出して手に入れた物は、できる限り愛着を持って、長く付き合える物がいい! 独身時代や海外生活を経て、そう感じるようになりました。だから、手に入れる前に本当によく検討します。他にもっといいものがないかと検索をしたり、どこに置くかをイメージしたり、サイズを測ったり、色はこれでいいか、家のテイストに合うか、長く使えるか……。なるべく物を捨てたくないので、手に入れる前にとことん吟味することが大切です。そして手に入れたら、とことん使い込むようにしています。

――なるほど。ほかにも、家をごちゃごちゃさせない工夫はありますか?

能登屋さん:やはり、整理収納のセオリーに従って、1つ手に入れたら、1つ手放すということも心がけています。不要になったものをどんどん溜め込んでいくと、処分するときもエネルギーが必要なんですよね。そもそも、わが家には溜め込んでおく場所がないので、物が増えたらなるべくこまめに人に譲ったり、処分したり。今の暮らしに合わせて少しずつアップデートしていくことが大切だと思います。

――毎日暮らしているとつい忘れがちですが、季節が変わったり、新しい年になったり、ちょっとしたタイミングで、暮らしもアップデートしていくことが大事ですね。習慣になれば、ごちゃごちゃした空間は少しずつ減っていく気がしてきました。

能登屋さん:そうなんです。小さいことでいいんです。ポリ袋を収納する容器や袋、変えてみようかな、とか。できるところから暮らしを見直して、アップデートしていくことが大事です。それを続けることで、物が多くても空間全体がまとまって見えるようになって、便利さも向上すると思います。いいサイクルが出来上がると、自分の家がもっともっと好きになっていきますよ!

写真/木村文平 文/田中理恵 

この記事に共感したら

おすすめ読みもの(PR)