自分で産んだはずの娘と血がつながってない!? 受精卵の取り違えをテーマにした話題作『うちの子、誰の子?』著者インタビュー

#育児・子育て   
 『うちの子、誰の子? もしもわが子が取り違え子だったら』より

2019年の厚生労働省の調査によると、不妊治療を受けた、あるいは現在受けているという夫婦は全体の18.2%。実に約5.5組に1組の割合の夫婦が不妊治療したことになります。

中でも高度な治療とされるのが体外受精。これは体から取り出した卵子を体外で精子と受精させて体の中に戻す治療法です。その受精卵が取り違えられ、他の夫婦の受精卵と知らずにそのまま出産して子どもを育てていた……そんな「もしも」を描いて話題になったのが『うちの子、誰の子? もしもわが子が取り違え子だったら』です。

この作品で描かれている状況は、あくまでフィクションです。しかし、取り違えられた子をもつ二組の夫婦が、それぞれの理由で葛藤する様子を読んでいると、「もし自分がこんな状況に陥ったら?」「血の繋がりと、これまで育んできた時間、どちらを選ぶ?」と、自分の心に問いかけずにはいられません。

今回は、そんな話題作の著者、たけみゆきさんにお話を伺いました。

著者・たけみゆきさんインタビュー

『うちの子、誰の子? もしもわが子が取り違え子だったら』より

『うちの子、誰の子? もしもわが子が取り違え子だったら』より


──この作品では、フィクションとはいえ夫婦の間に意見の食い違いや気持ちのすれ違いが生じていく様子がリアルに描かれています。それぞれの関係や性格は、どのように設定していかれたのでしょう?

たけみゆきさん「今回こだわったのは、不器用だったり意見の食い違いこそあれど、全員基本的には子どものことを第一に考える人であってもらいました。物語なので、登場人物をもっと派手なわかりやすい設定にすることもできたんですが…たとえば一方の親をすごく意地悪で悪意のある人物に描くとか。でもそれだとリアルではないというか、読者さんに感情移入していただけないんじゃないかなと思いました」

『うちの子、誰の子? もしもわが子が取り違え子だったら』より

──主人公である三橋夫妻の妻・サキは「血の繋がり」よりも「一緒に過ごしてきた時間」を大切にしています。子どもの交換を検討しようとする夫・タイチと気持ちが食い違いますね。

たけみゆきさん「母親側の気持ちは、もうほとんど私の代弁のような感じで、気持ちがスラスラと出てきました。物語を描く上では、逆に父親の感情の方をよく考えたように思います。父親は血の繋がりのない『他人の子』だとわかったときに母親と違って出産してないぶん『まだ3歳なら交換しても大丈夫なのでは?』ってある意味冷静に見れるのかも…?と思いましたが、そんなことはないと怒られるかもしれませんね。
きっとこの物語が生後1ヶ月の時だったら、1歳だったら、あるいは7歳だったら…母親も父親も、色々思うことや悩むことは変わっていたと思います」

『うちの子、誰の子? もしもわが子が取り違え子だったら』より

──一方、滝田夫妻のほうは最初の顔合わせから子どもの交換を提案してきます。妻のミナは消極的な様子ですが、夫のジュンイチは子どもの交換に最も積極的な人物です。最初はジュンイチにやや冷酷な印象を受けますが、物語が展開するにつれて次第に人間らしい迷いが見えてきますね。

たけみゆきさん「最初は憎々しい嫌な父親に見えるかもしれないんですが、血液型の検査でユウマが実子じゃないとわかったとき、浮気したのかってミナを疑うこともできたと思うんですよね……。でもそれをしなかったのってなかなかの愛だなって、自分で描きながら感動していました」

『うちの子、誰の子? もしもわが子が取り違え子だったら』より

──この作品を通して、読者の方に伝えたいメッセージは何でしょうか?

たけみゆきさん「『大事にしたい繋がりは、自分で選べる』ということでしょうか。
昨今、機能不全家族や虐待の問題もあって、血が繋がっているからといって家族だとも言えない状況があるのも事実です。逆に血が繋がっていなくても大事な家族になれますよね。夫婦だってもとは他人ですし。
大事にしたい人が誰か、ちょっと立ち止まって考えてもらうきっかけになれば嬉しいです」

『うちの子、誰の子? もしもわが子が取り違え子だったら』より


──今後は、どんな作品を手がけていきたいですか?

たけみゆきさん「ずっと日常のほのぼのしたものを描いてきたのですが、今回の物語で創作漫画を描く楽しさに気づくことができました。これから、また少しシリアスなものや絵本なども描いてみたいと思っています。子どもを産んでから、これからは子どもが主役の人生になると思っていたので…今回のような機会をいただけて本当にうれしかったです。またどこかで目に触れることがありましたら、読んでもらえるとうれしいです」

取材・文=レタスユキ

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