皿洗いでアイデアを出す vol.2-2「考えごとで家事を楽しむ」 山崎ナオコーラのエッセイ

#くらし   

雑誌『レタスクラブ』で連載中の山崎ナオコーラさんのエッセイ「考えごとで家事を楽しむ」をレタスクラブニュースでも特別公開!

家事に仕事に子育てに大忙しの毎日。実体験に基づいた言葉で語られるからこその共感や、生活を楽しむためのヒントが隠されています。

vol.2「皿洗いでアイデアを出す」を4回に分けてお届け。今回は第2回目をお送りします。

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 昔、人間は魚だった。しばらくすると手足が生えて、陸に上がり、今ではほとんどの時間を濡れずに過ごしているわけだが、ずぶ濡れだった頃の記憶がまだ消えていないのではないか。

 今でも私たちはひもすがらお茶を飲み、排泄し、体の中の水を入れ替え続けている。常に新しい水分を求めている。

 私は皿洗いのあとや、水まわりの掃除のあとに、やけに喉が渇いて水をガブ飲みしてしまう。きっと、これも私だけの現象ではないだろう。たぶん、脳に「古い水を流し去って、新しい水を取り入れ続けろ」というシステムが搭載されている。

 皿洗いの目的は洗浄だが、行為として手のシャワーだ。手の滝行だ。古い水が排水口に流れ落ちるところを見送り、新しい水が蛇口から出るところを眺める。新鮮な水に指先を当てていると、太古の記憶が蘇って、頭が活性化するんじゃないかなあ、と私は予想した。

(続く)

文=山崎ナオコーラ イラスト=ちえちひろ

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Information

■著者:山崎ナオコーラ
1978年福岡県生まれ。埼玉県育ち。2004年『人のセックスを笑うな』で作家デビュー。エッセイ集に『指先からソーダ』『かわいい夫』『母ではなくて、親になる』などがある。目標は「誰にでもわかる言葉で、誰にも書けない文章を書きたい」。初めての絵本『かわいいおとうさん』(絵ささめやゆき、こぐま社)も刊行。
山崎ナオコーラさんのTwitter

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