ローリングストック vol.7-4「考えごとで家事を楽しむ」 山崎ナオコーラのエッセイ

#くらし   
山崎ナオコーラさんのエッセイを連載中! 今回はvol.7-4をお届けします


雑誌『レタスクラブ』で連載中の山崎ナオコーラさんのエッセイ「考えごとで家事を楽しむ」をレタスクラブニュースでも特別公開!

家事に仕事に子育てに大忙しの毎日。実体験に基づいた言葉で語られるからこその共感や、生活を楽しむためのヒントが隠されています。

vol.7「ローリングストック」を4回に分けてお届け。今回は第4回目をお送りします。

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 私の父親はがんで死んだのだが、死ぬ間際まで食欲が凄まじかった。いや、最期の方は、もう喉を食べ物が通らなくなって、実際にはほとんど食べられなくなっていたのだが、見舞いに行くと「お父さんが食べたいのは、寿司、カツ丼、天ぷらだ」などと食べ物の話を何度もしつこく喋るので、「食べたい気持ちが生きたい気持ちなのだなあ」と私はしみじみ感じ入った。小康状態の時期に許可がおりたので、海苔巻きなんかをちょっと差し入れすると、ものすごく喜んでいた。

「あれが食べたい」「これが食べたい」と考えながら死ぬのも悪くないなあ、と私は思う。そして、極限状態で素パスタはどんな味なのかなあ、なんてことも思う。台所にある余分な米や乾麺や水は、極限状態や死を内包しているように見えて、ちょっといい。災害の想像をくるくると回していきたい。

(続く)

文=山崎ナオコーラ イラスト=ちえちひろ

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Information

■著者:山崎ナオコーラ
1978年福岡県生まれ。埼玉県育ち。2004年『人のセックスを笑うな』で作家デビュー。エッセイ『指先からソーダ』『かわいい夫』『母ではなくて、親になる』、小説『美しい距離』、絵本『かわいいおとうさん』(絵ささめやゆき)などの著作がある。目標は「誰にでもわかる言葉で、誰にも書けない文章を書きたい」。
山崎ナオコーラさんのTwitter

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