文章だけのレシピ vol.20「考えごとで家事を楽しむ」 山崎ナオコーラのエッセイ
そういう考えの私にとって、レシピ本というのは、実用書というだけでなく、軽い読書としても楽しめる恰好の本なのだ。
いや、別に、何グラムとか、 何分とか、書いてあってもいいのだ。形式というか、約束事に則った定型のレシピだって、読むのは面白い。でも、なんとなくプレッシャーを感じるなあ、というのは思っていた。「この通りに作らなければならな
いのだろう。でも、私はここに書いてある通りの買い物をして、この数字をきちんと計りながら調理するということを、面倒だと感じてしまう」「私みたいに、軽い読み物として楽しんで、『これを覚えておいて、これっぽいものを、いつか適当に作ろう』と考えるのは邪道ではないのか」と、後ろめたさを覚えていた。
でも、有元さんの本を読んでいたら、レシピに対する自分の態度が許されたように感じられた。
料理家さんと同じものが作れなくったっていい、ヒントとしてテキストを楽しんで、普段の食事作りに適当に活用するだけでもいいんだ、と思うことができた。
とはいえ、もちろん、いわゆる「レシピ」も併用していきたい。
お客さんを招くときや、ここぞというイベントがあって失敗したくない日、あるいは、「普通の日だけれど、今日は本当においしいものを食べたいんだ」っていうときは、やっぱり、何グラムとか、何分とか、きちんと重さや時間が書いてある、料理初心者でも同じものが作れそうな、わかりやすい文章のレシピの方を読みたい。
ただ、「レシピって、もっと自由に、自分勝手に楽しんでもいいものなんだな」と扉が開いた気分になったのだ。
文=山崎ナオコーラ イラスト=ちえちひろ
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Information
■著者:山崎ナオコーラ
3歳児の親。作家。筆名はコーラが好きだから。書店員の夫と、3人家族で、東京の田舎のほうで細々と暮らす。家事は苦手。でも、せっかくだから、家事をしながらついでに考えごとをして、「仕事と同じくらいプラスになっている」と思いたい。
山崎ナオコーラさんのTwitter
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※『レタスクラブ』で好評連載中! 最新号では最新話を読むことができます。
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3歳児の親。作家。筆名はコーラが好きだから。書店員の夫と、3人家族で、東京の田舎のほうで細々と暮らす。家事は苦手。でも、せっかくだから、家事をしながらついでに考えごとをして、「仕事と同じくらいプラスになっている」と思いたい。
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