宿題よりも好きなこと優先。計画的に勉強を進めさせるには?【小川大介先生の子育てよろず相談室】

#育児・子育て   

2021年1月発売の書籍『自分で学べる子の親がやっている「見守る」子育て 』の著者、小川大介先生が、悩める親たちにアドバイス。「うちの子のこんなところが心配」「私の接し方、コレでいいの?」など、子育てに関するありとあらゆる悩みにお答えします。連載第83回目のお悩みはこちら。

【お悩み】

小6の息子についての相談です。中学受験をする予定で塾に通っているのですが、宿題を次の授業までに終わらせることができず、最後には解説を写したりして帳尻を合わせようとします。宿題をやらずに塾に行くのはまずいとは思うようですが、終わってもいないのにテレビや本を見ようとしたり、ダラダラと過ごしていたりと、間に合うようにやろうという姿勢もみられません。

塾に通い始めた3年の頃は、まだ塾が週1だったこともあり、宿題はなんとかやれていました。でも、その頃も毎日少しずつやるなど、予定を立てて計画的に進めることはできておらず、基本的に自分のやりたいことが最優先でした。本人が実行しやすいように、毎日寝る前に一緒にその日の振り返りをして、翌日の予定を立てているのですが、本人にはなかなか入って行きません。ずっと変化がみられていないのはわかっているものの、どう関わりを変えていいのかわからず今に至っています。最近は反抗期も重なり、予定を確認しても「できたらやるよ」くらいの感じで聞き流されてしまいます。

かと言って、転塾や志望校の変更、受験をやめたりなどは嫌だと言って癇癪を起こします。本人がやる気にならなければ意味がないと思うのですが、そばで見ているとこちらもイライラしてしまい、つい口うるさくなってしまいます。どのように声かけをしていったら良いのか、毎日悩んでいます。(Sさん・42歳)

【小川先生の回答】

癇癪を起こすのは不安で困っている証拠

お子さんがダラダラしたり、口答えしたり、テレビに気持ちがいったりなどの原因は、全て一緒。どうやって勉強すればいいかわからないからです。どうやっていいかわからないものは誰もしないし、やったところでうまくいく気もしないもの。だから勉強しないのです。勉強嫌いなのではなく、「勉強の仕方がわからないから近づきようがない」というのが正しい理解になります。

受験をやめるのは嫌だと癇癪を起こすのも、受験をがんばりたいけど、そのがんばり方がわからないから。人が癇癪を起こす時というのは、怒ったり憎んだりしている時ではなく、不安な時です。自分の中で抱え込んだ不安を持て余して外にぶつける行為が癇癪なのです。おそらくお子さんは、がんばりたいけどがんばりようがなくて、モヤモヤしている状態なのだと思います。

勉強の取り組み方の知識が増えれば、その分成果も上がる

つまり、問題の所在はどこにあるかというと、勉強の仕方がそもそもわかっていないという点です。中学受験の有無に関わらず、勉強の仕方を学び直して、取り組み方を変えていくということが絶対に必要です。なぜなら勉強の仕方がわからなければ中学受験はうまくいかないし、受験しないにしても勉強の仕方がわからなければ中学で勉強についていけないからです。解決すべき課題はそこにあるということを理解しましょう。

そしてまず最初にすべきことは、子どもに謝ること。「勉強にはやり方があり、そのやり方を知っていけば、やった分だけ成果が上がるのに、ママも塾の先生もあなたに勉強の仕方を教えてあげずに今まできた。わからないことをやらされてしんどかったよね。ごめんね」と、大人たちを代表して謝りましょう。これは、今うまくいっていないのは、本人の能力や態度の問題ではなく、技術と知識の問題であり、今から取り入れればまた伸びるんだという安心感を本人に渡すためです。

習ったことは覚え、わからないことはそのままにしない

そして本題の勉強の仕方についてですが、まずは「習ったことは覚えるもの」ということを学ぶことが第一歩。先週習ったことを今週覚えているか確認するようにしましょう。その中で、覚えたのに忘れたり、毎週の確認の時はできたのに、月のまとまったテストになると間違えるという体験もすると思います。そこで「一度できるようになったはずのことでも、時間があくと忘れてわからなくなるものだ」ということを知れば、「できるはずのことをテストで確実にとれるようにするには、もう一度思い出す時間を計画の中に入れたほうがいい」と、勉強の仕方をひとつ学ぶことができます。できれば3~4年の段階で身につけておきたかった学習技術のひとつです。

また、解けない問題が出てきた時は授業ノートに戻り、それでもわからなければ、先生に質問すること。その際、「この問題について、この点をこういう言葉で聞いておいで」と質問の仕方のシナリオを渡してあげることも大切です。なぜなら子どもにとっては初めての体験のため、どうすれば答えをもらえるかを教えてあげる必要があるからです。勉強がうまくいっている子は「質問ができた」という成功体験を、4~5年の間に持てていることが多いのです。

このように勉強には、授業を受ける、授業の内容を復習する、復習した内容をふまえて宿題で問題トレーニングする、わからなかった問題については調べたり、元に戻ったりして、時に壁にぶつかりながらもできる幅を広げていくというサイクルがあります。そしてその学習がどのくらい身についているのかを確認するのがテストです。テストでうまくいかなかったところは、勉強の仕方のどこかに問題があったと考えられるため、次はどうしようかと親子で話し合う必要があります。そういったサイクルを繰り返していくことが受験学習であり、中学受験はそれを親子でやるものです。中学以降は子どもが自分でやることになりますが、勉強の仕組み自体は一緒。そのため受験の有無に関わらず、この勉強の仕方は身につけておく必要があるのです。

子ども基準で「できそう」とイメージが湧くメニューを作成する

そして具体的に何をどう勉強していくかですが、これまで学習の中身についてあまり関われていないご家庭の場合、そのメニューを考えるのは正直難しいと思います。ですからそこは塾に力を貸してもらったほうがいいでしょう。お子さんも一緒に塾の先生との三者面談を申し込み、今後の勉強の進め方、メニューを教えてもらうのです。この時のお母さんの役割としては、先生が教えようとしてくれていることを本人が吸収できるように手伝ってあげること。先生の説明を聞いている本人の表情を確認し、わかっていなさそうだったら本人がわかるようにかみくだいて伝えてあげることです。くれぐれも「先生が言ってくれた通りにやりなさい」と押し付ける役割にはならないよう気をつけてください。子どもの学習を手伝うということは、あくまでも子ども基準であることが大前提。本人が「これならできそう」とイメージが湧くようにすることが肝心です。

予定を立てる際も同様です。今まで予定作りはしていたけど、実行できなかったということですが、その予定がそもそも子ども基準ではなかったのだと思います。予定というのは自分が動ける計画作りのことなのに、本人は自分の動きを全く想定していなかったように思えます。「今日の宿題はこれとこれ」というタスクは確認していたけれども、本人がそれをやるのにどのくらいかかりそうかという視点がなかったため、実行できなかったのです。この宿題の量ならどのくらい時間がかかるか、過去の記録をもとに一緒に確認することが、予定作りには欠かせません。そしてもし宿題量がキャパオーバーであれば、何を削るか考えます。そうやって本人が「できそう」と思える予定を立て、できた事実を作っていくことが自信にも繋がります。

できた事実を積み重ねた結果、コツがわかって勉強が面白くなってきたり、やった分だけ身につくことが増えてきたら、そこで受験の話をすればいいのではないでしょうか。どこを受けるかなんてあくまでも結果論。今から取り組む勉強の仕方は、将来社会で生きていくうえで絶対に必要なものです。受験まで時間がないと焦る気持ちもわかりますが、一番の目標は本人が自分で取り組めるようになること。そう腹をくくって、少なくとも2か月は学習した事実を積み上げていく手伝いをしてあげてください。

回答者Profile

小川大介先生
小川大介

教育家。中学受験情報局『かしこい塾の使い方』主任相談員。

京都大学法学部卒業後、コーチング主体の中学受験専門プロ個別塾を創設。子どもそれぞれの持ち味を瞬時に見抜き、本人の強みを生かして短期間の成績向上を実現する独自ノウハウを確立する。個別面談の実施数は6000回を数え、受験学習はもとより、幼児低学年からの能力育成や親子関係の築き方指導に定評がある。各メディアでも活躍。最新刊は『子どもが笑顔で動き出す 本当に伝わる言葉がけ』(すばる舎)。YouTubeチャンネル小川大介の「見守る子育て研究所」で情報発信中。

文=酒詰明子

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