なかなか勉強を始めようとしない息子にイライラ。やる気にさせる声かけとは?【小川大介先生の子育てよろず相談室】

#育児・子育て   

2021年1月発売の書籍『自分で学べる子の親がやっている「見守る」子育て 』の著者、小川大介先生が、悩める親たちにアドバイス。「うちの子のこんなところが心配」「私の接し方、コレでいいの?」など、子育てに関するありとあらゆる悩みにお答えします。連載第87回目のお悩みはこちら。

【お悩み】

小2の息子が、なかなか勉強に取りかからないのが悩みです。家で勉強をする時、集中し始めるのにいつも10分くらい時間がかかります。勉強場所はダイニングテーブルで、私もそこで仕事をしているのですが、息子をふと見ると、勉強以外のことをしていることが多々。水を飲みに行ったり、落書きをしたり、歌を歌ったり、家族に話しかけてきたり、消しゴムのカスを丸め始めたりなど、関係ないことをしていて、なかなか勉強を始めようとしません。その都度注意するのも本人が嫌がるかと思い、様子を見ているのですが、いつもそんな感じなのでついイライラしてしまいます。

家での勉強メニューとしては、学校の宿題(音読、漢字、算数プリント)と通信教育教材くらい。総勉強時間としてもせいぜい20~30分程度です。学校の宿題に関しては、少し促せばやり始めることも多いのですが、特に問題なのが通信教育教材で、気づくと落書きしています。ちゃんと取り組んでもいないのに、はなから「問題の意味がわからない」と言って始めようとしません。また、長文を「自分で読むかおうちの人に読んでもらいましょう」と書いてあると、自分では絶対に読まずに「読んで」と言ってくるのも、やる気のなさを感じてしまいます。

お絵かきや折り紙など、好きなことは黙々と長時間集中してやるので、勉強も「おもしろい!」と思ってくれるようになれば集中するのではないかと思っています。そのためにはどんな工夫をすればいいのか、「勉強は嫌なもの」と思わせないように、どう声かけをしていけばいいかアドバイスをいただきたいです。ちなみに通信教育教材は、できたらカレンダーにシールを貼る仕組みで、最初の頃は楽しく貼っていました。でも次第に貼る行為に魅力を感じなくなったのか、今は「ママ、シール貼っといて」という感じで、シールではテンションが上がらないようです。(Sさん・36歳)

【小川先生の回答】

「手を動かす」=「始める」とは限らない

そもそも、「やろうとしない」とか「なかなか手をつけない」という言葉で表すその捉え方が、少々雑な気がします。始める時間から10分かかるということですが、その始める時間というのが、親が思っているイメージと子どもが思っているイメージとで、既にズレが生じているのではないでしょうか?

例えば、親は鉛筆を動かし始める時間を指しているのかもしれないけど、本人は「やらなきゃ」って思い始める時間を指しているのかもしれませんよね。そして、「やらなきゃ」って思った後にも、当然のことながら「難しいのかな」「またわからなくなったら嫌だな」という思いがよぎったり、でも「やらなきゃ」と思い直したりなど、行きつ戻りつする時間があるはずです。かつ、問題の意味がわからないということが、これまでの経験であるとすれば、子どもの本音としては近づきたくないはず。それをわずか10分で乗り越えて手をつけられているわけだから、逆にたいしたものだと思います。どうせわからないと思いながらも始められるって、相当褒めてあげるべきポイントです。

勉強の取り組み方について親子で共通認識を持っておく

本人は、勉強を嫌なものだとは思っていないと思います。なぜならちゃんとやっていますから。ただ、「どうやったらうまくいくかな」「今日は大丈夫かな」など、少し見通しが立たない時の取りかかりに、ちょっと時間を要しているだけです。

ですからまずは、勉強の取り組み方について親子で詳しく打合せすることから始めましょう。今までは、例えば長文の読み方ひとつとっても、どう読めばいいのか親子で考えがかみ合っていませんでしたよね。そもそも「自分で読むか家族の人に読んでもらいましょう」と書いてあるのだったら、「読んで」と頼んでくるのは全然おかしくないことです。それをやる気がない態度と捉えてしまうのは間違っているし、もし本人が声に出して読むことが大切だと思うのであれば、それをきちんと伝えるべきです。

また、いきなり初見で読むのが難しそうであれば、最初は親が読み、その後に本人が読むというルールにしてもいいですよね。そのように、問題にどうやって取り組んでいけばいいのか、細かい打合せをしておくことで、本人も勉強の進め方がわかってくると思います。

子どもにとって重要なのはシールではなく、ママが貼ってくれるシール

おそらく今までは、「これやっといて!あれやっといて!はいシール!」みたいに課題を投げるだけになっていたのではないでしょうか。また、「シールをあげときゃ、やる気になるでしょ?」と思われている節も感じられます。でもお子さんにしてみれば、シールが欲しいわけではなく、ママが「できたね」ってシールを貼ってくれることが重要なのです。「シール貼っといて」と言うのも、本人なりの「やったよ」アピールであり、ママに「やったんだね」って言って欲しいのです。シールでやる気になるのではなく、ママに「よくできたね」「がんばったね」って認めてもらうことがやる気につながるということ。そこを勘違いしないようにしましょう。

声かけの9割は観察

そして、「どんな声かけをすればいいか」ということですが、子どもがやる気になるような魔法の言葉があるわけではないし、そもそもそんな上手い言い回しを考える必要などありません。なぜなら声かけの本質は、子どもをよく観察することにあるからです。子どもの事情を理解することさえできれば、声かけの9割は達成したのも同然。事情さえわかれば、それに応じた言葉なんて、親御さんなら自然と出てくるはずです。

例えばお子さんのように、やろうとしているのにうまくいかないのであれば、「難しそうなのかな?」でいいわけです。そして、「じゃあどんなのが出てるのか一緒に見ようか」と寄り添ってあげればいいだけ。できるか不安そうにしていたら、「大丈夫だよ、できるよ」と自信を渡してあげたり、難しそうだけどがんばろうとしていたら褒めてあげたり、子どもの事情をつかむことによって、かける声も定まってきます。上手い言い回しなんて考えなくても、結果上手い言葉になるものです。そうやって、子どもが学習に取り組む際に何が起きているのかを細かく理解していくと、自然と正しい声かけもできるようになりますよ。

回答者Profile

小川大介先生
小川大介

教育家。中学受験情報局『かしこい塾の使い方』主任相談員。

京都大学法学部卒業後、コーチング主体の中学受験専門プロ個別塾を創設。子どもそれぞれの持ち味を瞬時に見抜き、本人の強みを生かして短期間の成績向上を実現する独自ノウハウを確立する。個別面談の実施数は6000回を数え、受験学習はもとより、幼児低学年からの能力育成や親子関係の築き方指導に定評がある。各メディアでも活躍。最新刊は『子どもが笑顔で動き出す 本当に伝わる言葉がけ』(すばる舎)。YouTubeチャンネル小川大介の「見守る子育て研究所」で情報発信中。

文=酒詰明子

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