自己肯定感を上げる「アメリカ式」子育てとは!? 自立心、自尊心、生き抜く力を強化するマジックフレーズを紹介!

#育児・子育て   

登録者数13万人を超える人気YouTubeチャンネル「Braisians」を運営するシノブ・フィリップスさんは、現在、3人のお子さんをアメリカで育てているワーキングママ。

日本育ちで典型的な日本人マインドの持ち主だと自覚するシノブさんは、長女が2歳になった頃にアメリカに移住し、以来、多くの衝撃を受けながら現地で子育てを行ってきました。

アメリカ人から感じる自己肯定感の高さがどのように培われていくのか。

アメリカでは当たり前のように行われている親から子への声がけが、日本育ちのシノブさんにとっては、まるで「マジックフレーズ」のように新鮮で斬新だったと言います。

アメリカでの子育てから学んだ、自立心、自尊心、生き抜く力を強化するマジックフレーズとマインドについて、教えてもらいました。

言葉は無料! 褒め言葉は言いすぎても損はなし

――日本とアメリカの子育ての違いはたくさんあると思いますが、特にびっくりした違いはありますか?

シノブさん「アメリカ人はとにかく、よく褒めます。大人同士でもそうですし、我が子ならなおさら褒めまくります。『You are beautiful(すっごくキレイ!)』『You are my hero(あなたは私のヒーローよ!)』『That’s my boy/girl(さすがは私の息子/娘!)』という感じで、英語の表現はとてもストレート。
アメリカでは親はもちろん、学校の先生、ひいては街でたまたますれ違った人でも、よいと思ったことはダイナミックに褒めます。これだけ褒め言葉が多い環境にいれば、自己肯定感が高まるというのは頷けます。考えたら、言葉は無料です。無料なものを出し惜しみしてもしかたない! と女優になったつもりで、しっかりと褒めるよう心がけるようになりました」

アイラブユー


――よく使われるフレーズは?

シノブさん「 『I’m proud of you(あなたが誇らしい)』というフレーズです。誇りに思う、というと大げさに感じられるかもしれませんが、シンプルに、『あなたのその行動は、とても素晴らしい』と、行動の過程を深く承認する言葉です。このフレーズに最初に感動したのは、次女のアシュリーが小学校1年生のときでした。
学校でスペリングテスト(綴りテスト)が毎週あるのですが、ある日、娘は自分が異なる範囲の単語を勉強してきたことに気づき、かなりうろたえてしまったそうなんです。彼女の様子に気づいた先生に事情を説明したところ、先生はアシュリーにこう言ったそうです――『自分が勉強してきた単語を10個書きなさい。あなたが勉強したことは、決して無駄なことではないわ。I’m proud of you!』。
出題範囲を間違えたのに、努力したことじたいを認めてもらい、しかも褒められた。人生、努力したことがなんでも結果に結びつくわけではありませんが、根底にこの経験があれば、今後も努力することを諦めないのではと思いました。子どもの成長は、子どもの努力の賜物。努力をしっかり承認し、ともに喜ぶフレーズだと思います」

――失敗を感じているときの励ましが上手ですね。

シノブさん「アメリカは褒め言葉大国! もう一つ印象に残っているのは、『I’m your biggest fan.(私があなたの一番のファンよ!)』です。
アシュリーはサッカーをやっているのですが、ある大事な試合で、最後の最後にゴールキーパーの子がミスをしてしまい、アシュリーたちが負けてしまったのです。
ゴールキーパーの子はかなり落ち込んでいたのですが、その子のお母さんは、戻ってきた彼女をとっても明るく迎えて『Don’t forget I’m your biggest fan.(忘れないで、私があなたの一番のファンよ!)』と言って、笑顔で抱きしめたんです。私ならそんな言葉はとても思いつかないので、びっくりしました。
そのお母さんが、自分の娘が一番だと心の底から信じているのがよく伝わりましたが、アメリカ人の親たちを見ていると、子どもの失敗や劣っている部分がまるで目に入ってないように思うほど。失敗をネガティブに捉えず、むしろ『よく頑張った! そんなわが子が誇らしい!』とポジティブな感情しか持っていません。それが言葉になってダイレクトに子どもに降り注いでいくから、子どもの中で、なにがあっても親は味方だと、揺るがぬ自信が生まれてくるのだろうと関心したできごとです」

助けるよりも信じてあげることで困難を乗り越える力を与える

――英語ならではのフレーズにも思いますが、日本ではどう応用したらいいでしょうか?

シノブさん「アメリカ人が考える『褒めることの意義』を理解いただければ、ご自身のフィーリングに合った言葉でいいと思います。例えば、『I believe in you(あなた(の力)を信じてる)』というフレーズもよく使うのですが、日本語で「母さんは○○ちゃんのこと、信じてるよ」と言うと、ちょっと重くなってしまいます。
ただ、これも『できると信じる』という意味ではなくて、結果に関係なく、『チャレンジする力、困難を乗り越える力があることを信じている』というニュアンスです。結果はなんであれ、挑戦したことじたいや、その過程をしっかり褒めてあげれば、同じ効果があると思います」

――このフレーズが印象に残ったエピソードはありますか?

シノブさん「あります。息子のショーンが3歳のとき、仕事があるので保育園に預けるのですが、毎朝 『行きたくない!』『ママと離れたくない!』と大号泣で困っていました。どうしたものかと悩んでいたところ、ある日、60代後半のベテランの先生が、まっすぐ息子の目を見て、『I know you are strong. I believe in you.(君は強い子だって知ってるよ。私は君を信じているからね)』と言ったんです。
そんな言葉、3歳の子に伝わるのかな!? と思っていたら、なんと、ショーンが泣き止んだんです。さらに帰りの時間に、先生は、『You did an awesome job helping your mommy doing her work!(君は、お母さんが働きに行くのを助けるという、素晴らしい仕事をしたんだよ!)』とも言ってくれた。
『できるでしょ!?』『大丈夫だから!』という言い聞かせとはまったくタイプの違う物言いでしたが、本人は言われるうちに自信をつけたのか、喜んで保育園に通うようになりました。幼くても、他人から深く信頼されると、自分にはその力があると、自分自身を信じることができるのですね」

「why?」「how?」と問いかけることで、自らの考えや感じたことを言葉にして伝える能力を伸ばす


――他にも、これはアメリカならでは、と感じた子育ての習慣は?

シノブさん「アメリカ人は、日本人と比較して自分の意見をハッキリ言いますし、伝えるのが上手だと思うのですが、これも子どもの頃からの習慣が大きいと感じました。
学校では<Show and tell(見せて、話す)>というプレゼン力を伸ばす『自分語り』の課題が頻繁に行われますし、家庭でも子どもに対して、『What do you think?(あなたはどう思う?)』『Why did you think?(どうして、そう思ったの?)』と、常に投げかけます。
日本人は察するスキルが高いため、あえて聞かないようなことでもアメリカでは『Why?』と理由を聞く。聞かれたほうも、『なんとなく』といった答えで終わらせることはせず、必ず『私は、こうだから、こう思った』と言葉にして伝えます。『今日、学校でこんなことがあった』と報告されたら、『それについて、どう思った?』と聞きます。映画なんかを見て、『おもしろかった』という感想にしても、『どんなところが?』と説明を促します」

親子の対話


――考える力と言語化する力を、日常生活の中で養っているんですね。

シノブさん「悩みが生じたときや、ルールを破ったりしたときもそうです。親がアドバイスしたり、助けたりするのではなく、まず、自分で考えるよう促します。
『What do you want to do?(あなたはどうしたいの?)』『Why did you do that?(どうして、そうしたの?)』と問いかけて、自分で考えて、答えを出す。一度の質問で答えが出ないときは、親が何度も質問します。
以前、息子のショーンが所属していたバスケットのクラブチームで、なかなか試合に出してもらえず悩んでいたときも、この質問ラリーを経て、自分で答えを出してもらいました。彼にどうしたいのかをまず聞くと、『試合に出たい』と。
『試合に出るためにはどうしたらいいと思う?』『たくさん練習する』『練習しても出られなかったら?』『がんばって練習しても、それでも試合に出られなかったら、もう少しレベルを落としたクラブに変える』『どのくらい頑張る?』『じゃあ、3カ月!』と結論を出し、3カ月間がんばった結果、また試合に出してもらえるようになり、そのクラブに残ることにしました。
子どもたちはこれからの人生で何度も、迷い、悩む瞬間を経験していきます。そのときに、自分で考えて、決断して、行動できるようになってほしい。失敗したら、またそこで考えて、結論を出して、進んでいく力を身に着けてもらいたい。その訓練になる問いかけですので、ぜひ、みなさんも実践してみてください」

文=根岸聖子、イラスト=イマイヤスフミ(vision track)

【著者プロフィール】
シノブ・フィリップス
1975年生まれ。主に東京で育ち、2002年に渡米。現在はアメリカ・テキサス州在住の働くママ。長女・エリカ、次女・アシュリー、長男・ショーンの3人の子どもたちとともに、YouTubeチャンネル「Braisians」でリアルなアメリカ生活の模様を配信。Podcastでも「シノブとナルミの毒舌アメリカンライフ」を毎週更新。海外恋愛・海外子育て・海外キャリアに関するオンラインコミュニティも運営している。

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