せつなかわいくて癖になる!『貴重な棒を持つネコ』作者の室木おすしさんに聞いた棒の謎とは

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X(旧Twitter)で大人気の4コマ漫画『貴重な棒を持つネコ』をご存知ですか? 
ある日、「貴重な棒だから大事に持っていてね」とネコに棒を手渡したまま飼い主が消えてしまいます。その言いつけを守り、2年間棒を持ち続けて“虚無顔”になってしまったのが「棒ネコ」のフーちゃんです。

「棒ネコ」のフーちゃん

貴重な棒を持ったまま飼い主を探す旅に出る棒ネコが、切ないながらもかわいいと話題を呼び、2021年4月には書籍化も実現。「棒ネコ」のキャラクターがカプセルトイやクレーンゲームにも登場するなど、注目を集めています。
今回は、作者の室木おすしさんにその誕生秘話を聞きました。

なぜネコが棒を持って旅に出る?その意外な理由は…


貴重な棒だから大事に持っていてね


――『貴重な棒を持つネコ』の4コマを描き始めたきっかけについて教えてください。

室木おすしさん:実は貴重な棒を持つネコというキャラクターはだいぶ昔から考えてはいました。ただ、キャラクターとして認知されるためにはやはり漫画を描くのが一番かなと思ったんです。それで、描いたものをTwitterにて投稿することにしました。

――はじめにキャラクターありきだったのですね! ネコのフーちゃんが貴重な棒を持って旅をするというシュールな設定は、どういった発想から生まれたのでしょうか?

室木おすしさん:元々考えていたキャラクターは「ただただ飼い主に言われるがまま貴重(かもしれない)な棒を持ち続けている」という設定でした。それが健気でバカバカしくてかわいいなと思っていたのですが、漫画にする際にいろいろ肉付けしていきました。なので本当はストーリーというより棒を持ったネコの日常をギャグマンガとしてやっていこうと思っていたんです。
しかしギャグとして描いた初回が自分の想像以上にバズってしまい、また可哀想!という意見も多数みられたんですよね。これはストーリー部分で納得してもらわないとダメだなと思い、飼い主を探す旅の結末も意識するようになりました。


くだらないけどくだらなくない「棒」の存在感


 貴重な棒とは…


――貴重な棒とは何かのメタファーだったりするのでしょうか? 謎の棒が気になって気になって…

室木おすしさん:メタファーというほどのものはないですが、くだらないけどくだらなくない物として、「棒」というのが一番ちょうどいい気がしたから持たせました。利用価値が高いのに、なんだか間抜けな存在。それが棒だと思っています。

――なるほど。野暮な質問かと思いましたがれっきとした理由があったのですね! フーちゃんの他にもユニークな登場人物たちがたくさん出てくるのが楽しかったです。個性的なキャラクターはどのようにして作り上げているのでしょうか。

室木おすしさん:とにかく4コマのオチをつけたかったり面白くしようとすると、勝手に個性的な登場人物になる気がしますが、考え方としては、まず突拍子もないことをいきなり言わせて、それの理由付けを面白くなるようにすると、おのずと個性的なキャラクターが出来る気がします。
あとは誰もが持っている感情やあるあるを過剰にやらせるというのがひとつの作り方かなと思います。
重要なのはリアクションの仕方だと思っていて、そこに個性が一番出るので“リアクションを間違えないように”は心掛けています。


室木おすしさんの推しエピソード2選


――室木さんのお気に入りのエピソードはありますか?

室木おすしさん:たくさんあるのですが、覚えているのが双子のマラソン選手の間に棒ネコがいてしまい、棒ネコ本人も誰も求めていないのにビデオ判定で1位になっているという漫画です。
描いた時になんて面白いんだ!と一人で笑いをこらえきれなかったのですが、UPしたら全然人気がなくて、その後にもう一度見たら、「うん普通くらいだな」と思い直し、自分の感覚ってあてになんないなもんだなぁと印象に残っています。

双子のマラソン選手の間に棒ネコが!


室木おすしさん:あとは、バイクの後ろに乗った棒ネコにしっかりつかまってろよ!と声をかけると、棒にしっかりつかまってしまい発進と共に後ろに落ちるという作品です。
まだTwitterに棒ネコアカウントを作る前の準備期間に描いたのですが、この漫画を描いて、これなら描けるかも!大丈夫かも!と手ごたえを感じたので、印象に残っていますし今でも気に入っています。

しっかりつかまってろよ!


日常にちょっとした笑いを生み出したい


――棒ネコを描いて、読者からの反響はいかがでしたか? 

室木おすしさん:いろいろなところで「棒ネコ読んでます!」と声をかけてもらえるようになりました。本当にありがたいです。また最近展示で絵を描いたのですが、棒ネコの絵を買いたいとメールしてくださったり、遠くから来てくださるのが嬉しくて、描いてよかったです。

ご主人様を探してるのかい?


――最後に『貴重な棒を持つネコ』の読者に向けてメッセージをお願いします。

室木おすしさん:まずは読んでくださってありがとうございます。日常にちょっとした笑いが生まれてくれたら嬉しいなと思って描いています。なので読ん際は、ちょっとした笑いを生んでくださると助かります。そして棒ネコや棒ネコの世界が誰かの心の許せる存在になればいいなと思っています。
熱くなり過ぎず冷めすぎずじわりじわりと長く更新していく所存ですので、末永いお付き合いをお願いします!!

***

読めば読むほどその世界観にすっぽりハマって目が離せなくなってしまうシュールなストーリー。『貴重な棒を持つネコ』は現在もX(旧Twitter)にて連載中なので、ぜひ読んでみてくださいね!

取材・文=宇都宮薫

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