「読んでくれた人が元気になったりしたらいい」貴重な棒を持つネコの作者・室木おすしさんインタビュー

#趣味   
あんた変なネコね

X(旧Twitter)で大人気の4コマ漫画「貴重な棒を持つネコ」をご存知ですか? ある日、「貴重な棒だから大事に持っていてね」とネコに棒を手渡したまま飼い主が消えてしまいます。その言いつけを守り、2年間棒を持ち続けて“虚無顔”になってしまったのが「棒ネコ」のフーちゃんです。

「棒ネコ」のフーちゃん

貴重な棒を持ったまま飼い主を探す旅に出る棒ネコが、切ないながらもかわいいと話題を呼び、2021年4月には書籍化も実現。「棒ネコ」のキャラクターがカプセルトイやクレーンゲームにも登場するなど注目を集めています。
今回は、作者の室木おすしさんに作品づくりで心掛けていることについて聞きました。

大学卒業後、絵本作家になろうと思っていたことも


あたい気に入ったよ


――室木おすしさんがイラストレーターになったきっかけを教えてください。

室木おすしさん:大学4年の時に、とにかく会社勤めをしたくないと(理由はいろいろあるのですが)いろいろと模索していました。それで、話やネタを考えるのは得意だったので、絵も描けたら強いのではないか?と大学卒業後にイラストのスクールに通い始めたんです。絵本作家になろうと思っていたのですが、スクールにイラストで仕事をしている方々がいて、こんな仕事もあるのか!と感化され自分もやることにしました。

――「室木おすし」のペンネームはインパクト抜群ですね! その由来を教えていただけますか?

室木おすしさん:イラストレーターを始めた当時、大学時代からやっていた配達専門の寿司屋のバイトを続けていたのですが、ペンネームを付ける時、迷いに迷った挙句、とりあえず個性が寿司くらいしかなかったのでそこからいただきました。


漫画を描くことで自分自身の不安や悩みを救えたら…


ぼくもあの棒ほしい


――漫画を描くようになったのはいつ頃からですか?

室木おすしさん:イラストレーターとして仕事をし始めて最初に雑誌の記事の挿絵的な4コマ漫画の仕事をもらいました。描いたことはなかったけど「描けます!」と言ってしまったので必死になって描きました。
それからは、明らかにイラストの仕事より漫画的な仕事の方が多かったので、需要があるのだと思って完全に食い扶持として考えていました。

――初めの仕事が4コマ漫画だったのですね! 漫画を描く面白さってどんなところにあると思われますか?

室木おすしさん:仕事をしながら徐々に学んでいき今になりますが、まだ漫画を描く面白さを完全にとらえるほどのレベルには達していないと思っています。
今のところ感じるのは、話を考えて、それを一番面白く伝えられるコマ割りを考えて、絵を落とし込んでいき、その絵が、絵だけでも惚れ惚れするようなものになった時、「あー気持ちいいー」と感動します。そこが面白いところかなーと感じています。そういう意味では絵の完成した時と似ている気がします。あとは読んでくださった方の「面白かった」等の感想は、やはり嬉しいのでそこにはやりがいを感じます。

――では逆に、漫画の難しさとは?

室木おすしさん:難しさに関しては常にいろいろと感じます。4コマはわりとすっとできるのですが、ちょっとしたページ数の漫画などは、まずネーム段階の時点でとても悩みます。正解がない中正解を探す苦しさからつい逃げ出して、だらだらとネットを見てしまいます。コマに入る絵の大きさだとか構図だとか台詞だとか悩めることが多すぎです。まだスムーズにそれらができるほどの体にしみ込んだものがないのだと思っています。

棒じゃなくて…


――作品づくりにおいて心がけていることはありますか?

室木おすしさん:いろいろな意味で面白くあるようにとは思っています。(笑いだけでなく感動したり、注意を向けたり)
少し前まではお金が稼げればいいと思っていたんですが、子どもが生まれてからしばらくしてからは、読んでくれた人が元気になったりしたらいいなとかそういうちょっと、「昔は嘘くさい」と思っていたようなことを考えるようになりました。それは最近思うに、ようするに自分自身の不安だったり悩める部分を救いたいんだろうなと自己分析しています。まだ全然救えていません。

売れる作品は狙って作れるものじゃないので…


棒ネコがUFOに!


ーー3人の子のお父さんでもある室木さん。休日はお子さんたちとどのように過ごしていらっしゃいますか?

室木おすしさん:最近仕事ばかりであまりちゃんと遊べていない気がしているのですが、一緒にゲームしたり自転車に乗る練習したりとか、たいしたことはしてません…。
あと一緒に寝る時に作り話をするのが、子どもたちは気に入っているようでたまにやっています。じいさんが山から転げ落ちて隣の山までいっちゃった話とかくだらない話です。

――室木さんが寝る前にする「くだらない作り話」、めちゃくちゃ聞いてみたいです(笑)。では最後に、これから発信していきたいことがあれば教えてください。

室木おすしさん:基本的には売れるようなものを描きたいという思いがありますが、いままでもそう思っていたのに全然売れていないので、そう思ってもできるものではないのだと感じはじめました。
今オモコロというサイトで描いている、「たまに取り出せる褒め」という漫画は、他人でもなんでも褒められているところは嬉しいという思いから、いろいろな人の褒められたエピソードを漫画にしています。誰かが褒められている様子って、この世界がまっとうな感じがして、捨てたもんじゃないなといった気分になる気がするので是非読んでもらいたい作品です。
それから「アルパカをのばす少女」という作品も、低更新でやっています。これはなんだかわからないけど薄ーく面白いといったところをできたらいいなと思って描いています。読んでいくうちに徐々に薄っすらと読み手の中に浸食するようなそんな漫画です。

***

掴みどころがないシュールな漫画から心がじんわり温かくなる漫画まで、幅広い作風で読者の心をがっしり捉える室木おすしさん。今後の活躍からも目が離せませんね!

取材・文=宇都宮薫

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