「お財布を忘れちゃって」「いま持ち合わせがなくて」
という友人に1,000円ほどのお金を貸したら、そのまま返してもらえなかった…というような経験はありませんか? うっかり忘れているだけかもしれないし、しつこく返してと迫るほどの額でもないし…と、言い出しづらくていつのまにかウヤムヤに…。
ただ、一度軽い気持ちでお金を貸してしまったことから、相手につけこまれ、要求が次第にエスカレートして後悔することになる場合もあります。今回はママ友にお金や身の回りのものを貸してしまって後悔した千夏さんのエピソードをご紹介します。
また、このような寸借トラブルに巻き込まれた場合の対処法を弁護士さんに伺いました。
【マンガを読む】千夏さんの実体験『寸借ママ友』のエピソードを読む
トラブルに巻き込まれた千夏さんのエピソード
実体験をもとにしたコミックエッセイ作品『寸借ママ友』の主人公・千夏さんは、保育園探しをする中で何人かのママ友と知り合います。情報交換を兼ねたママ友会で、千夏さんは持ち合わせがないという桜木さんに、桜木さんの飲食費1800円を貸したのでした。
その後、千夏さんは桜木さんと一緒にベビー用品店を訪れる機会がありました。どうしても気に入ったスタイを子どもに買ってあげたいけど持ち合わせがない、と話す桜木さんに、千夏さんは「まだ前回のお金も返してもらってないけど…」と思いつつ、「まあ1000円だし」と今回も1000円を貸すことにしました。
これをきっかけに、桜木さんはちょくちょく千夏さんにものを貸してと頼むようになりました。最初はボールペン程度のものでしたが、次第にマニュキュアや香水、果ては花瓶を貸してと頼むように…。
ついには千夏さんが大切に使っているハイブランドのバッグを貸してと頼まれます。貸したお金も返してくれないまま、次々と要求をエスカレートさせる桜木さん。ついには貸したバッグを千夏さんに黙って質入れして、「バッグは盗まれた」など平然と嘘をついてくるようになったのでした…。
桜木さんのように、少額のお金を借りたままなかなか返してくれない相手には、どう対応したら良いのでしょうか。弁護士法人プロテクトスタンスの金岡紗矢香弁護士にお話を伺いました。
お金を借りて返さないのは犯罪ですか?
──このエピソードの桜木さんは「持ち合わせがない」と言ってランチ代など1,000円ほどの額を借りては返さない、という行為を繰り返しています。「少額のお金を借りて返さない」という行為は法律上は犯罪にあたりますか?
金岡紗矢香弁護士:
はい。金額の多寡に関わらず、お金を借りて返さないのは詐欺罪に該当しうる行為です。
もっとも、お金を借りる際に、いずれは返済しようと思っていた場合には、詐欺の故意が認められないため詐欺罪は成立しません。
今回のエピソードを拝見するに、桜木さんはお金を借りて返さない常習犯ということですので、千夏さんからランチ代を借りた時点で、返済する意思はなかったものと思われます。その場合には詐欺の故意が認められるため、詐欺罪が成立します。
──詐欺罪ですか、返済するつもりがなく借りた場合は、犯罪ということになるのですね。しかし、ある程度親しい仲であれば「少額だから」とランチ代程度の金銭を借用書を取り交わさずに貸し借りすることは比較的よくあることかと思いますが、借用書がない場合に返してくれない相手から取り立てる方法は何かありますか? 泣き寝入りするしかないでしょうか?
金岡紗矢香弁護士:
借用書がなくても、たとえば「先日は1,000円貸してもらってありがとう。近いうちにお返しするね」などのメールやSNSでのやりとり、電話や会話の録音があれば、金銭の授受が行われたことの証拠になりますので、そのような証拠をもとに相手方に返済を求めることが可能です。
──なるほど、ではお金を貸し借りした後、忘れないうちにLINEやメールなどで貸した額の履歴を残しておくのが良さそうですね。では、もし知人などにある程度まとまった額を貸すような必要がでてきた場合、借用書に必要な項目を教えてください。最低限どんな項目があれば良いのでしょうか?
金岡紗矢香弁護士:
次の項目の記載が必要になります。
・借主を特定できる情報(名前、住所)
・貸主を特定できる情報(名前、住所)
・金銭授受の日付け
・借りた金額
・お金を貸し借りしましたという文言
・利息の有無
・返済方法(振込、手渡し、分割、一括)
・返済期日
・連帯保証人
・返済が滞った場合の処置
・双方の署名捺印
* * *
正式な借用書では、かなり必要な項目が多いことがわかりました。まとまった額の金を貸し借りする場合は、きちんと返済方法や返済期日を話し合って書面を作ることが必要となってきます。
もし返ってこなくても諦めがつく程度の少額のやりとりであれば、ここまでの書類を作ることはないかと思いますが、お互いに貸し借りしたことを忘れないためにも、その場で貸した額をLINEやメールなどに記載して送信しておくと良いかもしれません。
【取材協力弁護士】
金岡 紗矢香(かなおか さやか)/弁護士法人プロテクトスタンス
弁護士・行政書士。国内大手飲料メーカーの勤務を経て、弁護士資格を取得。浮気・不倫といった男女トラブルや離婚問題、セクハラ・パワハラなどの労働トラブル、相続手続きなど、さまざまな分野に精通し、女性からの法律相談に幅広く応じている。現在、2児の母親として子育てにも奮闘中(第一東京弁護士会所属)。
漫画・イラスト=crono、千夏著『寸借ママ友』より/取材・文=レタスユキ