学校の勉強についていけず、自信もやる気も失くした中3息子(後編)【小川大介先生の子育てよろず相談室】

#育児・子育て   

2021年1月15日発売の新刊『自分で学べる子の親がやっている「見守る」子育て 』の著者、小川大介先生が、悩める親たちにアドバイス。「うちの子のこんなところが心配」「私の接し方、コレでいいの?」など、子育てに関するありとあらゆる悩みにお答えします。連載第59回目のお悩みは「勉強に自信を失くした中3の息子さん」に関するお悩みの後編です。

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【前編のあらすじ】

相談者Fさんのお悩みは、進学校へ入学した息子さんが、次第に学校の勉強についていけなくなり、中3になった今、自信もやる気も失くしていること。本人も“このままではいけない”と自覚していて、がんばろうとは思っているけれど、なかなかうまくいかず、苦しんでいる様子だそう。この状況を打開する手助けをしたいFさんですが、息子さんと気持ちを通じ合わせることも難しい状況とのこと。

そんなお悩みに対し小川先生は、“クラスの中程くらいの成績に戻す”など、何をすべきかわからないような目標ではなく、“高1の夏までに英単語をここまで覚える”といった具体的な目標を設定すること。そして、そのためには“1日10個英単語を覚える”というように、達成可能な小さな目標を掲げ、本人の「できた!」を引き出すことが重要とアドバイス。また、学校で息子さんが不用意に傷つかなくて済むよう、先生との付き合い方のコツも伝授しました。

後編は、“息子さんと気持ちを通じ合わせることが難しい”というお悩みについて。さらに詳しい状況を知るため、小学校の頃まで遡り、息子さんとの関係を伺ってみたところ…。


【お悩み】

実は2歳上に、知的・身体共に障害のある兄がおり、ごはんを食べさせるのも、お風呂に入れるのも、親の時間が取られるため、弟のHは昔から一人になる時間が多かった子でした。でも、小学生の頃は、すごくお喋りで、何でも話してきてくれていました。今思うと、一人でいる時間が長いぶん、“自分から積極的に話さなきゃ”という想いが強かったのかもしれません。でも今は、“自分から話そう”という気持ちもないようで、距離を置いてしまっている感じです。

特に父親との関係がうまくいっていません。兄の方が体も不自由で手がかかるというのもありますが、基本的に性格が素直で可愛がられるタイプの兄のほうを、夫はより可愛がっているように見えます。私がそう思うくらいなので、本人はなおさら強く感じていると思います。

反抗期も重なり、ちょっと注意すると言葉も荒くなりがちな状況で、どのようにコミュニケーションをはかるべきか悩んでいます。(Fさん・46歳)

【小川先生の回答】


「助けてあげる」ではなく「手伝わせて」とアプローチ

H君に対する今までのご家庭の育て方、関わり方というのは、“できるだけ自分一人でがんばってください”というスタイル。それは、自立心や自分で決めたことを真面目にやる力が育つ一方で、甘え方を教わってこなかったということです。対して、お父さんは営業職というお仕事柄、おそらく自分が動いて面倒を見てあげるのが好きな人なのでしょう。だから、甘えて手をかけさせてくれないH君と、どう関わっていいのか、よくわからないのだと思います。

そもそも助けてもらい方を習っていないH君は、「助けて」や、「どうしたらいいかわからないから教えて」という単語を持っていません。そのため、こちらから「助けさせてもらえないかな」とアプローチしてあげる必要があります。「あなたのためにしてあげる」ではなく、「あなたが苦労しているのをそのままにしているのは、私自身が辛いから、何かさせて欲しい」という伝え方をしたほうが、H君も受け取りやすいでしょう。

がんばっていたことを認め、感謝の気持ちを伝える

直接会話するのが難しい状況であれば、手紙を書くのがおすすめです。「困った状態になっている今、うまく助けてあげられなくてごめんね」と、今のお母さんの素直な気持ちを伝えてあげてください。ひとつの手紙にたくさん書き連ねるのではなく、週に何回か定期的に渡す感じで、日常の思いを伝えるのがいいかと思います。

その中で、「今までずっと一人でがんばってきたんだよね。ありがとう」とH君に感謝の気持ちを伝えてあげてください。本人としては、ずっと当たり前に求められてきたことなので、特別に“がんばってる”という自覚は持っていないでしょう。でもお母さんに認められることで、「自分はがんばってたんだ」とわかり、相談もしやすくなると思います。

勉強がうまくいかないのは、能力ではなくやり方の問題

周りの子と同じように勉強しているつもりでも、成績が取れなかったということですが、それも一人でがんばっていたからに他なりません。そもそも勉強というのは、やり方を変えれば、結果も変えていけるものです。同じ時間でも英単語を覚えやすい方法だったり、数学も理解した後に再度問題を解くことで、テストの応用問題が取れるようになるなど、勉強のやり方にはコツがあります。そういった工夫の仕方を一緒に考えてあげられたらよかったのですが、本人任せにしていたため、うまいやり方を思いつけなかったのです。

そして、本当はやり方の問題でしかないのに、能力の違いと勘違いしてしまった結果、「がんばったって仕方ない」と、勉強に対する自信や意欲を失ってしまったのだと思います。それが、中1、中2と成績が低迷した原因です。だから「今まで一人に任せっぱなしでごめんね」という反省とともに、「だからあなた一人の責任じゃない」ということを伝えてあげてください。

子どものがんばりに親が甘えていたことを認識すべき

そして、お父さんにもH君の理解の仕方を教えてあげましょう。ギリギリまで自分でがんばってやってきたからこそ、うまくいかなくなった時に、どうしていいのかわからなくなり、ふさぎ込んだり、先送りするしか方法がなかったということ。甘え方を知らず、「助けて」という単語を持っていないから、爆発するという方法での表現になってしまうこと。今までH君のがんばりに、親の方が甘えていたんだということを理解できれば、今後の関わり方も変わってくると思います。

おそらく小学校の時も、一人でうまく結果を出して、手のかからない子でいてくれたぶん、中学になってうまくいかなくなった子供に対して、親として苛立ってしまったところがあったのではないかと思います。もともとの期待値が高過ぎると、できなくなった時「そんなはずじゃない!」という怒りに変わりやすいのです。そういった親としての心の動きを反省しつつ、H君が自分に自信が持てるように、ご夫婦で協力してあげてください。今までH君ががんばってくれたのだから、今度は親ががんばる番です。

回答者Profile

小川大介先生
小川大介

教育家。中学受験情報局『かしこい塾の使い方』主任相談員。

京都大学法学部卒業後、コーチング主体の中学受験専門プロ個別塾を創設。子どもそれぞれの持ち味を瞬時に見抜き、本人の強みを生かして短期間の成績向上を実現する独自ノウハウを確立する。個別面談の実施数は6000回を数え、受験学習はもとより、幼児低学年からの能力育成や親子関係の築き方指導に定評がある。各メディアでも活躍。著書多数。

文=酒詰明子

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自分で学べる子の親がやっている「見守る」子育て


『自分で学べる子の親がやっている「見守る」子育て』

大手進学塾や個別指導塾での経験から、子ども一人ひとりの持ち味を見抜き、強みを生かして短期間で能力を伸ばす独自ノウハウを確立。教育家・小川大介氏が、自分軸を伸ばす子育てのコツを公開した話題の一冊。


■小川先生のTwitter:@Kosodate_Ogawa
■小川先生が主任相談員を務めるサイト:中学受験情報局『かしこい塾の使い方』

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