クラスに友達ができない息子。「話しかける勇気がない」と泣く子に親としてできることは?【小川先生の子育てよろず相談室】

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クラスに友達ができない息子。「話しかける勇気がない」と泣く子に親としてできることは?【小川先生の子育てよろず相談室】

「うちの子のこんなところが心配」「私の接し方、コレでいいの?」子育ての悩みは尽きません。でもそのお悩みも、教育のプロの目を通すと、お子さんの個性や魅力を再発見するきっかけになるかも!?
教育家の小川大介先生が、子育てに関する悩みに対してアドバイス。回答文最後の「大丈夫!フレーズ」が、頑張っているあなたの心をスーッとラクにしてくれますよ。連載第118 回のお悩みはこちら。

【お悩み】

小4と小3の息子がいます。ご相談したいのは、長男の学校での友達関係についてです。もともと自分から話しかけることが苦手な子でしたが、1年の時は運よく仲の良い子と同じクラスだったこともあり、問題なく過ごせていました。その子とは2、3年とクラスが離れてしまいましたが、ちょうどコロナの影響で学校に行く頻度が少なかったこともあり、今まではあまり気になることもありませんでした。しかし先日、息子から「最近誰とも話してない。休み時間もひとりぼっちだ」と打ち明けられました。

そんな折、授業で先生からペアを作るよう言われた際、うちの子は誰とも話せずに終わってしまったということが。本人は「話しかける勇気がない。どうしたらいいかわからない」と泣くばかりでした。私から先生に事情を話し、グループワークに切り替えてもらうことで授業はうまく進むようになりましたが、クラスの友達関係については変わらずひとりぼっちのようです。

そのため昼休みなどは、弟と待ち合わせて弟の友達と一緒に遊んでいるようです。学童でも下の学年の子と遊ぶことが多いのですが、同学年でも一人仲の良い子はいて、その子とは休日に待ち合わせて一緒に遊んだりもしています。でも、他の同学年の子たちとはなかなか遊べないようです。

幼稚園の頃も遊ぶ友達は限られた一人だけで、兄弟で遊ぶことのほうが多かった息子。最近家では、弟とゲームのマインクラフトでよく遊んでいます。学童の友達ともマインクラフトの話などをよくしているようですが、本人曰く、「クラスの子とはそういう話ができない」とのこと。「クラスにも話せる子がいるかもしれないし、がんばって話しかけてみたら?」と勧めてみても、「遊ぼうって言って嫌だって言われたらどうする?」と拒否されることへの恐怖感が強いようです。どう返していいかわからず、「そんなことは言わないよー」としか言えませんでした。私自身も人見知りで、息子の怖がる気持ちも良くわかるので、あまり背中を押すと逆に追い詰めてしまうような気もしています。

友達は、気の合う子がいたら、その時にできればいいと思っていましたが、授業中や休み時間に一人でいることに不安を感じ始めたようなので、親としてどうにかしてあげたいと思っています。これから修学旅行や委員会が始まったら、この子はもっと苦しむのだろうか、と思うと辛いです。学校生活の中で、友達が欲しいと思っている息子にどうしてあげたらいいのか、アドバイスをお願いします。(Tさん・38歳)

【小川先生の回答】

人間関係づくりのプロセスを教えてあげる


息子さんの現在までの環境を振り返ってみましょう。ご両親はもちろん、物心ついた時から下の子がいて、最初から会話ができる人が準備された状態で育ってきていますよね。友達より兄弟と遊ぶことが多かったということは、自分から積極的に人間関係を構築しなくても不自由しない環境だったのだと思います。そのため、「相手から話しかけられて友達になる」という受け身の状態でしか人間関係づくりをしてこなかったのではないでしょうか。このままでは人間関係づくりが受け身の感覚で固定されてしまいかねないため、今のうちに人との関係づくりの仕方を教えてあげた方がいいでしょう。

自分のことをわかって欲しければ、まず自分から相手理解を


知らない人とコミュニケーションをとるには、話しかける前にまず相手のことをよく観察する必要があります。授業中にどんな発言をしたか、どんな本を読んでいるか、他のお友達とどんな会話をしているかなど、相手がどんな人なのかをよく観察することで、自分と話が合いそうなどの判断もできるようになるのです。息子さんは、そういったことをせず、いきなり「話しかけられない」と自分で勝手に決めつけてしまっているように思われます。

人間というのは、相手のことを理解しようとして初めて、自分のこともわかってもらえるもの。友達が欲しいなら、誰よりもまず自分から相手のことをわかろうとする必要があります。息子さんは「友達ができない」と悩んでいるようでいて、実は自分は何もしていなかったのではないでしょうか。そのことを本人に気づかせてあげることが第一歩です。

「がんばれ」ではなく「知らなかったんだよね」


でもそれは、本人が何もしていなかったのを責めるという意味ではありません。本人は本当にわからなかったのであり、他の子が友達付き合いしている様子を見ても、それは勝手に気が合う子たちが発生して仲良くなってると信じ込んでただけ。人間関係づくりの技術を知らなかっただけです。

ですから、本人の性格や勇気という次元で捉えて「がんばれ」という方向に持って行ったところで、やり方がわからないのだからうまくいくはずがありません。なまじお母さんも人見知りで、人に話しかけるのにがんばる人だから、「がんばれ」という言葉が出ちゃったのでしょうが、今の息子さんにとってその言葉は、「がんばれない自分」を認識させられて余計辛く感じてしまうでしょう。「がんばれ」ではなく、「知らなかったんだよね」と寄り添って、がんばり方を教えてあげてる必要があります。人のことをよく見てよく聞いて初めて、人の気持ちや、その人が好きそうなことがわかってくるということ。そうやって自分と合いそうな人を見つけていくという人間関係づくりのプロセスを、そして誰だって勇気を出して声をかけているということも教えてあげてください。

コロナ禍で人間関係づくりを学びそびれた子が増えている


そして、拒否されることも当然あることも教えてあげましょう。なぜなら相手にも気持ちはあるし事情もあるからです。忙しそうにしてる子に、自分が遊びたいからと誘っても、それは断られますよね。また、外遊びしたい子にゲームをやろうと言っても、やりたいことが違うから断られると思います。そのように相手にも事情があり、お互いが重なり合ったところで初めて仲良しが生まれるのです。

そういった人間関係づくりの技術は、本来なら絵本やアニメなどの体験、保育園や習い事などでのやりとり、家族ぐるみでの友人付き合い、親戚の集まりなど、比較的安全なところで、ちょっとずつお互いの都合がずれることを経験しながら学んでいくものです。しかしここ3年のコロナ禍で、子どもたちが人付き合いを試す経験値が激減。加えて、マスクで相手の表情が読めず、観察ポイントがわかりにくいため、余計に委縮しやすい環境に置かれています。その結果、人間関係づくりを学べていない子が増えているのです。特に今の小学校1~4年生というのは、その影響をもろに受けている学年。特に、息子さんのように慎重で、トラブルや状況の変化が苦手な子は余計に、自分から動かずに待ってしまうクセがつきやすいといえるでしょう。以前なら自然と身についていたはずの人間関係づくりの技術も、人付き合い自体が希薄になったコロナ禍では、学べなかったのはある意味しかたのないことです。だからこそ大人たちは、人間関係づくりの具体的な技術をより丁寧に子どもたちに教える必要が出てきているのです。

お父さんお母さんの人付き合いでの失敗や嬉しかったことなど、いろんなお話をしてあげてください。そしてたくさんの物語に触れさせるのもいいですね。そうやって人付き合いのシュミレーションを通して経験値を上げていくことが大事です。

小川先生からの「大丈夫!」フレーズ
『人見知りなお母さんだからこそ、経験談もたくさん話せてラッキー』
お母さんも人見知りなら、人付き合いでの失敗も成功もいろいろ経験してきたはず。自分がいつも、人のどういうところを見て、どんなタイミングで、どんなふうに話しかけているのか、話してあげればあげるほど、息子さんの経験値も上がっていきます。自分も人見知りなことをラッキーと思い、たくさん話してあげてください。

回答者Profile

小川大介先生
小川大介

教育家。中学受験情報局『かしこい塾の使い方』主任相談員。

京都大学法学部卒業後、コーチング主体の中学受験専門プロ個別塾を創設。子どもそれぞれの持ち味を瞬時に見抜き、本人の強みを生かして短期間の成績向上を実現する独自ノウハウを確立する。個別面談の実施数は6000回を数え、受験学習はもとより、幼児低学年からの能力育成や親子関係の築き方指導に定評がある。各メディアでも活躍。最新刊は『子どもが笑顔で動き出す 本当に伝わる言葉がけ』(すばる舎)。

小川大介の見守る子育て研究所YouTubeチャンネル公式LINEアカウントでも情報発信中。

文=酒詰明子

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