壮絶!ママ友たちの中学受験体験記。塾長に中学受験のリアルを聞きました

#育児・子育て   
  『私、母親失格なの!? 中学受験マウント沼にハマりました』より

首都圏の中学受験も山場を超え、多くの学校で合格発表が終わりました。今年の受験生とその親たちの悲喜こもごもの様子を見ながら、来年以降の我が子の受験に思いを馳せている保護者の方も少なくないのではないでしょうか。

中学受験を体験した保護者の手記は個人ブログや塾のサイトなどに多く掲載されていますが、コミックエッセイの形で公開された作品があります。それが、『私、母親失格なの!? 中学受験マウント沼にハマりました』(原案:ぽんちゃん、漫画:ちゃんこ)です。

この作品の主人公は、小学校5年生の冬から受験勉強を開始した息子・正人の母、美里。なかなかエンジンのかからない息子にヤキモキしながらも、少しずつ前に進む息子を見守ります。一方、優秀な息子・トモキと共に早い段階からお受験ママとして準備を進めていたママ友・潤子は、ことあるごとに美里にマウントをとってきます。そんな中、受験を目の前に調子を落としてしまったトモキに、潤子の言動は荒れていくのでした……。

『私、母親失格なの!? 中学受験マウント沼にハマりました』より

この作品では対照的なふたつの家庭の中学受験が描かれていますが、作品の監修を手掛けた個別指導塾TESTEAの塾長・繁田和貴さんに、現在の中学受験の状況や、作品についてのお話を伺いました。

個別指導塾TESTEA・繁田和貴さんインタビュー


──「クラスの8割が受験する」や「小3から受験に向けて動き出す」などの中学受験に関する情報に驚きました。昨今の「中学受験」についての現状を教えていただけますでしょうか。

繁田和貴さん:近年、中学受験人口は増加傾向にあります。1家庭当たりの子どもの数が減ったことにより、1人の子になるべく多くの教育費をかけようという流れになっているのです。また、孫への教育資金一括贈与が非課税となる制度もそれを後押ししています。

さらにここ数年コロナ禍において、中学受験熱が加速したように思います。私立がオンライン授業など含め臨機応変に対応したのに対し、公立は対応の遅さが目立ちました。先行きの見えにくい状況の中、そのあたりの対応力も私立の人気を高めているようです。

『私、母親失格なの!? 中学受験マウント沼にハマりました』より

──『私、母親失格なの!? 中学受験マウント沼にハマりました』の主人公の美里は、受験に対しては「なるべく子どもの自主性にまかせたい」というスタンスでしたが、受験に熱心なママ友・潤子からは、「親として無責任だ」と言われてしまいます。
無理強いはしたくないけれど、選択肢を残しておくためにも早めに塾だけでも……という思いは同年代の子を持つ親御さん共通の悩みだと思います。このような親御さんへ、よきアドバイスなどありましたら、お願いいたします。

繁田和貴さん:そもそも中学受験は選択肢の一つであり、絶対にしなくてはいけないものではありません。大切なのは子どもの個性を見極め、一人ひとりに合った教育をしていくことです。
日本の子どもたちに一番必要なものは自己肯定感だと思っています。どんなことでもいいので、何かの成功体験を通じて自己肯定感が高まれば、色々なものに積極的にチャレンジするようにもなるでしょう。しかるべき時期には勉強にも取り組むはずです。

芸術やスポーツの才能がある子なら、それを伸ばすのもよいでしょう。そう考えると、本人が乗り気でないのに無理やり塾に行かせれば、本来伸びるはずだった別の才能に蓋をすることにもなりかねませんし、そこで劣等感を味わうようなことになったら、自己肯定感にも悪影響が出かねないという意味で、長期的に見た時にマイナスが大きいですよね。美里のように、本人の自主性に任せるというスタンスは、親としての大切なあり方だと思います。

ただし、色々な選択肢は提示してあげましょう。その選択肢の中から、子どもの心の琴線に触れたものに一生懸命取り組ませ、それを応援するのが理想的な親の姿です。

『私、母親失格なの!? 中学受験マウント沼にハマりました』より

──『私、母親失格なの!? 中学受験マウント沼にハマりました』でも、美里の息子・正人くんには成績が伸び悩む時期がやってきます。こんな時に、母親は子どもにどんな言葉をかけてあげたら良いのでしょうか。

繁田和貴さん:中学受験は親子の二人三脚と言われることもあります。一番大切なのは、親は子どもの伴走者である、味方であるという姿勢を示すことです。

中学受験の勉強は小学生にとって本当にハードです。遅くまで塾に通い、沢山の宿題と向き合っているのに、テストで厳しい結果を突きつけられることはよくあります。そんな時にどうするか? 「お母さんに怒られたらどうしよう…」そんな不安を抱えながらテスト結果を打ち明ける子どもにとって、一番心が救われるのはお母さんからの共感です。

「そっか、残念だったね。お母さんも悔しいよ」と子どもの気持ちにまずは寄り添います。その上で、そうなってしまった原因を一緒に分析し、行動に変化を促すのです。
子どもが何でも話せる安心安全な関係性を構築すること、それをぜひ心掛けてください。

『私、母親失格なの!? 中学受験マウント沼にハマりました』より

──『私、母親失格なの!? 中学受験マウント沼にハマりました』では、子どもの受験にのめりこんでいく教育ママ・潤子の姿も描かれます。子どもの受験にのめり込みすぎないようにするための心構えなどがあれば教えて頂けますでしょうか。

繁田和貴さん:中学受験をやろうと思った当初の気持ちを思い出すのが効果的です。中学受験は何を目的として始めたのでしょう。いい学校に行ってほしいから?将来の選択肢を広げてほしいから?

色々な答えがあると思いますが、究極的にはお子さんの幸せのためのはずです。
中学受験の激しい競争にさらされる中で、気が付いたら「お母さん自身のプライドのため」に子どもを頑張らせるみたいな状況に陥る潤子さんのようなケースは決して珍しいものではありません。ついつい子どもに厳しく当たってしまっているなと思った時には、改めて「中学受験は我が子の幸せのため」ということを思い出すようにしてください。そして何もできなかった幼い頃の我が子を思い出してみてください。

その時に比べて今は本当に沢山のことができるようになっているはずです。周りと比べて落ち込むのではなく、我が子自身の成長に目を向けるようにしましょう。きっと我が子の頑張りが愛おしくなると思います。

──『私、母親失格なの!? 中学受験マウント沼にハマりました』では、お受験マウントのママ友にイラっとしたり、そんななかでも素直に育つ子どもたちのシーンにホッとさせられたりしながら、ラストまで面白く読ませて頂きました。監修を手掛けた作品が1冊にまとまったということで、改めて作品を読んだ感想をお聞かせいただけますでしょうか。

繁田和貴さん:中学受験の大変さとそれを乗り越えるためのチームワークの大切さが痛快に描かれた良い作品になったと思います。美里はバランスの取れたよいお母さんですね。美里ファミリーは傍から見ていてとても応援したくなります(笑)

そして強烈なキャラとして描かれている潤子、実際にはここまでの人にはなかなかお目にかかりませんが、夢中になるあまり近い状態に陥ってしまう方は少なからずいます。
この作品が、受験生のお母さんたちの「理想的な我が子との関わり方」について考えるきっかけとなれば、監修者としてとても嬉しく思います。

『私、母親失格なの!? 中学受験マウント沼にハマりました』より

──最後に、新たに中学受験を迎える方へのメッセージをお願いいたします。

繁田和貴さん:中学受験のチャンスを有意義なものにしてほしい。中学受験を通じて志望校合格だけではなく沢山の価値を得てほしい。家族の絆を深めるものになってほしい。間違っても親子の溝を深めるようなものになってはいけない。たくさんの受験生親子を見てきた立場としてそう思います。

そのために一番大切なのは、親が子どもとの関わり方における正しい知識を持ち、余裕を持ってお子さんと接することです。親が子どもの成長を願っているのと同じくらい、子どもは親に喜んでもらえることを願っています。お互いの想いがすれ違わないよう、時にぶつかることはあっても、その時はまずは大人である親の側から歩み寄るよう心掛けていれば、きっと「やってよかった」と思える良い中学受験になることと思います。

取材=ナツメヤシコ/文=レタスユキ

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