女ともだちは超図々しい「クレクレさん」!異常なほどに人のものを欲しがる理由を心理カウンセラー・白目さんに聞いてみた!

#趣味   
どの口が言うてんねん

「お財布忘れたから一緒にお会計して!」
「友達だからタダで作ってくれるよね」
「おごってくれるなら行くよ〜」
「車に乗せてくれるよね?」

職場やママ友、親族関係。さまざまな人間関係のなかで、図々しい「クレクレさん」に遭遇した経験はありませんか?当たり前のように無茶なおねだりをされたり、相手の気持ちを省みない要求をされると、誰しも面食らってしまうもの。どう対処したらいいのか困ってしまいますよね。

SNSへの投稿で大反響を集めたぱん田ぱん太さんの話題作『欲しがるあの子を止められない』でも、強烈なクレクレの友人にしつこくおねだりをされ、暴走していく要求に振り回されてしまう主人公が登場します。

『欲しがるあの子を止められない』のあらすじ

ある日、義理の姪っ子ちゃんにかわいくネイルを塗ってもらった主人公のきよかさん。ネイリストを目指しているという姪っ子ちゃんは、中学生とは思えないほどの腕前で、きよかさんをあっと驚かせます。

メイちゃんすごいなぁ!

あまりの綺麗な出来栄えに、きよかさんは完成したネイルをSNSに投稿。すると学生時代の同期・チコさんから「どこのネイルサロン?」とコメントが入ります。

これどこのサロン?

めっちゃ喜ぶやろなぁ

SNS上でのちょっとした交流のつもりが「友達割引とかある?」「あるんなら紹介して〜」「私も練習台になってあげる!」など、矢継ぎ早にメッセージを送りつけてくるチコさん。困惑するきよかさんをよそに、チコさんの一方的なおねだりは暴走の一途をたどります。

友達割引とかある?

私も練習台になってあげるで!

私が気にすんねん!

話通じなさすぎるやろ

この出来事をきっかけに、同期だった学生時代を思い返すきよかさん。当時も、自分は絶対買わないのにもかかわらず、友人たちが購入した食べ物を毎日のように「ひと口ちょうだい〜」とねだり続け周囲をドン引きさせたりと「クレクレ」行為の常習者だったのです。

きよか〜 一口!

今日もコンビニ行かんの?

この他にも、社会人となったチコさんのさまざまな「クレクレ」行為を友人たちから聞くことになったきよかさん。「度を越して人の物を欲しがったり、得をすることに執着をする」異常なまでの性質ゆえ、チコさんは行く先々の人間関係で絶えず大きなトラブルを起こしてきたことを知ります。
知り合い程度の女性の夫が美容師だと知ったチコさんが、その夫が働く美容室を探し歩き「知り合いの夫なんだから友達価格で切って欲しい」といきなり押しかけて割引を求めて騒ぐなど、ありえない行動も!

なぜチコさんがそこまでがめつくなってしまったのか?作中では彼女の生い立ちを深く掘り下げていくとともに、親が子どもに与える影響や家族との関わりについて紐解く、壮大な実話コミックエッセイなのです。


「無視してもダメ、断ってもダメ」な図々しいクレクレさん、どうしたらいい!?

学校、仕事、ご近所…さまざまな人付き合いをするなかで、チコさんのような「クレクレさん」と遭遇したことのある人もいるのでは。図々しい人はどんなことを考えているの?「クレクレ」されたら、どうやって上手く対応したらいいの?気になった疑問について、今回心理カウンセラー・白目みさえさんにお話を伺いました。
白目さんは精神科の心理カウンセラーを本職とする傍ら、最新作『子育てしたら白目になりました』などを描く人気コミックエッセイストとしても知られています。

無視してれば諦めると思ったのに

──あまり親しくない関係の人や、疎遠になっていた人から図々しいお願いが。親しくない間柄の人にいきなり何かを要求する行為は一般常識的には考えづらいことですが、どういう心理がそうさせるのでしょうか?

白目さん:「クレクレさん」の多くは「自分は損をしている」という思いを根底に持っているのではないでしょうか。自分は人よりも苦手なことが多い、他の人が当たり前に持っているものを自分は持っていない、貧乏だった、家庭環境が複雑で愛情がもらえなかったなど。自分は周りの人よりも持っているものが少なく、周りの人は自分よりも恵まれていると確信しています。

そして「損」の内容は、人生の大部分を占めているものだったり、大きな傷つきによって失われたものだったりと、今から努力しても到底取り返せないようなとても価値のあるものだと感じています。そのため、目の前の食べ物や数千円のものなどは、本人にとってはとても些細なものに見えているのでしょう。結果として「私はこれまでずっと損をしてきたのだから、これまで恵まれてきたはずの周りの人から少しくらいもらってもいいはずだ」という発想に至るのではないかと考えられます。

どないしたらええの この子?

──チコさんのような気乗りのしない図々しいお願いが来た場合、角を立てずに断るにはどうしたらよいでしょうか? 図々しい人たちに気持ちを消費されないための心構えも教えて欲しいです。

白目さん:まず多くの人の場合。そういう「お得」は「もらえない」前提で生きています。断られたからといって「損」をしたとは思わないので、「ちょっと難しいかもー」「また聞いてみるねえ」とやんわり断られると、そこで引きます。

しかし「クレクレさん」の場合は、前提が「もらえるはずに違いない(だって自分は損をしているから)」なので、断られることはあり得ません。例えるなら「働いたのに給料が出ない」くらいの感覚でしょうか…。本人の中でそういった状況であれば「いやいやおかしいでしょ?ちゃんと上に聞いてよ!」と食い下がってしまうのもわからなくはないですよね。状況は全然違いますが。

相手は「もらえたらラッキー」と考えているのではありません。なんとしてでも自分の損失を取り返そうとしているくらいのハングリー精神で挑んできています。「自分の断り方が悪かった」「どうしてうまく伝わらないんだろう」と自分を責める必要はありません。断り方の次元ではなく、そもそも基本姿勢や前提が全く違う人を相手にしているので伝わらなくて当然なのです。

そういう人たちには「無理ですね(笑顔)」とシンプルに断るのが有効だと考えます。冷たいように見えますが、人は「手に入りそうで入らないもの」に一番魅力を感じる生き物なので、期待をさせて長く執着させることの方が残酷です。「こうだから無理」と理由を添えてしまうと、今度はその理由を解決しようとする方向にエネルギーが注がれてしまうため、どれだけ「いいじゃん」「なんで?」と言われても余計な情報は与えず、「無理なものは無理ですね(笑顔)」一択で突き通すのをおすすめします。


お金を返してくれない「クレクレさん」への対処法、白目さんに聞いてみた!

財布家に忘れてきてもた

──ちょっとしたお金を頻繁に借りるわりに自分から返してきたことのない人。貸した上に自分から催促しないといけないのは二重に心の負担です。どうしたらストレスを感じずにお金を回収できるでしょうか?

白目さん:「クレクレさん」の場合、基本的に誰かから何かをもらうことは「先に自分が損した分を回収しただけ」と考えているので、「借りた」という感覚になっていない場合があります。お話をする場合は「私は貸したんだよ?あげてないよ?」というニュアンスを伝えることを意識するのが有効でしょう。

【1】メールなどで催促する
少額であれば「○日△△の時に貸した○円」と詳しい状況や額を明記して文字に残しましょう。文字だと真剣さも伝わりますし、証拠にもなります。また「忘れていないよ?」というアピールにも。そして「○日に会う時に持ってきてね」など返済期日を指定することも大切です。
少し大きな額の場合は「今月の電気代それで払いたいの」と添えるなど、「あなたに貸しただけで私の使う予定のお金だからね」と強調するのも良いでしょう。

【2】会った時に思い出したように伝える
本当に悪気なく忘れている場合もありますので、会っている時に「そういえば」と切り出すことで「あ!ごめん!」と言ってくれる場合もあります。最近は電子マネーで送金などもできますので、手持ちがなくても様々な方法で返すことが可能です。

【3】第三者に相談する
「返してくれないからあなたから言ってよ!」というスタンスではなく、あくまでも「お金のことだから直接言いにくくて…」「忘れてるだけだと思うんだけど…」という切り口で相談してみるのもひとつです。その子の友人や恋人、旦那さん、家族など、話が通じそうな相手で、なおかつ協力してくれそうな人に相談してみましょう。

こういうやりとりはストレスなので、できれば少ない回数で終わらせたいですよね。言い方はやんわりだったとしても、何度も伝えているとやはり空気も悪くなってきます。一発勝負で終わらせられるようできるだけストレートに伝えましょう。そしてもう二度と貸さないことも大切なことです。


優越感、劣等感、上下関係。お金の貸し借りは友情にどう影響する?

財布忘れたんやったら今日は我慢しいや

──チコさんは借りる立場ながら横柄な態度を見せますが、そもそも友人間でのお金の貸し借りは心理的にはどのようなストレスや負担、関係性の変化を生むのでしょうか?

白目さん:「お金」が絡むと、これまで対等だったはずの人間関係に上下関係が生まれてしまいます。借りる方は下手に出てお願いすることなるので、劣等感や恥ずかしさ、見下されるのではという不安を抱くかもしれません。また相手の言うことに逆らえなくなったり気を遣ったりして、これまでのようにフラットな態度ではいられなくなるでしょう。
逆に貸す方は「貸してあげた」ということで少し優越感のようなものを抱いたり、何か相手に落ち度がある度に「お金貸してあげたのに」という言葉が過ぎるかもしれません。まさに「借り」を作っている状態ですね。
借りた方が返さなければ、相手から「搾取した」という構図になって信頼も失います。また貸した方が「返して」と伝える場合も、相手を信用していないようで躊躇してしまうかもしれません。

このようにお金の貸し借りがあると、本来ならその関係の中に生まれるはずのなかった感情がたくさん生まれてきます。そしてそのほとんどは決して「良い感情」ではなく、結果として居心地の悪い関係になり、友達を失ってしまうという事態につながるのだと思います。

  *    *    *

誰しも人間関係で不快な思いはしたくないもの。もし避けられない人付き合いのなかで「クレクレ」行為に遭遇してしまったら…、白目さんの対処法を覚えておくことで、トラブルを未然に防ぐことができるかもしれません。

【白目みさえさんプロフィール】
臨床心理士・公認心理師。心理カウンセラーとして精神科に勤務。漫画家としても活動。近著「子育てしたら白目になりました」が好評

取材・文=河野あすみ

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