食べ物はあっても自己嫌悪...。自宅が全壊した地震被災者が語る避難生活のリアル

#くらし   
 地震発生から6日目以降。周囲の人にも疲労の色が見え始め、負の空気を感じるように。

防災の重要性が叫ばれている昨今。大きな地震も増えていますし、備えることの大切さはわかっているつもり。それでも、実際に被災するつらさ、避難所生活の大変さは、経験した人にしかわからないことです。

「地震被災者の防災術」今回は、熊本地震で被災されたSさんにお話を伺いました。
「まだ思い出すのもつらい」と涙ぐみながらも、話をしてくれたSさん。それは、「災害を自分ごととして考えてほしい」という思いから。Sさんの経験を通して、もしもを想定した心積もりを。

*こちらで紹介するグッズや商品は、一部の被災者が必要だと感じたものです。被災内容や環境によって、必要になるものは異なります。

▶︎お話を伺ったのは
Sさん
被災当時:住まいのあった熊本県熊本市では、震度6強の揺れを記録。夫、6歳と4歳だった子ども2人と住むアパートは全壊。当時の地震の備えは、非常用持出袋のみ。避難所生活は約1カ月半続き、その後は旧宅近くの賃貸住宅に入居。

食べ物はあるけれど...自己嫌悪の毎日。子連れで安心できる場所が欲しかった

「熊本県民は、みんな思っていたはずです。『熊本に地震なんて来ないよね』って」
 そう話してくれたSさんもその一人。しかし、2016年4月に起こった熊本地震で、その思いは打ち砕かれました。
「私の家があったのは、最大震度7を記録した益城町に隣接した地域。14日の前震と16日の本震で、家は全壊してしまいました」
防寒着とスマートフォンと充電器。あとは子どもたちのための毛布を1枚。それだけを持ち、家族で向かった避難所での生活はこのあと約1カ月半続くことに。
「避難所では三食きちんとごはんを食べることができましたし、生活に必要な物資も支給されていました。そんな生活をありがたいと思いながらも、自分が何の役にも立てないことが心苦しくて。私は毎日、いうことを聞かない子どもたちを追い回しているだけ。迷惑をかけているだけの自分が本当につらくて、仕事に出かける夫をうらやましく思っていました」
子どもたちにとって、避難所での生活は非日常。ついはしゃいでしまい、周囲の人に注意されることも多かったのだそう。
周りの迷惑にならないように気を配る毎日で、気が休まることがないんですね。疲れからしだいにイライラしだし、気づけば子どもをよくどなるようになっていました。そしてそのたびに自己嫌悪に陥って……。子連れ家族用のスペースを作ってもらえたらと、何度思ったかしれません。もし事前にこういうことが想定できていれば、テントを用意したり、何か備えることもできたんじゃないかと思うんです。私自身の経験をお伝えすることで、防災グッズの見直しや、避難所の環境の改善につながればいいなと願っています」


まさかの本震で屋根が潰れて...。子どものケアで疲労が大きい避難所生活

【地震発生当日 (前震) 】眠る子を抱えて脱出

就寝中に地震が発生。「眠っている子どもたちを抱きかかえ、すぐ外に。この時点でライフラインは停止。必要最低限のものだけ家に取りに戻り、この夜は近所の方が貸してくれた車で就寝。その方からは水や食料もいただいたんですよ」

寝室が玄関近くで助かった
寝室の位置は偶然にも玄関近く。非常用持出袋も玄関のそばに置いてあり、地震でものが散乱していてもすぐに持って避難できました。


【翌日】家の中も外もぐちゃぐちゃ。5分ごとに大きな余震も

翌朝家の片づけに戻ると、物が散乱していたものの、家電や家具は無事だったそう。
「片づけを終え、近くの公民館へ。残り少ない中からおにぎりやパンを2人分だけもらい、公園の水道で水を確保」

地面には亀裂が入り大量の瓦が落ちた。

地面には亀裂が入り大量の瓦が落ちた。


【3日目 (本震発生当日) 】深夜にまさかの本震で屋根が潰れる

自家用車も無事だったので、この夜は車中泊することに。
「夜中の1時頃、本震が発生。車は横転しそうなほど左右に揺れていました。家を見上げると潰れた屋根が見え、『もうここには住めないんだ』と、あぜんとした記憶が」

屋根に引っかかって、落ちそうで落ちない瓦も。



【3日目 (本震発生日の午前) 】学校に避難。情報が入らず絶望的な気持ちに

本震発生後避難していた公民館から、小学校の避難所へ移動。
「この時点での情報源は、他県に住む姉からのメールだけ。断片的な情報だけで全体像が分からず、絶望的な気持ちでした」。4日目ごろにはテレビが設置され、Wi-Fi 環境も整ったそう。

カセットこんろがうらやましい

 カセットこんろがうらやましかった。

校庭で、カセットこんろで調理しているご家族を見かけて、なんて便利なんだと。備えておけばよかったなと思いました。


【3日目 (本震発生日の午後) 】気を紛らわせるためにボランティアをする

地震発生から3日目、 気を紛らわせるためにボランティアに参加。

家に行き、子どもの制服などをピックアップ。「帰る家がない現実から目を背けたくて、食料配布のボランティアに参加。高齢者や幼児から配るルールで、中高生や大人は後回し。いちばんエネルギーがいる世代なのに、と心苦しかったです」

励ましのことばがつらい…
友人からの励ましのことばが、正直にいってつらかった。私を思ってのことばだと分かっていても、実際に家をなくしてみると、とてもじゃないけれどがんばる気持ちにはなれなかったんです。


【5日目】子どものケアなどで疲労を感じ始める

「当初、食事はパンやバナナなどが提供されていましたが、このころから避難所などの女性が中心となって、家庭科室で料理を作るように。GW明けには配給が安定し、カップ麺やコンビニ弁当の提供になりました」。緊張の糸が切れたのか、疲労を感じ始めたのもこのころ。


【6日目以降】避難所に負の空気が漂い始める

 地震発生から6日目以降。周囲の人にも疲労の色が見え始め、負の空気を感じるように。

周囲の人にも疲労の色が見え始め、イライラとした負の空気を感じるように。「そんな中での救いは、遠方の友人に誰にもいえない愚痴のメールを書くことでした。彼女とは程よい距離感があったので、いいやすかったのかも」

広い車か子連れ専用部屋があれば...
周囲に気を遣わずに過ごせて、一人になれる場所がとにかく欲しかった。着替え場所がないのも、つらかったですね。


もし地震の1日前に戻ったら何をする?

□備蓄品のチェック
□湯船の水、車のガソリンを満タンに

「カセットこんろ、カッター、ネームペン、テント、簡易トイレ、耳栓、プラスチック箸など、避難所生活の中で便利だったもの、これがあったらよかったのにと思ったものを、しっかり準備しておきたいですね」。また、車のガソリンは満タンに。洗濯や洗い物用の水を湯船にためておきたいとも。「食料は、食べ慣れていておいしいものを準備。例えば『ビスコ』や『クリーム玄米ブラン』などは栄養価が高くて腹もちがいいので、災害時にも役立つと思います」

子連れの避難所生活が、これほどまでに大変だとは...。わが家にも幼児がいるので身につまされるお話でした。子どものための防災グッズの用意も、入念にしておきたいと思います。

イラスト/oyasmur 取材・文/恩田貴子

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<レタスクラブ23年9月号より>





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