怖いのは「煙」。火災のときは「常に低い姿勢」で避難しよう

#くらし   
 実は怖いのが「煙」

『消防レスキュー隊員が教える だれでもできる防災事典』 6回【全8回】


いつ降りかかってくるか分からない、自然災害や人災、事故などの被害。そんな「もしも」のときに備えておくべき対処法を教えてくれるのが、消防レスキュー隊員のタイチョーさんです。

数々のレスキュー現場で救助してきたレスキュー隊員だからこそ知っている、「災害対応のプロ」ならではの知識やテクニック。そのどれもが、子どもやおばあちゃんなど力が弱い人でも実践できるものばかり!

自分や大切な人の命を守る知識やテクニックを身につけて、不測の事態が起こったときも冷静に対処できるように、ぜひ親子・家族・友人同士みんなで防災意識を高めて備えていきましょう。

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火災のときは、「煙の動き」を理解して「常に低い姿勢」で避難しよう

火災の対処:姿勢を低くする本当の理由

実は怖いのが「煙」

火事で亡くなった方の約半数は煙(一酸化炭素中毒と窒息)が原因といわれています。

煙は上へ上へと逃げていく習性があるので、煙を吸わないように低い姿勢を維持し、ハンカチなどで口や鼻を覆って行動しましょう。

また、煙は有毒ガスのため、火災現場で目を開けると強い痛みを感じますが、かがんで低い姿勢をとることで比較的視界もクリアになります。かがんで出口を確認して、低い姿勢を維持しながら避難することが大切です。

火災発生直後は、煙(上)と空気(下)の境目である「中性帯」がある

火災のときは「常に低い姿勢」で避難

ポイント1:かがんで行動する
ポイント2:壁伝いに行動する

★初期消火がとても大切!

火災発生直後から天井に火がまわるまでの間に火を消すことを「初期消火」といいます。周囲に火災を知らせるとともに、消火器や水を使用してすばやく消火活動を行います。

1 周囲に火災を知らせる(大声を出す/119番)
2 逃げ遅れを確認する(視界がクリアな時に)
3 初期消火を行う(消火器や水をかける)
4 火災現場から避難する
※ 1〜3 火災発生後約1~2分=初期消火の目安時間

屋内で火災が起きた場合、約3分で天井に火が燃え移るといわれています。天井に火がまわった時点で初期消火は限界となるため、火災現場から避難し、到着した消防隊に消火活動をまかせましょう。

初期消火が大切!


NG行動

✕立って逃げる
火災が発生して間もないときは、煙と空気の層の境目である「中性帯」と呼ばれるものがあります。不用意に立って動くと、この中性帯が崩れ、下の空気の層にも煙が混ざり、視界がまったく見えなくなって逃げられなくなります。また煙は熱を持っているので、のどをやけどする危険もあります。

✕上の階に逃げる
煙が垂直方向に上がるスピードは毎秒3~5メートルで、オリンピックの短距離走選手が階段を駆け上がったとしても逃げ切るのは困難です。

助かる命を助けるために
・壁伝いに玄関まで行く練習をする(慣れてきたら目をつぶって練習する)

「消火器」はだれでも簡単にできる「ピン・ポン・パン」で使おう

火災の対処:「消火器」の使い方

だれでも使える!

消火器があるにもかかわらず、使い方がわからず火災が広がってしまうケースがあります。とても簡単なので、次の3つの擬音で使い方を覚えておきましょう。

1 「ピン」(黄色の安全ピン)を上に引っ張り抜きます。

2 「ポン」とホース先端を上に引き上げ、消火器本体から外します。このとき間違えてレバーを押さえないように注意します。

3 「パン」とレバーを強く握って、燃えている物に薬剤を吹きかけます。

消火器の使い方「ピン・ポン・パン」


★消火器を使うポイント

1 薬剤が自分にかからないよう炎の風上に立ち、燃えている物から4~7mほど距離をとる

2 炎を狙うのではなく、燃えている物を狙う

3 ホウキで掃くようにして、ホースを左右に動かしながら消火する

4 火が消えても中止せず、消火器の薬剤がなくなるまで続ける

5 消火器は約10~15秒で使い切れる(消火可能時間は短い)ことを覚えておく

★底がさびている消火器は使わない

古い消火器は子どもが遊びで使用して爆発するケースがあります。消火器の設置だけでなく、点検もしっかり行い、変形や劣化している場合は交換することが大切です。

NG行動

✕逃げ口を確保せず使う
部屋や家の中で消火活動をする場合は、必ず出口や扉を背にして消火器を使います。消火器には薄いピンク色の薬剤が入っており、放出すると視界がとても悪くなるためです。外で使うときは風上から消火をしましょう。

✕天井まで燃えているのに使う
消火器で初期消火ができるのは、炎が天井まで燃え広がっていないときです(天井に燃え移りそうな場合も消火できない)。初期消火ができなかったときは、火災現場から離れて消防隊の到着を待ちましょう。

助かる命を助けるために
・「火を扱う場所の近くに消火器を置いているか」「劣化していないか」を確認する

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「いざ、そのとき」のあらゆる災害から命を守るテクニック、ぜひ身につけましょう!

※本記事はタイチョー(著)、みぞぐちともや(イラスト)の書籍『消防レスキュー隊員が教える だれでもできる防災事典』から一部抜粋・編集しました

著=タイチョー、イラスト=みぞぐちともや

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