80代の作ったがま口バッグが、Twitterでバズって注文殺到！　お金がなくても楽しい老後は実現できる

相棒のミシンの向かうG3。ミシンのおかげで、生きる希望を取り戻しました。
「ところが、ここで問題が勃発します」とkikiさん。ミシンでコースター、ポーチ、財布などを次々と作っていきましたが、材料費がかかります。

「G3はお金がないので、私が払っていましたが、だんだん負担に。趣味だからやめてもいいのですが、そうしたら元の寝たきりに逆戻りするはず。それに、楽しそうなG3を見ていると、なんとか続けさせてあげたいとも思いました。姉2人からは『ミシンをしていると、G3がイライラしないから私たちもラク。なんとか続けさせてあげて』と、プレッシャーをかけられます」。

そこで、出来上がった物を売り、材料費を稼ぐことにしました。でも、そう簡単には売れませんでした。

毎日、G3が作ったがま口バッグは、ここに吊り下げます。「今日は５個できた」という達成感が爽やか！

「全然売れずに心が折れそうになったとき、私の18歳の息子に話しました。大して興味ないだろうなと思っていたら、反抗期を過ぎて大人になったのか、『80代でこんなに上手にバッグを作るなんて、おじちゃんはすごいな。Twitterで発信したら、広がるよ』と、アドバイスをくれたんです」。そして、すぐにTwitterのアカウントを作ってくれたそうです。

「アカウント名は、G3sewing。じーさんが作っているから、G3(じーさん)です。実は、最初は、私が作ったことにするつもりでしたが、息子が『そんな人たくさんいるから、売れへんよ。おじいちゃんが頑張って作っていることを、ちゃんと出したほうがいい』と言ってくれました。
その言葉を信じ、G3とミシンを始めた頃に考えたG3sewingという名前を、世に出すことにしました」。

Twitterを始めても、目立った反応はなし。
地道に続けていくしかないのかと思っていたころ…。
約1週間後、椿の柄のがま口バッグを持ったランニングシャツ姿のG3の写真を、「こんな格好ですみません」というコメントと共にアップしました。

そうしたら、その日のうちに、ものすごい数の注文のDMが、届いたのです。なんと、思いがけず、Twitterでバズってしまったのです！

TwitterでハズったときのG3の写真。その後も、G3の正直な姿や言葉をアップしています。

じーさんが作る職人魂がこもったバッグが、若者のアイデアでたくさんの人に知ってもらうことができました。
2人の間をつないだのが、娘であり、母であるkikiさんです。
3世代の得意分野を集結させた、コラボバッグになりました。
それから2年ほど経ちますが、予約は途切れることがないようです。

現在、G3sewingは、84歳の父（G3=じーさん）、80歳の母（B3=ばーさん）、娘（kiki）の3人でやっているソーイングチームです。
今日も3人で、三重県四日市の平屋の一軒家で、コツコツとバッグや小物を作っています。

G3から一言。
「朝、目が覚めるのが楽しみ。今日は何を作ろうかと思う。今まで、失敗ばかりの人生やった。80歳を過ぎて、まさかこんなことが待っているなんて思わなかった。今が一番幸せ」。

文＝大橋史子、撮影＝原田　崇