「リアリティに圧倒される」「涙が止まらない」モラハラ当事者が監修『99%離婚 モラハラ夫はかわるのか』で伝えたかったこと

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 『99%離婚 モラハラ夫はかわるのか』より

※この記事ではモラハラ行為について具体的に触れています。フラッシュバック等症状のある方はご留意下さい。

「リアリティに圧倒される」
「涙が止まらない」
「元夫がまさにこれ」
など、SNSでも大きな反響を呼んでいるマンガ作品、『99%離婚 モラハラ夫はかわるのか』をご存知ですか? この作品は、夫のモラハラが原因で危機に陥ったある夫婦の葛藤を描いた物語です。

あらすじをご紹介しましょう。
大手商社勤務のエリート会社員の翔は、専業主婦の妻と娘の三人家族。翔はちょっとしたことですぐ不機嫌になり、「お前ってホント無能だよね」「これだから常識ない専業主婦は」など心無い言葉を妻にぶつけていました。"理解力のない妻のため"と思いながら説教をしたり、”コミュニケーテョン”のつもりで妻の容姿をからかったり。だけどそんなある日、妻は突然娘を連れて家を出てしまいます。ひとり残された翔は、酒に逃げるなどしてしばらく荒れた後、オンラインのモラハラ当事者コミュニティに参加しながら、自分を変えようともがいていくのですが……。

  『99%離婚 モラハラ夫はかわるのか』より

この『99%離婚 モラハラ夫はかわるのか』の原作者である中川瑛さんは、「GADHA(Gathering Against Doing Harm Again)」というコミュニティを主宰されています。「GADHA」とは、大切にしたいはずのパートナーや仲間を悪意なく傷つけたり、苦しめたりしてきた人々が集まって、「自他共に、持続可能な形で、ケアできる関係」を作る能力を身につけるためのコミュニティサービスだそうです。つまり、「パートナーを悪意なく傷つけた側が夫婦関係の再構築を目指したい」方のコミュニティということ…。

また漫画担当の龍たまこさんもまた、大反響を呼んだ『母親だから当たり前? フツウの母親ってなんですか』を通して、現代の家族のあり方を考える作品を描いてきました。

おふたりがタッグを組んでこの作品を世に送り出した経緯や、その反響について、原作の中川さんにお話を伺いました。

原作者・中川瑛さんインタビュー


──この作品がうまれたきっかけや経緯について教えていただけますでしょうか。

中川瑛さん:GADHAの中で「パートナーを(悪意なく)傷つけた側の変容エピソードを社会に出していきたい」という話があり、以前からご縁があった漫画家の龍たまこさんに漫画化の依頼をして、Twitterで公開しました。そこから私達の活動との関わりが深まっていきました。

龍たまこさんが漫画としてわかりやすく発信してくださることによって、文章で発信していた頃と比べて段違いに多くの反響をいただくことが立て続けにありました。そこでいよいよもしかして長編も一緒にできるかもしれない…というような話になりました。

最初は自費出版にしようかと考えたり、クラウドファンディングしてもいいのではと考えたり、GADHAのサイトで連載していくのもアリかもねと考えたり色々あったのですが、龍たまこさんが「一度、以前お世話になった編集者の方に相談してみます」と提案してくださり、編集の方も関心を持ってくださって、そこからどんどん話が進んでいったような形でした。

  『99%離婚 モラハラ夫はかわるのか』より

──モラハラで傷ついた方の視点からのコミックエッセイは多いですが、「モラハラでパートナーを悪意なく傷つけた側が夫婦関係の再構築を目指す」という作品は珍しいですね。『99%離婚 モラハラ夫はかわるのか』のエピソードは中川さんの実体験でしょうか? それともどなたか具体的なモデルがいらっしゃるのでしょうか。

中川瑛さん:この作品のエピソードは、GADHAのメンバーのエピソードをたくさん集めて、個人が特定できないような形で組み合わせ、アレンジしたものになります。特定の個人を漫画にしたわけではありませんが、「モラハラあるある」を詰め込んで造形しているため、多くの方に少なくとも一部は共感されるような内容になっていると思います。

──つまりセミフィクションであると。この作品を漫画家の龍たまこさんと作り上げていく過程で、気づいたことや感じたことなどがあれば教えて下さい。

中川瑛さん:表情と話し方の重要性です。これまで自分が書いてきたものは基本的にすべて文章で、どんなに頑張ってもこれほどの表現はできませんでした。

傷つけた側が生み出す緊迫した雰囲気、誰かを慈しむことなど決してできないだろうと思わせるに足る冷たく攻撃的な眼差し、相手の存在を脅かそうとする様子や軽んじた様子。そういった事柄はどんなにテキストだけで表現しても伝わらないですね。

龍たまこさんの表現力によって、今回の作品は初めて届けることのできたメッセージばかりでした。本質はどうしても文章では表現しきれず、知り合いに相談しても、なかなかそれが伝わりきらないもどかしさ、難しさがあるだろうとも思いました。

 『99%離婚 モラハラ夫はかわるのか』より


──読んだ方からの反響はいかがでしたか?

中川瑛さん:たくさんの評価をいただいていて、大変ありがたく思っております。「もしかしたら自分もこういうこと(モラハラ)をやっているかもしれない」というコメントもあり、その気づきに貢献できたことを本当に嬉しく思います。

「うちもこうなっていたらよかったのに」という方、「こんなの夢物語、相手は変わらない」という方、そんなモラハラ被害者の方からのコメントもあります。漫画のコラムでも何度も繰り返し強調していますが、これは1%の事例です。ほとんどの場合、傷つけた側は自分の過ちを認めることすら難しいように思います。

ただ、人は誰でも変わることができる。そのためには、自分のコミュニケーションが人を傷つけていたらそれを認め、学ぶ必要があります。そのための一つのきっかけになるかもしれません。「まさに自分のことが描かれている」と思ってGADHAに参加する方々もどんどんきています。

学び変わるための受け皿がある上で、こうした傷つけた側の変容の話を書くことができたことは本当に良かったと思います。この受け皿なしには、ある意味では無責任な物語にもなったと思うからです。

──モラハラに悩む方へメッセージをお願いいたします。

中川瑛さん:自分のパートナーが加害者であると認めることはとても恐ろしいことです。自分のことを被害者と位置付けることに抵抗感が強い人もたくさんいると思います。しかし、そう考えることで自分の傷つきを認め、ケアすることを始めることができればそれ以上のことはありません。
加害者を変える責任も義務も被害者の方にはありません。
どうかご自身のことを大切にされてほしいと心から願っています。

取材・文=レタスユキ

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