理論武装する夫と感情優先の妻。離婚目前の夫婦に突きつけられた「共同親権」というリアルな選択肢【著者に聞く】


年長の娘・ゆりかを育てる薫は、夫・孝太との離婚を決意します。しかし、その決断はある日突然のことではありませんでした。



真面目で誠実、家族思い。周囲からは”いい夫”に映るかもしれませんが、薫は孝太の”正しさ”に息苦しさを感じ、日々の何気ない会話で少しずつ追い詰められていきます。


一方で孝太にも、自分なりに家族を守ろうとしてきた思いがありました。

そして、離婚届に記入すると決めた夜。夫から告げられたある言葉をきっかけに、二人は改めて「夫婦であること」「親であること」と向き合うことになります。


本作では、夫婦のどちらかを一方的な加害者・被害者にせず、それぞれの立場や価値観を描いています。
「こんな夫婦、どこかにいそう」と感じるリアリティは、どのように生まれたのでしょうか。著者・とーやあきこさんに、夫婦それぞれの視点を描いた理由や、キャラクターづくりへの思いを伺いました。
妻と夫…あなたはどちらに共感しますか?

―― 物語が、離婚届に記入すると決めた日という大きな節目から始まるのが印象的でした。このタイミングを物語のスタートにしたのはなぜですか?
とーやあきこさん:これまでの離婚は、「離婚届を出したら終われる」というのが一般的なゴールの形だったと思うんです。でも共同親権が選択できるようになったことで、夫婦によって変わってくる。その変化の大きさを象徴的に描きたかったので、今まではゴール目前だった「離婚届に記入すると決めた日」をあえてスタートにしました。
―― 薫と孝太、どちらの主張にもリアルな背景があり、身近にいそうな等身大の人物として感じられました。キャラクター作りで大切にしたことは何ですか?
とーやあきこさん:どちらのキャラクターにも、共感ポイントがもてるように心がけました。
薫は、離婚を切り出すうえに共同親権を受け入れないという立場のため、自分勝手に見えないよう、自分の気持ちをストレートに押し出す部分と、理性と葛藤するシーンの配分を細かく調整しました。


そして、孝太のキャラクター作りは、どの登場人物よりもこだわりました。妻目線ではイヤな夫に見えるように。1人の人間として見たときには正義感があり、自分の感情よりも子どもの幸せを優先させる理性を持ち合わせた、筋の通った人に見せられるように。良い意味で二面性をもつキャラクターになるよう描きました。


―― 読者によって、「夫側に共感する」「妻側に共感する」が分かれそうですね。妻だけでなく夫の目線で描かれている章もありますが、その意図を教えてください。
とーやあきこさん:共同親権という制度自体が、立場や考え方によって意見が分かれやすいと感じていて…。それと重ねるように、妻側と夫側の目線を描き、「どちらが正しいのかがわからない」という状況を意識して作りました。特に、夫への嫌悪感という個人的な感情で苦しむ妻と、共同親権の意義を理解し感情よりも理性を優先する夫、という対比を鮮明にすることで、読者の意見もさらに分かれるといいなと思っていました。
* * *
妻の立場から読むか、夫の立場から読むかで、見え方も変わってくる本作。薫と孝太、それぞれの言葉や行動の背景にある思いを知ったとき、あなたはどちらに共感しますか? ぜひ作品で確かめてみてください。
取材・文=松田支信
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