「私のわがままなの?」どうしても夫と縁を切りたい妻が直面した新制度の壁。 夫が主張する共同親権への困惑と葛藤【著者に聞く】

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私のワガママなの?

2026年4月に始まった共同親権制度。ニュースで目にしても、「自分には関係ない」と感じる人は少なくないかもしれません。
しかし、離婚後も子どもの親であり続ける夫婦にとって、共同親権は決して制度だけの話ではありません。子どもとの関わり方や家族のかたちに関わる問題でもあります。

セミフィクションコミック『離婚しても終わらない 共同親権がはじまる日』は、共同親権を「賛成か、反対か」という二択ではなく、離婚後も親であり続けることの難しさや、それぞれの立場から見える葛藤を描いています。著者のとーやあきこさんに、制度の中で揺れる人々を描いた理由を聞きました。

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「私のわがままなの?」共同親権をめぐる妻の葛藤


『離婚しても終わらない 共同親権がはじまる日』より

離婚を決意した妻の薫。夫の孝太は正論をふりかざすばかりで薫の気持ちに寄り添ってくれず、彼女は結婚生活に限界を感じていました。

離婚届に記入するはずだった夜、孝太は共同親権を望むと告げます。

よく考えてみてください

僕はこれからもずっと

「僕も娘の親だ」
その孝太の言葉は筋が通っているようにも聞こえます。周囲から見れば、孝太は真面目で誠実な“いい夫”。“子どものため”を考えれば共同親権を受け入れるべきなのかもしれない…。

『離婚しても終わらない 共同親権がはじまる日』より

『離婚しても終わらない 共同親権がはじまる日』より

それでも薫は、正論ばかりをぶつけてくる孝太と、離婚後も親として関わり続けることに不安を抱き、共同親権を受け入れられずにいます。

『離婚しても終わらない 共同親権がはじまる日』より

『離婚しても終わらない 共同親権がはじまる日』より

『離婚しても終わらない 共同親権がはじまる日』より

そこで弁護士に相談しますが、「夫に具体的な問題がなければ難しい」と告げられ、「自分の考えはわがままなのだろうか」と悩んでしまい…。

『離婚しても終わらない 共同親権がはじまる日』より

『離婚しても終わらない 共同親権がはじまる日』より

『離婚しても終わらない 共同親権がはじまる日』より

共同親権という新しい制度は、離婚後も続く親子の関係をどう築いていくのかという問いを、2人に突きつけます。夫婦の不信感、子どもへの思い、そして簡単には割り切れない大人の感情…。本作では、新しい制度の前で揺れる家族を通して、答えが一つではない家族のかたちに向き合った物語です。


知れば知るほど、答えがわからなくなった


―― 「離婚しても終わらない」という感覚は、この作品の大きな核だと思います。元夫婦になっても続いてしまう親同士の関係や親と子の関係、それによって残る感情やわだかまりなどを描くうえで、特に大事にしたかった場面や感情はありますか?

とーやあきこさん:薫が「もし共同親権をもった場合…」と想像するシーンがあるのですが、そこがもっとも象徴的なシーンだと思っています。「相手と離れたい」と思っているとき、前向きな想像なんてできないですよね。共同親権が子どものためになると理解していたとしても、「どうしても離婚したい」「相手と離れたい」と考えている場合、そう簡単に割り切ることはできない。そういった苦しさを体感してもらいたくて、特に大切に描きました。

『離婚しても終わらない 共同親権がはじまる日』より

『離婚しても終わらない 共同親権がはじまる日』より

『離婚しても終わらない 共同親権がはじまる日』より



―― 本作を描く前と描き終えた今とで、「共同親権」という制度への見え方や理解に変化はありましたか。

とーやあきこさん:勉強するほどに、そして描くほどに、共同親権が難しく感じるようになっていった…というのが正直なところです。制度の内容が難しいのはもちろん、さまざまな側面から考えられるようになるほど、「もし自分が薫の立場だったら…」と悩んでしまうようになりました。どういう決断をするべきなのかはっきりとした答えは今も見つかっていません。ですが、描く前は「きっと自分だったら共同親権を選ばないだろう」と考えていたのが、「今はわからなくなってしまった…」という心境の変化は大きいです。


『離婚しても終わらない 共同親権がはじまる日』より

『離婚しても終わらない 共同親権がはじまる日』より

―― 共同親権への賛否を示すというよりも、制度の中で揺れる人々を描いた作品だと感じました。読者に「答え」を提示するのではなく、考えてもらうかたちを選ばれた理由はありますか。

とーやあきこさん:「法律」は、立場によって見え方や受け止め方が変わるものだと思っています。法律があるからこそ助けられる人もいれば、苦しむ人もいる。だからこそ、作品の中でもはっきりとした答えは提示しませんでした。何より共同親権は施行されたばかりなので、これから社会の中でどんな影響が出てくるのかがまったくわからなくて…。「あえて答えを提示しなかった」という意図と、「答えがわからないので提示できなかった」という率直な気持ちが混在しています。

   *      *      *

共同親権への賛否について、すぐに答えを出すことは難しいかもしれません。とーやあきこさんが作品を通して伝えようとしているのは、さまざまな立場の人がいることを知る大切さ。本作を読みながら、もし自分が薫の立場だったらどうするのか…と考えさせられます。

取材・文=松田支信

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