「この顔じゃ生きていけない」ルッキズムに囚われた中学生の絶望。整形手術の功罪と、その狭間の切実な現実【著者に聞く】

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『娘に整形したいと言われたら』より

デリケートで多面的な「美容整形」というテーマを前に、私たちはどう向き合うべきか。人間の弱さや生々しい欲求に正面から光を当て、大きな反響を呼んでいるコミックエッセイ『娘に整形したいと言われたら』。今回は、著者のうみの韻花さんに、思い入れの強いシーンや、譲れない表現のこだわりについてお話を伺いました。

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『娘に整形したいと言われたら』あらすじ


登場人物

『娘に整形したいと言われたら』より

『娘に整形したいと言われたら』より

夏休みを利用して、ついに二重埋没法の手術を受けた中学生のひかり。無事に施術が終わり、パッと華やかな二重になったひかりは、毎日弾けるような笑顔を見せるようになりました。整形前、自分の容姿を呪って暗く沈んでいた頃が嘘のようです。

『娘に整形したいと言われたら』より

「埋没して人生本当に変わった」「ありがとうお母さん」と嬉しそうに微笑みかけてくれる娘の姿に、母の彩も心の底からホッとしていました。これでようやく、我が家にいつもの平和な日常が戻ってくる。そう信じて疑っていなかったのに、事態は思わぬ方向へ向かいます。


『娘に整形したいと言われたら』より

ある日、学校を休んでいたひかりが、どんよりと暗い表情で、耳を疑うような言葉を口にしたのです。

『娘に整形したいと言われたら』より

「鼻の整形もさせてください」

せっかく目がパッチリしたのに、今度は鼻の形が気になって仕方がないというのです。鼻の手術となれば、まぶたを糸で留めるのとは訳が違い、身体への負担があまりにも大きすぎます。スマホで鼻の整形費用を調べてみると、画面に表示されたのは「80万円」という信じられないような高額。

「あの子、整形すれば何でも解決するみたいな考えになっているんじゃ…?」

彩は再び、深い悩みの沼へと突き落とされてしまいます。

『娘に整形したいと言われたら』より

それ以来、すっかり学校を休みがちになってしまったひかり。追い詰められたひかりは、単身赴任から戻った父親にも「鼻の整形がしたい」と訴え出ました。


『娘に整形したいと言われたら』より

しかし、今度ばかりは父親も怒りを爆発させます。「親からもらった顔を傷つけて恥ずかしいと思わないのか!!」と猛反対。見かねた彩も「外見だけじゃなくて中身も大事なのよ」と必死に諭しますが、ひかりは「そんなのただの綺麗事じゃん」と、両親に向けてやり場のない鬱憤を一気にぶちまけました。

『娘に整形したいと言われたら』より

「今の学校がどれだけ外見至上主義か、お母さんたちにはわからないでしょ?」

娘の言葉は、教室という狭い世界で、ルッキズムの荒波にひとり孤独に溺れそうになっている、悲痛なSOSそのものでした。


否定も美化もしない。整形というテーマを「フラット」に描き出すこだわり


『娘に整形したいと言われたら』より

――作品の中で、うみのさんが特に気に入っているシーンを教えてください。

うみの韻花さん:主人公のひかりが、父親と母親から鼻の整形を猛反対された直後、これまで胸の奥に溜め込んできた日頃の不満や鬱屈を一気に爆発させて両親にぶつけるところです。あれは現代の10代が抱える闇をリアルに反映させたつもりです。

――「整形」は読者の心に深く刺さる一方で、非常にデリケートで多面的なテーマだと思います。このテーマを作品として描くにあたり、特に気をつけている表現や、譲れないこだわりなどがあればぜひ教えてください。

うみの韻花さん:「整形を絶対的な悪として否定しないこと」、同時に「整形を魔法の杖のように美化しないこと」です。フラットな視点を保つことに何よりこだわりました。リスクや後遺症、費用の現実をシビアに描きつつも、容姿に苦しむ人にとってそれが「自分を救うための最終手段」になり得ることも否定したくありませんでした。善悪の二元論ではなく、その間にある複雑なグラデーションを描き出すことを信条としています。


美しくなりたいという人間の生々しい欲求に、あえて正面から光を当てる


『娘に整形したいと言われたら』より

――うみのさんが表現者として、人間の「綺麗事だけでは済まない部分」や「心の揺らぎ」にあえて正面から向き合い続ける理由や、創作の原動力となっている想いをお聞かせください。

うみの韻花さん:世の中には綺麗事では済まない現実が確実に存在していて、そこから目を背けて描かれたものに、私はリアリティを感じません。美しくなりたいという人間の生々しい欲求や弱さ、不器用にもがく姿にこそ、本当の切実さやドラマがあると感じているからです。容姿という、時に人の人生を左右しかねないごまかしのきかない問題だからこそ、あえて正面から向き合い、描き続けたいと思っています。

* * *

整形を「絶対的な悪」として突き放さず、「魔法の杖」として安易に美化もしない。うみのさんが人間の弱さや生々しい欲求に正面から向き合っているからこそ、私たちはこの物語に激しく揺さぶられ、救われるのかもしれません。


取材・文=宇都宮薫

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