妊娠3ヶ月、夫の暴力で妻は流産。胎児のエコー写真に隠された悲痛な思い【著者に聞く】

今回の依頼者は小倉ヒメカさん(仮名・24歳)。元ボクサーの夫は酒に溺れ暴力を振るうようになり、警察沙汰になるレベルの暴力事件に発展。ヒメカさんは全治3ヶ月の大怪我を負います。依頼者本人は入院中で動けず、夜逃げ屋スタッフの女性・ビッキーさんを代理人として搬出作業を実行することになりました。

搬出当日、元ボクサーの夫は「勝手に人のモン触ってんじゃねぇぞゴラァ!」「ヒメカ連れてこい!」など夜逃げ屋スタッフたちに罵声を浴びせます。警察の立ち会いの中作業を進めるスタッフたちでしたが、そんな中、ビッキーさんはキッチンにあった缶から封筒を取り出し、中身をポケットにしまいます。それを見て包丁を持ち出してきて暴れようとする夫は、警官に取り押さえられ連行されてしまいました。


搬出作業が終わった後、ビッキーさんは宮野さんに着いてくるように言い海に向かいます。そしてポケットから取り出したのは胎児のエコー写真。実はヒメカさんは妊娠していましたが、それを知らない夫の暴力で流産してしまっていました。

胎児のエコー写真を家に残しておきたくない、でも移転先に持っていくのもつらい……そんな思いを受け止めたビッキーさんは、回収してきたエコー写真に火を付け、燃やして処分するのでした。
著者・宮野シンイチさんインタビュー
――この時は警官の立ち会いがあったとはいえ、刃物で脅してくるような暴力的な加害者がいる場で夜逃げの作業をするとき、宮野さんはどのような心境で荷物の搬出作業に取り組まれていましたか?
宮野さん:兎にも角にも「警察!頼む!」という気持ちを正直ずっと持っていました。怖い以外の感情は特にない…というか怖いすらない…頭真っ白みたいな感じです。ちなみに先日も、社長から「今回は加害者が刃物で暴れるかも。」という依頼に同行予定だったんですが、「警察はいますよね?」がワシの第一声でした。

――夫の暴力によってヒメカさんのお腹に宿った命が失われていたという事実と、その胎児のエコー写真をビッキーさんに託したヒメカさんの思いに、胸が締め付けられるエピソードでした。ビッキーさんからこの写真の話を聞いたとき、宮野さんはどんな思いでしたか?
宮野さん:エコー写真の意味を理解した瞬間、吐き気がしました。この事実を、加害者が知ったらどう思うだろうと言う意見も何件かいただきました。冷たい言い方をすると、加害者側は多少心が傷ついたとしても、体はノーダメージですし、気にかける必要はないんじゃないかと思いました。後悔したところでもう遅いわけですし。自分としてはヒメカさんの心と体がとにかく心配でした。

――ヒメカさんのエピソードで、宮野さんご自身がもっとも感情を揺さぶられた瞬間や、今でも印象に残っている出来事や場面を教えてください。
宮野さん:これは6巻の描き下ろしに収録しているんですが、「ビッキーさんにとって夜逃げってなに?」ということを教えてもらったときです。スタッフそれぞれ答えは微妙に違うし、微妙に一致しているんですが、ビッキーさんの「夜逃げは自分の自由と人としての尊厳を取り戻すための闘い」という考えは今でも心に残っています。
* * *
想像を絶する暴力の恐怖と、失われた尊厳を取り戻すための過酷な闘い。依頼者の想いを引き受け、寄り添い続ける夜逃げ屋スタッフたちの覚悟には、エピソードを重ねるごとに深く考えさせられます。依頼者の未来を守るために覚悟を持って現場に立つ、その熱い思いをぜひ本編で感じてください。
【編集部より】
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〒102-8177 東京都千代田区富士見2-13-3
『夜逃げ屋日記』宮野シンイチ宛
取材・文=レタスユキ
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