「道端の草を食ってた」どん底の絶望から立ち直りカウンセラーとなった男性の過去【著者に聞く】


夫の暴力に苦しむ女性から夜逃げの依頼が入り、依頼者の代理人として一風変わった雰囲気の女性スタッフ・ビッキーさんが現れます。彼女は、夜逃げ屋のスタッフ兼カウンセラーのジョーさんの妻だと聞き、宮野さんは驚きます。「籍だけ入れてお互い自由に生きてる」「お金が無くなると夜逃げ屋の仕事をしている」とビッキーさんは語ります。


夜逃げの作業が終わった後、宮野さんはビッキーさんからジョーさんについての驚くべき過去の話を聞かされます。ジョーさんはかつて、親友が自殺したことをきっかけに心を病み、仕事もクビになり、1年間ほどビッキーさんへの連絡を絶っていたとのこと。久しぶりに偶然再会したとき、彼はすっかりやつれ、道端の草を食べていたと言います。現在のジョーさんからは想像できない過去に、宮野さんは衝撃を受けるのでした。

しかしその後、ビッキーさんと定期的に会うようになったジョーさんは、格闘技を習い始めたりカウンセリングの資格を取るなどして少しずつ回復し、そのまま籍を入れることになったと言います。足の不自由なジョーさんに自然な様子で肩を貸すビッキーさんの様子に、宮野さんは笑顔になるのでした…。
夜逃げ依頼者たちの絶望と再生を描いた本作の中で、スタッフであるジョーさんもまた、どん底の状態から立ち直ってきたことが明らかになります。この第6巻のエピソードについて、著者の宮野さんにお話を伺いました。
カウンセラーとして依頼者たちを支えてきたスタッフの壮絶な過去
――今はカウンセラーでもあるジョーさんですが、かつて親友の自死によって心を病み、仕事もお金も失って「道端の草を食べていた」というどん底の過去がビッキーさんの口から明かされます。この衝撃的なエピソードを初めて聞いたときの宮野さんの心境を教えてください。
宮野シンイチさん:実は夜逃げ屋スタッフの中で、社長に次いで実際によく会うのはジョーさんなんです。以前から「過去に色々あるみたいだ」というのはちょくちょく聞いていました。ただなかなか聞きづらいので、具体的なことはあまり知りませんでした。
でもビッキーさんからその時のことをちゃんと聞いて、本当に苦労してきたんだなと。普段仲良くしていただいてるのもあって、余計胸に刺さりました。ビッキーさんとジョーさんはセットのキャラクターだと思っているので、ビッキーさんが登場する回では必ずジョーさんの過去を描こう、ということは1話目を描いている時から考えていました。

新キャラクターのビッキーさん登場
――ビッキーさんは6巻から登場する新たなキャラクターですね。これまで登場したスタッフの方々とはまた違った存在感のあるビッキーさんですが、彼女と初めて出会ったとき、宮野さんが受けた印象を教えてください。
宮野シンイチさん:いやー、すごく独特な空気を持っている人だなって思いました(笑)。まぁでも、夜逃げ屋スタッフさんたちは、みんな漏れなく個性の塊みたいな人たちなので、言うなればみんな独特なんですが。その中でもビッキーさんの浮世離れした感じは、ちょっと面白かったですね。最近もまた、ジョーさんを入れた3人でお会いして遊んでたんですが、やっぱり独特な空気があって面白い方だと思いました。

――社長や他のスタッフさんたちとはまた違う形で依頼者に寄り添うビッキーさんですが、この作品のキャラクターとして描く上でもっとも意識した「ビッキーさんらしさ」はどこでしょうか?
宮野シンイチさん:世俗のことに関心がないというか、とにかくマイペースな方です。自分の領域とかペースをすごく大事にしていて、でも、優しさや慈悲をちゃんと持っている人ですね。本人はあんまり言ってほしくないとは思うんですが、あえて言うなら思いやりのある方なので、それは描くときに意識してるつもりです。

――「籍だけ入れてお互い自由に生きてる」とビッキーさんは話しますが、後半に出てくるおふたりのエピソードを読むと、決して無関心な関係ではなく、お互いへの理解があることが伝わってきます。このおふたり独特の距離感・関係性を描くときに、心がけたこと、意識したことはありますか?
宮野シンイチさん:実際に会うとよく感じるんですが、ビッキーさんはジョーさんに対してドライな感じで接することが多くて、ジョーさんのほうもビッキーさんに対してちょっとドライなんです。ただ、芯の部分ではちゃんと繋がっているというか、お互いのことをちゃんと理解しているというか……。そういう、「ジョーさんを通して見えるビッキーさんらしさ」は大切にしています。
* * *
独特な存在感をもつビッキーさんの登場と、明かされたジョーさんの壮絶な過去。それは、過酷な状況の人々を描いてきた本作の中でも、再生の希望を強く感じさせてくれるエピソードです。それぞれの傷や背景を抱えながらも依頼人の未来のために闘う、スタッフたちの活躍から今後も目が離せません。
【編集部より】
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〒102-8177 東京都千代田区富士見2-13-3
『夜逃げ屋日記』宮野シンイチ宛
取材・文=レタスユキ
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