「私たち被害者でしょ?」家に投石、落書き、鍵穴に接着剤。動画の拡散で自宅が特定されたいじめ加害者家族【著者に聞く】

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『夜逃げ屋日記6』より

【注・この記事には暴力・いじめ・誹謗中傷の描写が含まれます。フラッシュバック等の不安のある方は閲覧にご注意ください。】

親からの精神的虐待、パートナーからのDV、ストーカー被害——。そうした過酷な状況下にある被害者を救い出し、逃避行ともいえる引っ越しをサポートするのが、特殊な専門業者「夜逃げ屋」です。

漫画家の宮野シンイチさんは、実際に夜逃げ屋のスタッフとして働きながら取材を続けてきました。その現場のリアルな空気感を、コミックエッセイ『夜逃げ屋日記』として発表して注目を集めています。

今回は最新6巻より、ネット上の激しい誹謗中傷から逃れようとする、ある家族のエピソードをご紹介します。

▶【漫画】『夜逃げ屋日記6』「炎上」のエピソードを読む

『夜逃げ屋日記6』「炎上」 あらすじ


『夜逃げ屋日記6』より

今回の依頼者は、SNSで激しい炎上に晒されている17歳の高校生・佐藤リョウタ(仮名)とその母親。一家4人での夜逃げを申し込んできた理由は、リョウタらが友人を苛烈に暴行する動画がネット上に拡散されたためでした。

『夜逃げ屋日記6』より

炎上後、自宅には誹謗中傷や嫌がらせが殺到。外壁への落書きや鍵穴への接着剤投入、さらには毎晩のように石が投げ込まれる事態に発展します。母親は「息子のしたことは最低」と認めつつも、自分たちは過剰な嫌がらせの「被害者」だと訴え、夜逃げの決行を迫ります。

『夜逃げ屋日記6』より

『夜逃げ屋日記6』より

しかし、社長の回答は明確な「拒否」。
「スタッフの安全を確保できないこと」「夜逃げ先でも身バレする可能性が高いこと」「夜逃げ屋は『加害者』ではなく『被害者』を助ける組織であること」の3つの理由から、彼らの依頼を毅然と拒否するのでした。

このエピソードについて、著者の宮野さんにお話を伺いました。


SNSが浸透してから急増した「誹謗中傷からの夜逃げ」


――SNSで炎上したいじめ加害者の依頼を断るエピソードは、「夜逃げ屋としての社長のスタンス」を明確に示すエピソードだと感じました。このエピソードを描こうと決めた背景や意図について教えてください。

宮野シンイチさん:初期の頃から必ずどこかで描く予定でいましたが、近年のインターネットを通じた犯罪や炎上の多さから、社長と相談して執筆に取り掛かりました。読者の方も興味があるかなと思いまして。

『夜逃げ屋日記6』より

――本作で描かれた炎上家族は、紛れもなく『加害者』である一方で『被害者』の側面も持っています。一読者としても『加害者の自業自得』の気持ちと、『この私刑はさすがに度を越している』の両方の感情が湧く、現代社会の歪みを象徴するようなエピソードでした。この話を描くにあたってこだわった点、また難しいと感じた点は何ですか?

宮野シンイチさん:社長曰く、スマホが普及して、SNSが浸透してからこういう依頼は急増したそうです。おそらく、皆さんも知っているような連日ニュースになるレベルの炎上騒動の中心人物から依頼の相談が来たこともあるようです。

ただ、漫画にも描いてあるとおり、そういう依頼は受けない、そこはきちんと描こうとしっかり決めていました。

難しい点でいえば、SNSの炎上騒動が多すぎて、どうしても何かしらの騒動と類似してしまうところですね。勘違いされてはいけないなと、どの事件なのか特定できないように、気をつけて描きました。

『夜逃げ屋日記6』より

『夜逃げ屋日記6』より

――「加害者からの依頼は受けない」という社長のポリシーについて、宮野さんご自身は現場のスタッフとして、あるいは取材者・表現者としてどのように受け止めていらっしゃいますか?

宮野シンイチさん:直接断る瞬間に居合わせたわけではないんですが、社長の判断で良かったと思います。

このエピソードにも出てきたように、「加害者やその家族が、周囲からの行きすぎた私刑によって被害者になる」という視点もあるので、どこまでを被害者とするかは人によるとは思います。

ただ、今回のケースに関しては、社長の言うように警察や弁護士に頼むべき領域が多すぎて関わりきれないと思いました。社長が断ってくれたおかげで、従業員も守られているわけですし、個人的にはこの上ない対応だと思います。

『夜逃げ屋日記6』より


――最後に、最新巻の『夜逃げ屋日記 6』について読者へのメッセージをお願いします。

宮野シンイチさん:5巻というひとつの山を超えて、ついに6巻!ということで、描き下ろしのページ数は過去最高の65ページ超え!これは本当に大変でした…。ですがここまで一緒に歩んできてくれた読者の皆様への感謝の気持ちを込めて頑張りました!

この6巻の執筆中、Instagramを始めてみたり、そこで初めて読んでくださった読者の方と出会えたり。本当に思い出深い一冊になりました。これからも応援してくださってる皆様のために精一杯頑張り続けますので今後とも、どうぞよろしくお願いします。


【編集部より】

※「夜逃げ屋」本社に夜逃げの依頼以外の問い合わせや、書籍・本記事のご感想を送るのはお控えください。書籍やマンガのご感想やご意見につきましては、下記宛にお送りいただけますと幸いです。

〒102-8177 東京都千代田区富士見2-13-3
『夜逃げ屋日記』宮野シンイチ宛


取材・文=レタスユキ

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