河原の石ころは地球の歴史書! 絵の具や食器、電池まで支える「足元の石」を探しに行こう

道ばたや公園、河原に転がっている何気ない石ころ。「ただの石」と思って通り過ぎていませんか?実はその一つひとつに地球の歴史が刻まれていて、ルーペでのぞくと、驚くほど美しい世界が広がっています。
※本記事は田中陵二著の書籍『石のひみつがすべてわかる! すごすぎる鉱物の図鑑』から一部抜粋・編集しました。
石ころは「地球の歴史書」
多くの石(岩石)は、1種類または複数の鉱物が集まってできた塊です。たとえば花こう岩をルーペで拡大すると、白(長石)、灰色(石英=水晶)、黒(雲母)の粒が見えてきます。
岩石は、できかたによって大きく3つに分けられます。マグマが冷えて固まった「火成岩」、砂や泥、生き物の遺骸などが積もって固まった「堆積岩」、熱や圧力を受けて姿を変えた「変成岩」です。
例えば火成岩は、鉱物の種類や粒の大きさから、マグマが冷えた速さや固まった深さまで読み取れます。同じようなマグマでも、地下深くでゆっくり冷えれば粗い結晶に、地表近くで急に冷えれば細かい結晶やガラスになるからです。また、堆積岩は地層の重なりや粒の大きさを調べると、昔の海や川、砂漠、湖の環境を復元できます。
このように道ばたや河原の石は、上流にある岩石や鉱物の「カタログ」なのです。落ちている石ころ1個が、長い地球の歩みを教えてくれます。

▶花こう岩(かこうがん)
ケイ素分の多いマグマが地下深くで固まった岩石。

花こう岩の拡大。主に長石(白)、石英(灰色)、雲母(黒)からなる。
絵の具から食器、電池まで。暮らしを支える石
人類が最初に使った絵の具は、身近な石や土を砕いた粉でした。洞窟の壁画の赤色は、赤鉄鉱。鮮やかな朱色は辰砂、緑は孔雀石、青は藍銅鉱と、色のもとはどれも鉱物です。ラピスラズリから作られる青色顔料・天然ウルトラマリンは、かつて金より高価ともいわれ、フェルメールなどの著名な画家が愛用しました。日本画の「岩絵具」も鉱物を砕いたもの。同じ鉱物でも粒が細かいと白っぽく淡い色に、粗いと深い色と結晶の輝きが出ます。
足元の土も、岩石が長い時間をかけて風化したもの。代表的な成分の粘土鉱物は、焼くと固まる性質を生かして陶磁器の原料になります。食器の青い絵付けに使われる「呉須(ごす)」は、コバルトを含むマンガン酸化物の土です。さらに電池や磁石、半導体をつくるのにも、レアメタルなど鉱物からとれる元素が必要です。

▶藍銅鉱(らんどうこう)
「岩群青(いわぐんじょう)」と呼ばれ、高価で貴重な青。多田銀山(兵庫県)などで掘られた。

▶孔雀石(くじゃくいし)
「岩緑青(いわろくしょう)」と呼ばれ、緑の基本色。長登銅山(山口県)や東北から供給された。

▶辰砂(しんしゃ)
鉄さびの赤も使われたが、大事な用途には水銀の赤が使われた。近畿地方のものが古くより使われた。

▶ラピスラズリ
青金石(せいきんせき)などを含む青い岩石。古くからアフガニスタン産が有名。
ルーペ片手に、探しに行こう
石探しは、河原や海岸、鉱山跡などで楽しめます。時には思いがけない美しい結晶に出会えることも!水晶ひとつでも、紫水晶、煙水晶、針のように細い針水晶と、色も形もさまざま。蛍石は紫、緑、黄、青と「最もカラフルな鉱物」ともいわれ、紫外線を当てると光るものもあります。河原などを歩き見つけた石は、色や形、見つけた場所、日付を書き添えて並べるだけで、立派な「観察の記録」になります。
その記録が、思わぬ発見につながることもあります。地球上で確認された鉱物は6000種を超え、毎年新種が見つかり、アマチュアの愛好家が新鉱物を見つけた例もあります。石を拾い、調べ、仲間と語り合い、発表する。そのすべてを自分の手で進められるのが、鉱物探しの醍醐味といえるでしょう。著者の田中先生も2023年、光る新鉱物・北海道石を発見した一人です。
先生は「読み終えたとき、いつもの石ころが、地球から届いた小さな手紙に見えてくるはず」と綴っています。足元の石ころは、数十億年かけて地球が生み出した「手紙」かもしれません。次のお散歩で、そっと目を落としてみませんか。

▶紫水晶(むらさきすいしょう)
中に含まれる鉄イオンの影響で紫色になったもの。宝石として扱われる(イタリア)。

▶緑水晶(みどりすいしょう)
緑泥石などの緑色の鉱物の微細な粒子を含んでいるもの(秋田県)。

▶カラーバリエーションが豊富な蛍石(ほたるいし)
さまざまな色の蛍石。色の多くは不純物イオンによる(緑色/イギリス、紫色と黄色/アメリカ、無色/福島県・蛍鉱山)。

▶日本で見つかった有機鉱物「北海道石(ほっかいどうせき)」
夜、北海道石の露頭(岩石や地層が地表にむき出しの場所)に紫外線を当てた様子 。山の小沢の河床にオパールが露出し、その中にカルパチア石や北海道石などが含まれる。
文=知野美紀子
【著者プロフィール】
田中陵二
1973年、群馬県生まれ。東海大学理学部化学科客員教授。公益財団法人相模中央化学研究所主任研究員。群馬大学大学院工学研究科博士後期課程修了。専門は有機・無機ケイ素化学、結晶学および鉱物学。マクロ科学写真の撮影もおこなう。共著に『よくわかる元素図鑑』(PHP研究所)、『超拡大で虫と植物と鉱物を撮る』(文一総合出版)、監修に『GEMS美しき宝石と鉱物の世界』(東京書籍)などがある。2023年、チームで発見した光る新鉱物「北海道石」が世界的な機関に新鉱物として認められ、筆頭記載者、命名者となった。
著=田中陵二/『石のひみつがすべてわかる! すごすぎる鉱物の図鑑』
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