激しい暴力を振るう父親から逃れ、母親と子どもたちはDVシェルターへ。壮絶な実体験を描いた漫画の著者に聞く
【この記事ではDVについて具体的な描写があります。フラッシュバック等症状のある方はご留意下さい】
母親に激しい暴力を振るい、子どもたちには精神的な虐待を行う父親。
そんな壮絶な環境から逃れるため、母親と兄弟でDVシェルターへ避難。さらに母親の生活基盤が整うまでの間は、母親とも離れ児童相談所で生活…と、過酷な幼少期を過ごした漫画家のおうめりゅうさん。
そんな壮絶なエピソードを描いた、おうめりゅうさんのコミックエッセイ『死を願った父が亡くなった話』をご紹介します。
『死を願った父が亡くなった話』あらすじ
幼少期、暴力的な父親に精神的な虐待を受けていたおうめさん。父親は「嫌いな球団が勝った」などの些細なことで食事中のちゃぶ台をひっくり返したり、母親に暴力を振るったり…その様子をおうめさんは「怪物のようだった」と振り返ります。
母親は子どもたちを連れて時々家出しては祖父母や親戚の家に逃げ込みましたが、父親は連れ戻しに追ってきました。大暴れする父親は、親戚たちにも殴るなどの暴力を振るうのでした。
そして小学校3年生のある日、父は顔面を殴って母親の鼻の骨を砕いてしまいます。割れたガラスには母親の血が飛び散っていて、母親はその状況を証拠として淡々とカメラに収めているのでした。そしてついに家を出る決心をした母親は、子どもたちを連れてDVシェルターへと向かうのでした。
しばらくの間、おうめさんはシェルターで家庭内暴力から避難してきた他の家族たちとの共同生活を送ります。暴力的な父親との暮らしから一変、まるで新しい家族ができたようで楽しかったといいます。
しかしそんな楽しい日々もつかの間、家族はシェルターを出ることになり、母親の生活基盤が整うまでのあいだ、兄弟は児童相談所に預けられることになるのでした…。
そんな壮絶な幼少期を過ごしたおうめさんに、この作品に込めた思いを伺いました。
著者・おうめりゅうさんインタビュー
──この作品を描こうと思ったきっかけを教えてください。
おうめりゅうさん「元々漫画を描いていたので父と母のことはいつか漫画にしようと決めていました。それをいつ描くかは決めていませんでしたが、病気を患ったことをきっかけに、漫画が描ける内に描いておかねばと決心しました」
──辛い体験の中で、お母さんが心の拠り所だったと描かれています。当時、お母さんを見て、どんなことを考えられていましたか?
おうめりゅうさん「母の事は大好きでしたし、母は僕達のことを守ってくれてましたが、僕が母を助ける事は出来なかったので無力感に苛まれました」
──ある日、お母さんが双子の卵を見つけて明るい話題をふったのに、お父さんが「くだらないことでいちいち騒ぐんじゃねえ」と怒鳴りつけたのを見て、おうめさんが初めてお父さんに対して「怒り」を覚えます。それまで怒りがわかなかったのに、この時に怒りを覚えたのは何故だったんでしょうか?
おうめりゅうさん「父が生み出した陰鬱な空気の家庭で、せっかく母が明るいニュースを報告したのに、それをまた父が無下にするというのは子どもの僕からみても理不尽で許し難かったからです」
──父親の元から逃げ出して、DVシェルターや児童相談所で過ごしたエピソードがあります。DVシェルターで楽しそうに過ごされている場面が印象的でしたが、施設に避難したことで、当時はどのような心境の変化がありましたか?
おうめりゅうさん「環境の変化に多少のストレスはありましたが、それ以上に父の支配下から逃れた解放感と安心感が大きかったです」
──電子書籍にはお母さんの視点から見たお父さんのエピソードも収録されています。こちらもお母さんの実家でお祖父様に暴力を振るったり、お母さんが避難した実家に窓を割って侵入して暴れたりと、凄まじいエピソードが描かれています。これを描こうと思った理由はなんでしょう?
おうめりゅうさん「本編は基本的には僕の体験に焦点を当てたエピソードのみで構成していました。しかし母が体験した父の凄まじいエピソードの数々を漫画にしないのはもったいないと思い、特別編という形で描かせて頂きました」
* * *
おうめりゅうさんのお母さんのように、パートナーからの暴力に苦しみ、DVシェルターへの避難を考えている方は、まずは最寄りの専門機関に相談してください。
「DV相談ナビ #8008(はれれば)」では全国共通の電話番号で、最寄りの相談機関の窓口に電話が転送されます。また「DV相談+」 https://soudanplus.jp/ でも、24時間メールや電話、チャットで相談を受け付けています。
暴力や虐待は許されることではありません。勇気を持って一歩踏み出して、専門機関に助けを求めることが大切です。
取材 =レタスユウ/文=レタスユキ
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