あなたは共感できますか? 三者三様のママたちの恋愛観を描いた『恋するママ友たち 私以外も不倫してた』

 『恋するママ友たち 私以外も不倫してた』より

忙しい毎日にイライラしたり、あまりにも普通で単調な毎日に疑問を抱いたり、家事や育児を頑張っても当たり前だと感謝もされなかったり…。不幸ではないし、家族のことも大切だけれど、ちょっとした不満が心にたまっているママは少なくないと思います。

『恋するママたち 私以外も不倫してた』に登場する早紀・美穂・麻衣も、そんなどこにでもいるママのひとり。変わり映えのない日々がこれからも続いていくと思っていたけれど…。三者三様に描かれた母親たちの不満やいらだち、夫婦関係や恋愛観について、著者の吉田いらこさんにお話をお聞きしました。

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3人のママに訪れた「恋」の物語


3人は気の合うママ友グループ

小学3年生の子どもを持つ早紀・美穂・麻衣は、気の合うのママ友グループ。子どもが幼稚園の頃から仲良くしていて、もう6年の付き合いになります。

 『恋するママ友たち 私以外も不倫してた』より

パート勤務の早紀は、アクセサリー作りが趣味。仕事も趣味も充実しているように見えますが、毎日の忙しさからイライラして、つい夫や子どもにキツくあたってしまいます。

 『恋するママ友たち 私以外も不倫してた』より

美穂はPTAの役員を務め、娘の中学受験をサポート中。家事も育児も丁寧にこなしていますが、専業主婦であることに引け目を感じていて、夫からの心ない言葉や行動にも不満を抱えています。

 『恋するママ友たち 私以外も不倫してた』より

そして、外で働くことが好きな派遣社員の麻衣。息子の不登校に悩んでいて、夫との意見の食い違いから夫婦仲もこじれかけています。

たわいのない話をする3人

3人はお茶やランチをしながら育児について相談したり、他愛もない話をしたりする仲ですが、お互いに言えない鬱屈した思いや、他のふたりへの複雑な感情を秘めていました。そんな3人に、心が揺れるような出会いが訪れて…。彼女たちがとった行動とは?あなたが彼女たちの立場なら、どうしますか?


目が離せない三者三様のリアルな恋愛観


本当に頑張っていると思います

私がずっと欲しかった言葉かもしれない

――家族関係や夫婦間の決定的な悩みは抱えていないけれど、忙しい毎日に気が立ってしまう…そんな早紀の気持ちは、多くの人が共感できると思います。早紀が道を踏み外してしまった要因はなんだと思いますか?

吉田いらこさん:自分が頑張っているのに、認められない寂しさがあったからではないでしょうか。早紀は家族のために忙しい毎日を送っているのに感謝されず、頑張っていることが当たり前のことだと思われています。そんなところに、自分を認めて共感し、話を聞いてくれる人が現れたら…。普段、家族からの感謝の言葉が一言でもあれば、踏みとどまれたかもしれません。

優しくされて話を聞いてもらったら…

――早紀のエピソードは、3人の中でももっとも後味の悪い結末だったように思います。この展開は、最初から考えていたのでしょうか?

吉田いらこさん:私が見聞きした範囲ではありますが、実際に婚外恋愛中の当事者は、後悔の気持ちを抱いていない人が多いように感じました。ただ、私個人としては賛成はできないと思っているので、登場人物3人の中で1人だけは後悔するキャラクターがいたほうがいいと考え、その役割を早紀に担ってもらうことにしました。

別にあなたのためじゃないけど

――専業主婦であることに引け目を感じている美穂。夫からのモラハラや周囲の働くママたちの悪気のない一言に傷つきながらも諦めていましたが、味方となってくれる男性と出会って前向きに変化し、したたかに、前向きになっていきます。吉田さんは美穂のようなキャラクターについてどう思われますか?

吉田いらこさん:美穂のエピソードは、私の周りにセカンドパートナーの必要性を説いていた既婚女性がいて、多少なりともそこから着想を得ました。私は不倫には賛成できないと思っているので共感はできないのですが、確かに彼女はすべてが充実してイキイキしているように見えました。

彼だから話したい

――息子の不登校に悩む麻衣。子どものことを一番に考えていたはずが、いつの間にか自分の気持ちを優先してスマホでのメッセージのやりとりに夢中になった結果、ある日息子から「もっとこっちを見てほしい」と言われてしまいます。一線を越えてしまわないよう、グッと思いとどまるために必要なことはなんだと思いますか?

吉田いらこさん:まずは、子どもの存在ではないでしょうか。でも、本当に肝心なところで引き留めてくれるものは、自身の心なのかもしれません。麻衣が、息子が伝えた一言で引き返すことができたのは、ほどほどに真面目で保守的な本人の性格のおかげだと思います。


それぞれの心の隙間に入り込む男性の存在


――3人のママの人物像はどのように作り上げたのでしょうか?また、それぞれどのようなキャラクターにしたいと考えていましたか?

吉田いらこさん:もともと、3人ともタイプの違う人物像にしたいと思っていました。早紀は明るくて交友関係の広い人、美穂は控えめでお人よし、麻衣はすべてにおいて標準的な人。共通しているのは、みんな真面目に家事や育児を頑張る常識人だけど、ちょっとだけ上手くいかない人生を送っていること。その隙間に、新しい男性が入り込んでいくお話にしたいと思ったのです。

タイプの違う3人のママ友

――早紀・美穂・麻衣はお互いに尊敬し合う、とても良好なママ友関係だと感じました。でも最後まで3人の会話に、お互いの恋の話題はあがりませんでした。仲が良い分、意外だったのですが、なぜでしょうか?

吉田いらこさん:この3人は仲が良いとはいえ、ママ友として程よい距離感で付き合っています。子どもや地域のつながりがある以上、うまく距離を取らないと不都合がありますから。こういう少し後ろめたい話をできるとすれば、深くつながった親友かどうでもいい他人くらいではないでしょうか。ただ、何かのきっかけでお互いに秘密を抱えていることが分かれば、そこからは堰を切ったように会話が弾み、結束力が高まるのだと思います。

   *      *      *

早紀も、美穂も、麻衣も、特別な環境にいるわけでもなければ、一般的な考え方を持っていて、みんなと同じような悩みを抱えているママです。ただ、3人の恋愛観に共感できるかは人それぞれ。あなたはどう感じますか?

取材・文=松田支信

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