キラキラしたコスメカウンターで働く女性たちの光と闇。話題のお仕事マンガの仕掛人に聞く【編集者インタビュー】

「デパコスカウンターは敷居が高い」
SNSでもたびたび話題になる百貨店のコスメカウンターを舞台に、働く女性たちの光と闇を描いた作品が注目を集めています。
『デパコスカウンターは今日も修羅場です ~BA下剋上物語~』この作品の仕掛け人のKさんは、元BA(ビューティーアドバイザー=美容部員)という異色の経歴を持つ編集者です。
有名外資系コスメブランドのBAとして激戦区の百貨店に勤務した経験をもとに、漫画家のユキミさんと二人三脚で完成させた本作。クセの強い10年目のBAと初々しい新人BAのふたりの仕事ぶりを通して、コスメカウンターで働く人々の思いに迫ります。
この作品の編集者Kさんに、コスメカウンター勤務の頃のお話や、作品にこめた思いについて伺いました。
「BAは客を品定めして態度を変える」の真偽は?

――編集者に転職する前はコスメカウンターのBAだったと伺いましたが、どこで勤務されていたのですか?
Kさん:◯◯◯◯の美容部員として都内激戦区の店舗に勤務していました。さすがにブランド名は伏せたいですが…。
――えっ、超有名ブランドですね。しかも激戦区…。よくSNSで話題になりますが、「客を品定めして態度を変えるBA」は本当にいたのですか?
Kさん:そうですね、「売り上げに繋がる接客」を重視していように見えるBAは確かにいます。売上本数や金額のノルマは当然ありますし、お客様がひっきりなしに来る店舗や時間帯だと、たくさんの方をお迎えするために効率も大事になってくるのも実情です。
ただブランドによって接客は違いますし、店舗の土地柄によってもかなり差はあるかな、と思います。たまたま運悪くあたった「横柄で塩対応」なBAが話題になりやすいだけかとは思います。

――お金のありそうな客が来ると他の店員を押しのけて接客する…という描写もありましたが、これも実際にあるんでしょうか。
Kさん:もちろんマンガとしての誇張はあります。ただ「気品のあるマダム」が来ると接客に付きたがる方は実際にいましたね。単価の高いスキンケア商品をラインでひととおり買ってくださることが多いので…。
また店舗によっては、お客さん本人ではなく百貨店の外商担当の人がカウンターに来て化粧品を購入していくこともあります。私も新人の頃は外商の方とわからなくてキョトンとしていたのですが、先輩が「私が行く!」と押しのけるようにして接客することもありました(笑)。セレブのお買い物なので売り上げがすごいんですよ。

個性豊かなキャラクターたちは、実在のBAたちからヒントを得て
――なるほど、実際にそういうエピソードがあるのですね。この作品に登場するクセの強いBAの「桜城まち子」には具体的にモデルとなった人物がいるのですか?


Kさん:この人、という具体的なモデルがいるわけではありませんが、これまでに見たことのある「クセのあるBA」「高飛車なBA」の要素をすべて著者のユキミさんにお伝えして、詰め込んでもらっています。
ただ、「イヤなだけの人」にはしたくなかったので、生い立ちや仕事に対するスタンスなどはある程度共感できるようなキャラクターにしていただきました。
――この作品にはKさんの実体験のエピソードも含まれていますか?
Kさん:ストーリー展開についてはユキミさんに構成していただいていてほぼフィクションですが、売り場でのちょっとしたエピソードやキャラクターについては実体験をお伝えして反映してもらっている部分が多いです。色んな出自、色んな採用ルートの人間がいる、というのは実際に経験してきたことですね。単価の高いスキンケア中心に販売するベテラン社員や、メイク技術の高い男性BAなども、実際にいた人物からヒントを得ています。

――作品の中でも人気の高いJUNという魅力的なキャラクターがいますが、このような男性のBAさんも実際にいらっしゃるんでしょうか?
Kさん:はい、実際にいらっしゃいます。私が勤めていた頃は店舗には男性は1割もいるかいないか…くらいでしたが、店舗ではなくイベントやショーなどに関わるメイクアップアーティストの精鋭部隊では、もう少し男性の割合が高かったです。
BAはみんな「お客様を美しくしたい」という気持ちを持っている
―― デパコスのカウンターに対して「怖い」というイメージを持っている女性が多いことはSNSの話題からも伝わってきますが、この作品を通してどんなことを伝えたいですか?
Kさん:そうですね。BAは「近寄りがたい」という印象を持たれがちです。ですが、みんな「お客様を美しくしたい」という思いをベースに持っています。この作品を通して、BAたちも日々悩みながら努力を続けるひとりの人間であることを知っていただけると、少し身近に感じられるのではないかと思います。
決して怖い場所ではないですし、いろんなBAさんがいらっしゃるので、きっと相性のいい相談相手が見つかると思います。この作品がデパコスカウンターへの気持ちのハードルを下げて、気軽に立ち寄ることのきっかけになると嬉しいです!


『デパコスカウンターは今日も修羅場です ~BA下剋上物語~』あらすじ
舞台は都内繁華街の海袋にある百貨店のコスメ売り場。主人公は人気コスメブランド「クレシアン」のカリスマBA・桜城まち子。人呼んで「カウンターのお嬢」。圧の強い接客で商品を売りつけるやり方は、他のBAたちからは「押し売りのお嬢」と言われることも。お嬢はスキあらば同僚から顧客を奪おうとしたり、新人をいびって辞めさせたり。売上トップを独走しながらも、問題行動も多い彼女には同僚たちも複雑な気持ちを抱いていました。そんなある日、新人BAの花巻が店舗に配属され、桜城が教育係としてつくことになって…?
取材・文=レタスユキ
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