丁寧な調理描写は最上級の飯テロ！ 京都の仕出し屋「ちどり亭」を中心に描かれる、愛と料理の物語【フルーツサンド作ってみた】

学生時代は長期休暇や学校行事で季節の移り変わりを感じることも多いですが、大人になると1年なんてあっという間に過ぎてしまいます。目を向けるのは仕事や生活に関する節目ばかりで、四季や旬を感じる間もなく同じような毎日の繰り返し、なんて人も多いはず。

　

そんな人にオススメしたいのが、『ちどり亭にようこそ～京都の小さなお弁当屋さん～』（十三湊/KADOKAWA）。本作品は、食に無頓着で料理なんてしたことがなかった大学生・小泉彗太が、ひょんなことから京都で仕出し屋「ちどり亭」を営む女性・蒔岡花柚（24）に出会い、「料理を作って食べる」ということの大切さを感じていく物語。

ちどり亭のカレンダーには、1年を24分割した「二十四節気」、それをさらに3分割した「七十二候」が記されています。これらは日本の繊細な季節の移り変わりを表していて、「四季」という括りでは見逃してしまいがちな変化を感じることができるもの。花柚は仕出し屋としてお弁当を作る時、季節や旬をとても大事にしています。

そんな花柚は、実は由緒正しい「蒔岡家」の娘。兄である蒔岡公篤が失踪したため跡取りとしての責任を背負っています。蒔岡家や許嫁との関係に振り回されてきた彼女ですが、にもかかわらず、前向きで感情豊かでとても魅力的。でもお嬢様育ちなためか子供っぽさが抜けないところがあり、毎週末のお見合いがもはやライフワークになっている残念な一面もあったりします。

普段は色気とは縁遠い花柚ですが、お弁当を詰めている時だけは「本当に美しい」と思わせる特別なオーラを放っています。それは、お弁当を受け取る人のことを思って詰めているから。花柚は料理をする時、いつも食べてくれる相手のことを考えて丁寧に丁寧に作っています。

このように登場人物や本筋だけを見ても十分魅力的な作品ですが、一番注目してほしいポイントは、料理を作るシーン！ 花柚が丁寧に作っている過程が細かく描写されていて、大切に育て上げられた料理がキラキラと輝いて見えてきます。食材の扱い方からご飯の混ぜ方、美味しく作るためのコツ、お弁当の詰め方までこれでもかと詰め込まれていて、彼女の調理によって食材が料理へと変わっていく様子を追っていると、「私もこんなふうに作ってみたい！」「旬のものが食べたい！」という食への強い興味が沸々と湧いてきます。

そんな気持ちで想像しながら本作品最新刊を読んでいたら、「14・虹蔵不見、サンドイッチと琵琶の音」に出てきたフルーツサンドが美味しそうで、無性に食べたくなってきました。季節のフルーツやクリーム、ナッツを詰め込んだ、お菓子とはまたちょっと違う、花柚の言葉を借りるなら「背徳の味」。サンドイッチという本来食事として食べるべきものに挟まっている、魅力的な禁断の甘さ。これを感じたい……っ！　そこで、彼女のレシピからヒントをもらいつつ、フルーツサンドを作ってみました。