「私だけ余ってる?」“3人組のママ友”がつらいのはなぜ?疎外感と執着の正体とは【心理カウンセラーに聞く】
【ストーリー】

物語の中心となるのは、さくら・みお・けんとの3人の子どもと、その母親たち。内気で人付き合いが苦手な“さくらママ”、特定の相手と深く繋がろうとする“みおママ”、そして過去の経験から誰とも深入りしない距離感を大切にしている“けんとママ”。
3人はそれぞれ違う不安や価値観を抱えながら、子ども同士の関係を通じて関わり合っています。

内気で人付き合いが苦手なさくらママは、みおママとけんとママの“二人だけがわかる空気”にたびたび疎外感を抱いていました。
一方のみおママは、赤ちゃん時代から苦楽をともにしてきたけんとママを「特別な存在」だと思っています。そのため、新しく輪に入ってきたさくらママに対し、強い警戒心や嫉妬を抱くようになっていきます。

そしてけんとママは、過去に子ども同士のトラブルをきっかけにママ友関係が壊れてしまった経験から、「誰にも深入りしない」と決めていました。
しかし、子どもたちの成長とともに関係性は少しずつ変化し、それぞれが“自分にとって心地よい距離感”を模索していくのです。
“仲良くしなきゃ”が苦しさを生むことも

作中では、「子どものために、ママ同士も仲良くしなければ」と頑張る姿が繰り返し描かれます。
たとえばさくらママは、みおママとけんとママの会話に必死に入ろうとしたり、「もっと私が頑張らなきゃ」と無理に話題を探したりします。しかし、その焦りはどんどん空回りしてしまいます。

一方のみおママは、「むつみちゃん(けんとママ)は自分だけの特別な存在」という思いが強くなりすぎた結果、さくらママを“邪魔な存在”として見るようになります。
作中では、さくらママにわざと聞こえるように、おそろいのストラップの話をしたり、「私は仲間に入れてあげない」と心の中で線を引いたりする場面も。

また、けんとママは「深入りしない」と決めているからこそ、必要以上に踏み込まず、相手の事情にもあえて立ち入りません。「外で働くと夫に怒られる」というさくらママの言葉にも、否定も詮索もしなかったその距離感が、結果的にさくらママを救っていたことも印象的でした。
ママ友関係では、「子どもの関係」と「自分自身の感情」が混ざりやすくなります。だからこそ、“誰とどの距離で付き合うか”が難しくなってしまうのかもしれません。
心理カウンセラーに聞く:なぜママ友関係は苦しくなるの?距離感が難しい理由
今回お話を伺ったのは、臨床心理士・公認心理師として精神科に勤務する傍ら、コミックエッセイストとしても活動する白目みさえさん。ママ友関係の中で生まれる疎外感や執着、不安の背景について伺いました。
――ママ友3人組に馴染めず疎外感を抱くさくらママ。彼女のように「自分だけが余っている」「馴染めていない」という疎外感を抱いてしまう心理的な要因は何でしょうか?
白目さん:ママ友に限らず、「グループに馴染めていない」と疎外感を抱いてしまう人は、自分に自信がない分、他人を必要以上に高く、自分を必要以上に低く見積もってしまう傾向があります。
その結果、「自分だけがこのグループにふさわしくないのでは」という感覚が強くなり、実際以上に他の人との距離を感じてしまうのです。
実際になにか言われたりされたりしたわけではなくても、そうした不安を抱えた状態でグループを見ていると、ちょっとした言葉や仕草にも「やっぱり」と反応してしまい、さらに自信を失ってしまうという悪循環につながりやすくなるのかもしれません。
――さくらママは、他の2人の顔色を伺いすぎているような描写があります。このように「自分に自信がない」ことが、ママ友関係における不安や焦りにどう影響を与えるのでしょうか?
白目さん:自分に自信がないと、「嫌われたくない」「浮きたくない」という気持ちが強くなり、相手の反応に過敏になってしまいます。「今相手はどう思っているだろう?」「楽しんでくれているだろうか」と、一緒にいる間も常に気を張り、場の空気を読み続ける状態になってしまうのではないでしょうか。
そのような緊張感の中で過ごしていると、自分が自然体でいられなくなり、グループの中でもなかなか安心できません。自分が疲れてしまうだけでなく、そのぎこちなさが相手に伝わってしまい、さらに「馴染めていない気がする」という不安を強めることにもつながってしまいます。

――みおママがけんとママに対して抱く「独占したい」「自分だけを見てほしい」という強い執着心は、どのような心理状態から生まれるものなのでしょうか?
白目さん:「独占したい」「自分だけを見ていてほしい」という気持ちの背景には、自分に自信が持てないことや、『見捨てられ不安』が隠れている場合があります。過去に大切な人とのつらい別れを経験している人ほど、「いつか離れていってしまうのでは」という不安を抱えやすいのかもしれません。
そのため、相手が他の人と親しくしている姿を見ると、「自分より(魅力的な)そちらを選んでしまうのでは」という焦りが心によぎるのだと思います。厳密に言えば「自分を見てほしい」というよりも、「他の人を見ないでほしい」という思いなのかもしれません。
――みおママは、子育ての孤独を救ってくれたけんとママを「恩人」として慕っています。本来なら「かけがえのない親友」になれたはずですが、なぜそれが執着へと変わってしまったのでしょうか。健全な「友情」と不健全な「執着・依存」、この2つの心の分岐点について教えてください。
白目さん:みおママの世界の中では、けんとママの存在があまりにも大きく、「なくてはならないもの」「失ったら生きていけないもの」になっていたようにも感じられました。それだけ、当時のみおママの孤独感や傷つきは深かったのだと思います。
私は依存には「健全な依存」と「不健全な依存」があると考えています。人は誰かを頼りながら生きるものであり、依存は避けて通れません。
しかし、その支えが「ひとつしかない状態」になると、不安や恐怖から相手を繋ぎ止めたくなり、それが執着になって「不健全な依存」となるのだと思います。
いろんな人に少しずつ頼る、趣味や自分の世界を広げて、自分がホッとできる場所を増やす。そのような「たくさんの依存先を作る」ことこそ、「健全な依存」と呼べるのではないでしょうか。
――みおママは執着のあまり、さくらママを仲間外れにするような言動をしてしまいます。嫉妬心や執着心が「他人を攻撃する」といった極端な行動に変わってしまう一線はどこにあるのでしょうか。
白目さん:これも、「不健全な依存」の状態になってしまった時に起こりやすいのだと思います。本来であれば、みおママもさくらママとの安心できる関係性を築き、「健全な依存先」を増やすチャンスだったかもしれません。
しかし、さくらママがけんとママと親しくなったことで、さくらママは「新しい仲間」ではなく、「自分の安心や居場所を脅かす存在」として映ってしまいました。その結果、「取られる前に排除したい」という気持ちが強まり、仲間外れのような攻撃的な行動につながってしまったのではないでしょうか。
嫉妬や執着が攻撃に変わるときには、単なる「羨ましい」だけではなく、「見捨てられるかもしれない」「居場所がなくなるかもしれない」という強い不安が隠れていることもあると思います。
――学生時代の友人や仕事の人間関係に比べ、なぜママ友同士の関係は、嫉妬や執着、マウントといった「ゆがんだ関係」に発展しやすいのでしょうか?「母親であること」や「子どもの関係性が背景にあること」が心理的にどう影響しているのでしょうか。
白目さん:なぜ「ゆがんだ関係」に発展しやすいのかと言えば、そもそも「自分のことではないから」だと思います。学生時代や仕事の人間関係なら、うまくいかなくなって困るのは基本的には「自分」です。その中で私たちは、自分に合わない人と距離を取ったり、苦手な相手を避けたりする方法を学んできました。
しかし、ママ友関係では「子どもの関係」が中心になります。自分は苦手でも、子ども同士が仲良ければ簡単に距離を切ることはできません。本来なら関わらなかったタイプの人とも付き合い続けなければならないこともあります。
自分以外の人間関係のためにどう振る舞うかについて、私たちは実はあまり経験がないのです。言わば「対人関係の初心者」。思い返せば、幼少期には嫉妬や執着、マウントなどもあったのではないでしょうか。私たちは子どもを通して、もう一度人間関係を学び直しているのかもしれません。
――3人のママたちのように、ママ友関係で「もやもや」を抱え、自分自身を見失いそうな読者に向け、心理学的な観点から自分を守るための考え方や、良好な距離感を見極めるためのアドバイスをいただけますでしょうか。
白目さん:まず、自分の幼少期を思い返してみてください。小学校のころ、友達と喧嘩をした、嫌われた気がしただけで、学校へ行くのがとても憂鬱になったことはありませんか。それは、子どもにとって「学校」が「世界のすべて」だったからです。
でも、大人になった今、小学校時代からずっと付き合いのある人は何人いるでしょうか。当時は「世界のすべて」だと思っていた場所も、今振り返ればとても狭く、小さな世界ではありませんか?
ママ友関係でも、同じことが起きやすいのだと思います。その場が「世界のすべて」になると、人は苦しくなります。でも実際には、ママ友の世界は「あの時期」「あの場所」の関係であることがほとんどです。ずっとそこに居続けなければならないわけではありません。
苦しくなったら、子どものころに隣のクラスへ遊びに行ったように、習い事で新しい友達を作ったように、自分の世界を広げてもいいのです。依存先や居場所がひとつしかないと、「不健全な依存」も生まれやすくなります。
その一方で、大人になった今でも付き合いが続いている友人はいませんか。そういう関係こそ、本当に自然に残っていくものと言えます。そしてそれは、ママ友の中から生まれることもあるかもしれません。「生まれたらラッキー」くらいの心構えでちょうど良いのだと思います。
ママ友関係で苦しくならないために、“ちょうどいい距離感”を考える

作中の3人は、それぞれ違う形でママ友関係に悩みました。
「みんなと仲良くしなきゃ」と苦しくなったさくらママ。「特別でいたい」という思いから執着してしまったみおママ。そして、「深入りしない」ことで自分を守ろうとしたけんとママ。
誰かが完全に悪いわけではなく、それぞれに不安や過去があり、それぞれなりに必死だったことが、この作品では丁寧に描かれています。
白目さんが語るように、人は依存先がひとつしかない状態になると苦しくなりやすいものです。だからこそ、ママ友の世界だけを「すべて」にしないこと。子どもの関係と、自分自身の人間関係を切り分けて考えること。そして、自分にとって心地よい距離感を探していくことが大切なのかもしれません。
【白目みさえさんプロフィール】
臨床心理士・公認心理師。心理カウンセラーとして精神科に勤務。漫画家としても活動。近著「子育てしたら白目になりました」が好評。
文=たまみ
アパレル・医療職を経て、現在はウェブライターとして活動中。3人の子どもを育てながら、20年近く仕事と子育てを続けています。家事も仕事も完璧にはできないけれど、「がんばりすぎない」を合言葉に日々奮闘中。慌ただしい毎日の中で見つけた小さな気づきや工夫を、等身大の視点でお届けします。
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