人生最後の無謀な賭け。吉本の養成所に40歳で入学したエド・はるみさんを支えた「一点集中」の経験

40代でお笑い芸人を志し大ブレイクしたエド・はるみさん。その後、50代で慶應義塾大学大学院に入学し、現在は筑波大学大学院博士後期課程に在学中です。さらにトライアスロン完走や二科展入選など、年齢にとらわれず挑戦を続ける姿が注目を集めています。
そんなエドさんが、エッセイ集『今日がいちばん若いから 年齢を吹き飛ばす生き方』を発表しました。本書には、彼女が困難や不安に直面するたびに、自らを奮い立たせてきた心の支えとなる言葉や考え方が綴られています。
今日はそんなエッセイの中から、40代で入った吉本興業の養成所時代のエピソードをご紹介します。エド・はるみさんは、一体どんな思いでお笑いを学んでいたのでしょうか。
一点集中で人生が変わった
私は少し多動的なところがあります。やりたいことが多過ぎるのです。正直、三十代後半を迎える頃の私は、「あれもやりたい、これもやりたい」と思っていました。「女優になるという夢を叶えたい」「でも結婚もしたい」「子供も産みたい」│。現実問題として、やがてそれらは同時並行できるのかという悩みに行き着き、思い煩うことも多かったことを思い出します。
そんな女性としてはありがちな悩みで悶々としているうちに、あっという間に四十歳の声を聞くことになりました。三つを同時並行するもなにも、そのうちの一番の要となる、「女優になる(その後「お笑いでプロになる」に変わりますが)」という夢さえ叶っていないのにどうしたものでしょう。
私は吉本の養成所に四十歳で入学するという、無謀ながら人生最後の賭けに出ました。それで世に出られなかったらそれで本当にすべて終わりにしようと決めていました。人生で初めての、夢を諦める覚悟です。そのために、それ以外のことはすべて手放しました。結婚も、子供を産むことも諦め、高い時給で暮らしを支えるコンピューターとマナーの講師の仕事も辞めました。彼氏とも別れました。本当にすべてを捨て、生まれて初めて〈一つのこと〉に絞ったのです。
養成所に入った日からは必死でした。稽古場にも一人夜遅くまで残り、稽古をして終電で帰ることもしばしばでした。
四十歳の私が、見栄もプライドもすべて捨て、この養成所で「必ず結果を出す」という一点に集中した結果、その一年後の三月に行われた養成所の卒業大会では優勝することができ、また、翌月の四月からのTVの『エンタの神様』の出演も決まりました。
私のような不器用な人間でも、虫眼鏡を太陽に向けて一点に集中すれば、そのかざした紙に火が点き、その紙を燃やすことができるのです。
“一点集中”ー。
この経験は、今でも私を支えています。

プロフィール
エド・はるみ……17歳で映画デビュー。明治大学文学部卒業後、劇団「円」の養成所を経て、約20年間女優として活動を続けるが、2005年に笑いの道に転じ、吉本興業の養成所の門を叩く。2008年に持ちネタの「グー!」で、数々の賞を受賞のほか、流行語大賞を受賞。長年の夢であった24時間マラソンランナーにも選ばれ、当時女性最長だった113kmを完走。2016年4月に慶應義塾大学大学院の修士課程に入学し2018年修了。2023年4月には筑波大学大学院の博士課程に合格して入学し在学中。現在、難関の博士号取得を目指し研究を続けている。
※本記事はエド・はるみ著の書籍『今日がいちばん若いから 年齢を吹き飛ばす生き方』から一部抜粋・編集しました。
著=エド・はるみ/『今日がいちばん若いから 年齢を吹き飛ばす生き方』
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