「去年と同じ 1 年」をもう繰り返さない。20年の下積みを経て、40代で開花したエド・はるみさんに学ぶ、⾃分の未来を変える「⾏動哲学」

40代で「グー!」のギャグと共に社会現象を巻き起こし、⼤ブレイクしたエド・はるみさん。その後も、ホノルルトライアスロン完⾛や⼆科展での 2 年連続⼊選、50代で慶應義塾⼤学⼤学院へ⼊学し、現在は筑波⼤学⼤学院の博士後期課程で研究を続けるなど、彼⼥が体現する⽣き⽅は、私たちに「年齢なんて関係ない」という強烈なエールをくれます。その輝かしい軌跡の土台にあるのは、20年という果てしない下積み時代。もがき、悩みながらも、⾃らを奮い⽴たせ、前を向き続けられたのはなぜなのでしょうか。
そんなエド・はるみさんの⼼の奥にある⾔葉や思考のヒントが、2026年5⽉26⽇発売の新著『今⽇がいちばん若いから 年齢を吹き⾶ばす⽣き⽅』(KADOKAWA)として形になりました。常に動き続けるエド・はるみさんの、美しくパワフルな行動哲学についてお話を伺いました。
「もう〇歳だから」や常識を、とにかく⼀度疑ってみる
40代という⼈⽣の転換期に、20年続けた「⼥優の道」をリセットし、「お笑いの道」へ進む決意をしたエド・はるみさん。その大きな一歩の後押しとなったのは、ある友人が放った「ここで行かなかったら、去年と同じ一年だよ」という一⾔だったといいます。
「<去年と同じ⼀年>────。 それは、 芝居を打つ公演費を捻出するために、朝から晩までアルバイトする⽇々。そしてその公演を観に来てくれた誰かが、「この娘は……!」 と私を⾒出してくれ、 ⼥優としての道が拓ける……。 そんな夢物語のような奇跡だけを信じて⼀⼈芝居を打ち続けてきたこれまでの⼆⼗年は、そうした⼀年⼀年の積み重ねでした。 しかしそのやり⽅で、 今⽇まで結果が出ていないという現実……。
私は「もうこれ以上同じ⼀年を過ごしてはいけない」────。
そう初めて強く思いました。」
(新著『今⽇がいちばん若いから 年齢を吹き⾶ばす⽣き⽅』より)
――吉本興業の養成所 (NSC) に入所した当時、エドさんは40歳。周りは 20代前後の若者ばかりという環境で、 周囲から「あのおばさん、必死やな」と思われることも全く厭わなかったとお書きです。周囲の⽬を気にせず、「⾃分の⽬的」だけに集中するにはどうしたらいいでしょうか?
エド・はるみさん:自分があとで「あの時もっと死に物狂いで挑戦していたら」、<もしかしたら違った結果になっていたかも知れない>、そんな後悔を絶対にしたくないと思えば、「まわりがどう思うか?」なんて考えは一気に吹き飛びますよね。
―― 「募集要項に年齢制限が書いていなければ、何歳でも⼤丈夫だと思ってしまう」というお話は、⽬からウロコでした!
エド・はるみさん:基本的に私は自分自身、常に「常識的な」人間でありたいと思っています。まずは、そのことが大前提の上で、では「年齢」に関しての「常識」は、本当に意味のある、絶対に守らなければならない「常識」ばかりなのか?という部分もありますよね。
もちろん自動車免許や、その他の「年齢」を守ることで、自分自身もまわりの人たちも安全を担保できたり、危険を回避できたりするなら、そうした年齢の「常識」は、絶対に守るべきものだと思います。
しかし物事によっては、その慣例の理由をよくよく聞いてみると、「ずっとこれまでそうだったから」、「それでこれまでうまくやって来たから」など、特に合理的な理由もなく、なんとなく「常態化」しているものもあるわけです。
なので、「この制限は本当に意味のあるものなのか?」と一旦、自分の中で疑ってみる、問い直してみる、ということも時には必要ではないかと。
そして吉本の養成所では、その応募制限が、「18歳以上」としか書いていなかったので、「じゃあ40歳であっても、全然応募できるじゃないか!」と、私は思ったのです。
逆に、まったく相手は否定していないのに、勝手にそこで、「でも 40歳で応募なんて、恥ずかしい。絶対にあり得ない」と、自分で制限を設け、諦めてしまうのはもったいないことだと思います。そしてたとえそんな自分を笑う人がいても、関係ありませんよね?そんな人のことを気にして、小さく生きていくなど、意味がないことです。
なので「世の中の常識の制限をはずすコツは?」と聞かれるなら、「その常識は合理的で、意味あることなのか?と考えること」だと思います。
――NSC 時代、汚れていた校舎のトイレや階段を⾃主的に⼀⼈で掃除し続けていたそうですね。 「環境を整えることが何より⼤切」という考えの背景には、どんな思いがあったのでしょうか。
エド・はるみさん:どんなに素晴らしい才能を持っていても、汚い環境の中では才能は花開かない、と思います。整理整頓されたキレイな環境の中で心が整い、落ち着き、そこから意欲や前向きなやる気が湧き上がってくると、私は信じています。
⾍眼鏡で太陽の光を集め、紙を燃やすがごとくの“⼀点集中”のすすめ
――新著の中で、「私のような不器⽤な⼈間でも、⾍眼鏡を太陽に向けて⼀点に集中すれば、そのかざした紙に⽕が点き、その紙を燃やすことができる」と仰っています。ただ、⽇々家事や育児でマルチタスクに追われるレタスクラブ読者にとって、 ⼀つのことにしぼるのは⾄難の業です。上⼿に時間と⼼をコントロールするヒントを教えてください。
エド・はるみさん:様々なことを同時にこなしていかなければならない家事や育児、大変な作業ですよね。でもそれはどんな仕事も同じで、やってもやっても次の作業が出てきますし、やっている途中で、また別の用事や仕事を頼まれたり・・・。なので、世の中のすべてが「そういうものだ」とまず思ってしまうことが、楽になる一歩だと思います。
その上で、一つのことに絞るには、今やろうとしていることの一つ先、二つ先・・・を、あえて見ない、考えないようにして、まずは<いま、この目の前の一つのことだけに集中して、やる>ことがポイントです。
するとあっという間にそのことが終わります。そうしてから、「じゃあ次」と、行動を移します。そしてまたそれだけを集中してやるのです。これが、あれもこれもでパニックになるのを防ぐ方法です。
例えば、私が 2008年に、「グー!グー!」と大忙しだった頃、1日に仕事が6つも7つも続いていた時、先を考えるとその大変さに目が回りそうになったことがありました。けれどその時、ふと、自分の中で「この先、この先と、意識を「先」に巡らせるのはやめて、“このいま”のこと(仕事)に集中し、とにかく一つずつ、一つずつ、と確実に一個一個を終わらせていくようにしよう」と考え方を変えたところ、とても気持ちが楽になったのです。なので、これは実体験からのおすすめです。
「待った」をかけているのは⾃分だけ。未知への「恐怖心」を消していく小さな一歩
――新著に書かれている「誰もあなたの邪魔などしていません」「『待った』をかけているのは、きっとあなたの気持ちだけ」という⾔葉、 何かに挑戦しようと迷っている⼈の胸に刺さります。この確信を得るまでに、エドさんご⾃⾝も葛藤があったのでしょうか。
「今の時代はどんな仕事に就くことも、何をして何をしないかも、法に触れることでない限り、すべての⼈に選択の⾃由があります。
江⼾時代のように⾝分制度があるわけでも、誰かに⾃由の制限をつけられることもありません。⾃分がそうしたいとさえ思えば、何歳からでも、⾃由に、何でも始めることができるのです。」
(新著『今⽇がいちばん若いから 年齢を吹き⾶ばす⽣き⽅』より)
エド・はるみさん:本にも書かせていただいたのですが、まずはこのことを思い出してみませんか。
その上で、その「待ったをかけている自分の気持ち」は、きっと「恐怖心」なのだと思います。
新しいこと、未知なる世界に飛び込むことは、「恐怖」以外のなにものでもありません。でもその「恐怖」は、本当に小さな一歩を踏み出していくことで、少しずつ少しずつ消えていくのです。
まあでも、その「恐怖」が消えた先に、また新たな<課題>が立ちはだかりますけどね(笑)。とにかく、生きている限り「キリがない」ということです。
* * *
「もう遅い」なんて⾔葉は、⾃分で決めたただの思い込み――。40代での⼤ブレイク、そして 50 代でのさらなる挑戦。エドさんの歩んできた道のりと、その⼒強い⾔葉の数々は、「私の⼈⽣、このままでいいのかな」と⽴ち⽌まりそうになる私たちの背中を、優しく押してくれるようです。
取材・文=宇都宮薫
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