「扶養義務」は「介護義務」とイコールではない!
親の介護はどこまでが義務なの?
お笑いコンビ・メイプル超合金の安藤なつさんと、介護・暮らしジャーナリストの太田差惠子さんの会話形式でわかりやすく「介護」のリアルと乗り切るコツをお送りします。
CHECK!
・「 扶養義務」は、身の回りすべてのお世話の義務ではない
・介護は自分ができる範囲で、「地域包括支援センター」に相談する
安藤なつ(以下、安藤):親の介護を子どもがサポートしていくことが基本だとしても、さまざまな事情でどうしてもできないことってありますよね。
太田差惠子(以下、太田):そうですね。親子といってもその関係性は、それぞれのご家庭の事情によって1つ1つ違います。このことを考える前に、親への「扶養義務」と「介護義務」を同じものと勘違いしている方が意外といます。
安藤:それって一体どういうことですか?
太田:老親への扶養義務は、ゆとりのある範囲での経済的な支援のことを指します。この扶養義務を、親が未成年の子どもに対して行うのと同じ義務だと思い込んでいる人が多いのです。
安藤:子どもに対する義務……。お金だけじゃなくて、暮らしに必要な身の回りのことも親が面倒を見ていくことかな~。
太田:そうですね。子どもに対する義務は「生活保持義務」といい、自分と同程度の生活水準を提供する必要があります。健全な暮らしができるように、日常生活のさまざまなことも保障していく義務があるのですが、親に対しては「生活扶養義務」まで。つまり子どもが手取り足取り親の介護を担わなければいけない義務はないのです。
安藤:なるほど。子どもが親の面倒を見るべきというわけではないんですね。家計だけでなく、親との関係や気持ちの問題でどうしても、介護のサポートができない場合はどうしたらいいのでしょうか?
太田:まずは、自分がどこまで対応できるのかを明確にしておくこと。たとえば、入院の手続きや介護保険の手続きなどはサポートするけど、他はすべてプロに任せると決めるなど。そして、地域包括支援センターに事情を説明してざっくばらんに相談してください。自治体と連携して受けられるサポート体制を考えてくれますよ。
安藤:わかりました! 自分の考えを明確化して、あとは相談ですね
太田:また、親と事前に話し合える関係性であれば、自分ができることとできないことを伝えましょう。実際に、65歳以上の人に行った調査(※)でも、「排泄などの介護が必要になったら誰に頼みたいか」の質問に対し、46.8%の人が「ヘルパーなどの介護サービスの人」と回答していて、子どもに頼みたい人はわずか12.9%。親も子どもの手を煩わせたくないと感じている人が多いってことです。
安藤:確かに、もしも、家族がいない方だったら介護を頼む人はプロになるし、子どもがすべてをやる必要なんてないですよね。
※「令和4年高齢者の健康に関する調査結果(全体版)」内閣府
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介護については「自分が何とかしなければ」と孤独になってしまいがち。
でも実はプロに頼ったり、悩みをシェアすることで最新の情報が得られたり、心や金銭的な負担が軽くなることも。ひとりで抱えこまず、できるだけ周りを頼りたいものですね。
安藤なつ(メイプル超合金)
1981年1月31日生まれ。東京都出身。2012年に相方カズレーザーと「メイプル超合金」を結成。ツッコミ担当。2015年M-1グランプリ決勝進出後、バラエティを中心に女優としても活躍中。介護職に携わっていた年数はボランティアも含めると約20年。ヘルパー2級(介護職員初任者研修)の資格を持つ。2023年介護福祉士の国家試験に合格。厚生労働省の補助事業『GO!GO!KAI-GO プロジェクト』の副団長を務める。
太田差惠子(介護・暮らしジャーナリスト)
京都市生まれ。1993年頃より老親介護の現場を取材 。「遠距離介護」「高齢者施設 」「仕事と介護の両立」などをテーマに執筆や講演を行っている。AFP(日本FP協会認定)資格を持ち、「介護とお金」についても詳しい。「Yahoo! ニュース エキスパート」オーサーなどでも活躍中。『親が倒れた! 親の入院・介護ですぐやること・考えること・お金のこと第3版』(翔泳社)など著書多数。
※本記事の情報は2024年6月現在のものです。法令や条例等の改正などにより、内容が変更になる場合があります。
著=安藤なつ(メイプル超合金)、太田差惠子/『知っトク介護 弱った親と自分を守るお金とおトクなサービス超入門 第2版』