「空き家は売れない」は思い込み?不動産会社の8割が“安い物件”を扱いたい納得の理由

アットホーム株式会社は、2025年8~9月、全国1591の地方自治体※に向けて「空き家対策業務に関する実態・意識調査」を、同年9月にはアットホームに加盟する全国の不動産会社に向けて「空き家取引等に関する実態・意識調査」を、インターネットアンケートの形式で実施しました。その結果、それぞれ272サンプル、870サンプルの有効回答を得ています。詳しく見ていきましょう。
※アットホーム 空き家バンク参画自治体869、未参画自治体722の空き家バンク担当部課を対象に実施
まず、自治体向けの調査結果によると、47.8%の自治体が空き家所有者からの相談件数が「増加した」と回答しており、空き家の相談件数は増加傾向にあります。
増加している理由としては、メディアによる空き家問題の報道や、相続登記の義務化、「空家法」「空家等対策の推進に関する特別措置法」の改正といった、法改正の影響が大きい、という声が挙がっています。これらの法改正によって、倒壊の危険性が高いなど、周囲に大きな悪影響を及ぼす「特定空家」に自治体から認定されると、固定資産税などの税金の負担が増えたり、罰則が適用されたりすることもあるからです。
空き家所有者からの相談内容は、「売却の相談」が69.5%で最多です。次いで、「解体・除去の相談」、「管理の相談」と続きます。
ところが、不動産会社向けの調査では、空き家の相談から媒介契約に至った割合について、「1割」と答えた会社が24.4%で最多となっています。0~3割という回答が全体の61.6%と過半数を占めるなど、空き家は売るのが難しい状況にあるようです。
では、なぜ空き家は媒介契約に至らないのでしょうか。不動産会社に理由を聞いてみました。
<空き家に関する相談が媒介契約に至らなかった理由> (有効回答289社/自由記述/上位3位)
・価格、金銭面による理由(101件)
所有者の希望価格と市場価格に差がある、売却・賃貸における諸費用(解体費用やリフォーム費用)が高いなど
・相続人同士の調整がつかない(54件)
相続人同士の意見の相違、権利関係が複雑など
・物件の状態による理由(50件)
物件の状態が悪い、立地が悪い、再建築不可の物件、建物が古いなど
つまり、空き家の売却でもっともネックになるのが、家の解体やリフォームにお金がかかりすぎることなのです。続いて、相続について兄弟間でもめるとか、連絡のつかない親族がいて意向が確認できない、という場合が挙げられます。自治体に聞いた「空き家所有者が空き家を手放さない理由」でも、「解体やリフォーム、残置物の撤去などの費用を要する」が最多の43.4%と、同様の傾向が出ています。
「安い家でも大歓迎!」じつは不動産会社の8割が取引に前向きな理由

一方で、「物件の状態や立地が悪い」から売れない、というのも切実な理由です。ところが最近、こうした「条件が悪い=安い」空き家の売買に、追い風が吹くようになりました。
というのも、これまでは、「安い空き家は仲介手数料が安すぎて、不動産会社が扱いたがらない」という事情があったのです。それが2024年の「空き家等に係る媒介報酬規制の見直し(低廉な空家等の媒介の特例)」により、安い空き家(物件価格が800万円以下の宅地建物)を取引した際に、不動産業者が受けとれる仲介手数料の上限を、最大30万円の1.1倍まで引き挙げる特例が施行されたのです。
そこで、800万円以下の空き家の取引状況について不動産会社に聞いてみたところ、「法改正以前から積極的に取り組んでいた」と回答した会社は42.0%でした。さらに、「法改正を受けてから積極的に取り組むようになった」と「今後、積極的に取り組む予定がある」を合わせると、全体の85.9%を占めます。つまり、8割以上の不動産会社が「安い空き家」の取引に前向きな姿勢をみせているのです。

価格が低い空き家の売買でも、不動産会社がきちんと手数料が受け取れるようになった今。「どうせうちの実家なんて売れないから」とあきらめてしまうのは、ちょっともったいないかもしれません。一度、近くの不動産会社に相談してみるのもいいのではないでしょうか。
空き家を買うのはどんな人? 「自然豊かな環境」を求める人が3割超

売る側は「でも、こんな古い家、本当に買う人がいるの?」「どんな人が買うの?」と思うかもしれません。しかし、地方でも空き家のニーズは意外にあるのです。
全国の自治体に「空き家の利用希望ニーズ」について聞いてみたところ、売買(購入)が77.0%、賃貸(賃借)が23.0%でした。
空き家を購入した方の理由としては、「自然豊かな環境での生活を目的とした購入」が最も多く、次いで「Iターン」、「同一市区町村内での住替え」が続きました。また、空き家を賃貸した方の理由では、「初期費用を抑えることができる」が最多。その他には「購入する前に、まずは賃貸で地域での生活を体験したい」などの回答がありました。



コロナ禍以降におきた地方への移住ブームもあり、古いけれど安価な空き家は、初期費用を抑えて自分好みにリノベーションしたい層に注目されています。「こんなもの買う人いないでしょ」と思っていても、フリマアプリに出してみると意外なほどスムーズに売れることがあります。価値観が多様化している昨今、空き家にもそうした”ミラクル”が起きないとはいえないのです。
「いつか」のために、今できることから始めよう
人が住まなくなった家はどんどん傷んでいくので、空き家は「放置するほどお金も手間もかかる」のが現実です。一方で、社会的には、空き家の流通活性化を促す法改正や、「田舎暮らしブーム」のおかげで、空き家売却のチャンスが広がっています。親が元気なうちに、「誰も住まなくなったあとの家のこと」について、家族で話し合ってみるのもいいのではないでしょうか。
自治体の「空き家バンク」をチェックしてみるのもいい方法です。たとえば、アットホームは2017年から、国土交通省のモデル事業として「アットホーム 空き家バンク」を運営しています。2025年12月末時点で886自治体が参加し、掲載物件数は10,000件を超えているそうです。
サイトでは、全国の空き家物件の検索はもちろん、「空き家所有者向けガイド」「解体費用シミュレーター」など、売る側にとってのお役立ち情報も掲載され、空き家のスペシャリストである「空き家相談士」を探すこともできます。こうした便利なサイトもぜひ活用してみましょう!
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私の友人も、夫の実家を処分するのにたいへんな思いをしたばかりだそう。空き家問題は早期対処が大鉄則です!「そのうちに」なんて言っていると、あっという間に家はボロボロ、周囲の大ひんしゅくをかうハメに…。まずは、家族みんなが集まる機会に、明るい調子で家の話題を出すことから始めてみませんか?
文=高梨奈々
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