加齢による記憶力の低下は悪いことばかりでもない。エド・はるみさんの人生哲学

40代でお笑い芸人を志し大ブレイクしたエド・はるみさん。その後、50代で慶應義塾大学大学院に入学し、現在は筑波大学大学院博士後期課程に在学中です。さらにトライアスロン完走や二科展入選など、年齢にとらわれず挑戦を続ける姿が注目を集めています。
そんなエド・はるみさんが、エッセイ集『今日がいちばん若いから 年齢を吹き飛ばす生き方』を発表しました。本書には、彼女が困難や不安に直面するたびに、自らを奮い立たせてきた心の支えとなる言葉や考え方が綴られています。
今日はそんなエッセイの中から、加齢と向き合う考え方についてご紹介します。「記憶力の低下」はそう悪いことばかりでもないと、エドさんはご自身の思いを綴ります。
「忘れる力」はいいことかもしれない
歳を重ねると、〈記憶力の低下〉を実感することが多くなります。
例えば、先ほどまで覚えていたのに、スーパーに着くと「あれ? 何を買うんだったっけ?」と思い出せなかったり、また、ある人の顔は浮かんで来るけれど名前が全く出てこなかったり……。そんな「忘れること」は、マイナスのこととして捉えられがちです。
でも私は最近、人が年老いて「忘れていくこと」が本当に悲しいことなのかなと思うようになりました。なぜなら私たちは六十歳を過ぎてなお、良いことも嫌なことも、ずっと記憶し続けて来たわけで、それはもう十分ではないかと思うからです。
嫌な出来事を、私たちはいつまで記憶にとどめ続けるのでしょう? 負の感情をいつまでも覚えているより「あら。そんなことあったかしら?」と忘れてしまったほうが、ずっとしあわせな側面もあるのではないでしょうか。
時はどんどん流れていきます。
少し乱暴な言い方かもしれませんが、過ぎ去ったことは忘れてもいい。もういい加減、目の前のことだけに集中して「いま」を生きる。思い出せないことには「ごめんなさい。覚えてないわ」と腹をくくる。そうすればもっと楽になれると思うのです。
皆さんがおいくつか分かりませんが、すでに四半期世紀以上生きていれば、もう自分を許してあげませんか。よくこれまで頑張って来たと。心臓は一度も止まることなく、そうしたことを見ると、あらゆる自分のからだの器官、細胞たちに「ありがとう」、「お疲れさま」という言葉しかないのではないでしょうか。
以前何かの番組で、七十歳代位で、娘さんのことも分からなくなってしまったお母さんに向かってその娘さんが、「お母さん、私よ! 分からないの? どうして?」と泣き叫んでいる姿を見て、とても切なくなりました。分からないことを「なぜ分からないの!」と責め立てても仕方がありません。
娘さんも大変お辛いとは思いますが、たとえば発想を変えて、「これまでの辛い記憶でお母さんが苦しむことはもうないのだ」と考えてみたらどうでしょう。
辛いご自分はそっと脇に置いて、《お母さんはやっと過去の記憶から解放されたんだ》という発想で、お母さまに寄り添ってみるということも一つ、選択肢としてあるのではないでしょうか。

プロフィール
エド・はるみ……17歳で映画デビュー。明治大学文学部卒業後、劇団「円」の養成所を経て、約20年間女優として活動を続けるが、2005年に笑いの道に転じ、吉本興業の養成所の門を叩く。2008年に持ちネタの「グー!」で、数々の賞を受賞のほか、流行語大賞を受賞。長年の夢であった24時間マラソンランナーにも選ばれ、当時女性最長だった113kmを完走。2016年4月に慶應義塾大学大学院の修士課程に入学し2018年修了。2023年4月には筑波大学大学院の博士課程に合格して入学し在学中。現在、難関の博士号取得を目指し研究を続けている。
※本記事はエド・はるみ著の書籍『今日がいちばん若いから 年齢を吹き飛ばす生き方』から一部抜粋・編集しました。
著=エド・はるみ/『今日がいちばん若いから 年齢を吹き飛ばす生き方』
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